小田菜摘さんがまた新シリーズをお書きになっている〜
小田菜摘さんといえば、宮廷の女官ものがとっても本格的。楽しく読んでおります。
『大江こう子』シリーズは平安時代の内侍司に務める掌侍ですが、これは時代が下って、多分大正時代あたり。
そういえば大河ドラマ『光る君へ』で、ロバート秋山さん演じる藤原実資が、帝の体調が悪いことの原因究明に内侍司に出向くシーンがありました。そこで「私たちを疑うなんて」と女たちに総スカンをくらってましたな
内侍司といえばバリキャリの巣窟ではないですか。この女たちを敵に回したらおっかないですよ〜〜
さて、この本です。
「たぶん大正時代あたり」と言ったのは、設定が架空の世界だからなんですね。
御一新から50年くらい経った時代であり、先帝が突如崩御されて即位した今上帝は、まだ13歳。そのため、義理の伯母である涼宮梢子内親王が摂政宮としてお立ちになられています。
この涼宮さまがカッコいいんだな〜!まるで宝塚の男役のように、背が高くて少し男っぽい口調ながら凛として品があって。
華族女学校を卒業して、母親に無理やり中年の子持ちやもめと見合いをさせられそうになった妃奈子は、かつて宮中の女官であった大叔母に勧められ、逃げるように女官の採用試験を受け合格。
妃奈子は外交官であった父に帯同してロンドンやパリで暮らした帰国子女です。語学力は誰にも負けないけれど、外国育ちが災いして、帰国した後は
「賢しら」
「生意気」
などと言われ、婦人は出しゃばらず従順であることを強いられる苦痛の日々でした。
実の母にすら「エクセントリック」などと形容される妃奈子が、どこよりも古いしきたりを重んじる宮中の女官に?
無事にやっていけるのか?
という、女のお仕事&ちょっぴり恋愛の小説でした。
妃奈子は涼宮の侍官である高辻というイケメンとほんのりイイ感じけれど恋というよりは、宮中女官という特殊な世界で右往左往しながら自分のアイデンティティを見つける、キャリアウーマン的な題材の方が強いし、興味深かったです。ちなみに妃奈子の役職は命婦見習いです。
女だらけの古めかしい世界である宮中の女官は、人間関係からしてタイヘン。苦労は多いけど、妃奈子が鬱々としていた「婦人は出しゃばらず、従順に」という世間一般の価値観に比べたら、なんと皆誇りを持って生き生きと働いていることか。
妃奈子は女官の仕事を通して、自分を苦しめていた元凶は、母との関係だったことに気づきます。
ここらへんは、同じく若い娘を持つ母として、読んでいて胸が痛くなる箇所だったなー
「あんたのお母さんは、あんたの幸せなんて望んでいない」
そうかもしれない・・・のね?
娘のために良かれと思ってしていることは、実は自分の見栄とか世間体とか、もしくは娘に対する嫉妬だったりすることもあるわけね
この本はほんとに心理描写が繊細かつ巧みで、主人公が悩み葛藤する様子に共感することが多いのです。
自分が娘に対してもそうだし、娘である自分が母との関係を思い出してみたりなどして、だいぶ印象深い一冊となりました。
〜おまけ〜
明治政府のことをよく知りたくて買った!!
資料集的に使っています。
大久保利通時代の内務省。
絶大な権力すぎてやべーなと思った。
それもそうだけど、内務卿は体がいくつあったらこんな激務をこなせるんだ?