澤田瞳子さんの新刊。平安時代ものです。
澤田瞳子さんの本は雅な装丁になることが多いですが、中身を読んでいると、実はもっとPOPなのでは?上流の人々が出てくる中で、もっと下層の、庶民の行儀悪い奴らの方が生き生きと描かれています。
この話は、盗賊のお話。
かつて政争に敗れて死んだため怨霊扱いされている藤原元方の一族で、孫にあたる藤原保輔というのが出てくるんですけど、この人は貴族でありながら盗賊だったんですか?
手下を従えて都を荒らし回った挙句、保輔は捕縛される。そこで自分で腹切って自害したため、これが日本初の切腹になったとか。
もうとっくに亡くなっている保輔なのですが、遺されたきょうだいたちがいまして、世間に後ろ指刺されながら懸命に生きてきました。それが藤原保昌と、小紅の兄妹であり、どちらも現在は藤原道長の傘下にいて生活を保っている。
小紅は道長の正室・倫子がいる土御門第に仕えています。
この小紅が土御門第を襲った盗賊に遭遇してしまうのですが、それが亡き兄・保輔のかつての手下で、何か良からぬ企みをしているらしい・・・?
これ色々と盗賊の事情を書いているのですけど、盗賊ですからね。どんな理由があろうと良くないのでは・・・
死んだ保輔が良い人だったので、仇討ち的な動機があったりしますが、良い人が盗賊なんかするかいな!
そういうところ、ちょっと共感できないんですよねえ。
わたしがこれを読んだのが、馳星周さんの『北辰の門』の直後であり、あの超ハイスピードな展開に比べると遅々として進まぬ・・・あれこれと人物が出てきてページを繰ったところ、まだ一夜しか経ってないんかい?みたいな。
少し、じれったい。
わたしはもっと上流の人々の政治的あれこれが読みたかったな〜。盗賊はどんな理由あれど、結局は捕まえて罰せられるので。特に盗賊の一味である少女・御以子が可愛くなくて、コイツ助ける必要ある?とか思っちゃう。小紅がこの子を庇う理由がよくわからない。
そういえば和泉式部が出てきましたが、なかなかイタい色ボケおばさんでした「この人ってこんな人だったの?!」という、現代にもいそうな人物として身近に感じられるのは面白い。(実際の和泉式部はそんな人じゃなかったかもしれないが)
結末は、これ本当だったらめっちゃ大事じゃないかーと思うようなセンセーショナルな内容でした。創作でしょうけど。
もし本当なら、藤原道長はやっぱりものすごい大政治家だったかも。