長州藩士、
山田市之允(山田顕義)の小説。
この人を主人公にした小説は珍しいかも?
山田市之允って、北越戊辰戦争の時に援軍を新潟に上陸させて、新潟港占拠により西軍勝利を決定づけた人。
あとは、箱館戦争の時に長州の参謀として、薩摩の黒田了介と一緒に五稜郭を攻略した人。
それから西南戦争の時に会津の山川浩(大蔵)の上官で、山川とひと悶着あった人。
そこらへんが読めるのかなーと思って手に取りました。
山田市之允はちっこい男で、でも類稀なる軍略家なので「小ナポレオン」と呼ばれていたとのこと。小説の中で、いつも誰にでも「ちっこい」「ちっこい」と言われておりました。
身長五尺というから、150cmくらいでしょうか。
この人が正式に長州軍の総指揮をとるようになるのは鳥羽伏見の戦いからなのですが、一応総指揮なので西洋軍服を着なければならず、服が大きすぎて、指が袖から出てなかったらしいです。
なんかカワイイですね
まうのすけさんのマンガだけど、↑↑↑ほんとにこれみたいだったかもしれない・・・
(ちなみに黒田了介はでかい)
雰囲気的には
長州藩オールスターズ?
っていうか、
松下村塾の学園モノ?
市之允は年齢的には第二世代って感じで、松下村塾に入門した頃はまだ前髪立ての14歳の少年。ちっこいし童顔だし、頭は良いのだけど口ベタなので、みんなに「市ィ」とか呼ばれて可愛がられます。
尊敬する人は久坂玄瑞パイセン、優しいアニキ。後に親友となります。
あと、ちょっとムカつく高杉晋作パイセンは我が道をいくカリスマ不良なんだけど「高杉さんに認められたい」という熱烈なファンも多い。危険な魅力ってやつ?高杉はいつも市にちょっかいかけてきますが、結局市が可愛いんですね。
エリート貴公子・桂小五郎。到底手が届かないような長州藩上層部の人ながら、市之允は桂さんの寵愛も受けます。
過激な行動を起こす久坂のもとに行こうとする市之允の前で障子をピシャッと閉めて、
「嫌だね」
「行かせない」
「君を気に入ったからだ」
とか言って、なんか桂さんもソフトな口調で妖しい魅力を放つな・・・(この人だけ長州弁を喋らないし)
邪な心で読むからそう見えるんかな・・・
市之允の長年のライバル、山県狂介。山県は身分が低いのでコンプレックスが強く、出世欲の塊。ちなみに市之允や高杉は藩主の小姓にも上がれるような家格です。だからこそ山県は市之允に嫉妬心をメラメラ燃やしています。
山県との主要エピソードは、やっぱり北越戊辰戦争でしょう。長岡藩・河井継之助を相手にした苦戦は山県狂介にとって人生最大のピンチだったらしく、もしかして市之允が援軍に来なかったら東軍は勝ってたりして?
なのでこの瞬間、山県にとって市之允は恩人にもなり、同時に誰よりも目ざわりな存在にもなりました。
長州は最終的には勝ち組になったけれど、そこまでは本当に苦難の道のり。仲間はバタバタ死んでいくし。
なので身分を問わない軍隊編成とか、最新式の西洋武器とか、頭のカタい上級武士が根こそぎいなくなったからこそ出来たことかも知れんね。他藩でも西洋銃器の重要性に気付いた革新的な人物はいましたが、だいたい藩の重鎮たちに握り潰されたりしてましたから。
それにしても、タイトルから五稜郭の戦いがメインになるかと思って期待していたのだけど、その前のエピソードが多すぎて全然箱館戦争まで辿りつきません。最後にちょっぴりだけ五稜郭。なんだかなあ・・・
市之允が天才的軍略家とされる理由は分かった気がします。この人、「何をやらないべきか」がわかっている人でした。少ない兵で劣勢の時に、限られた資源をどこに配置するべきかの判断が優れています。
ちっこい外見のせいか、彼は軍の指揮をとっていてもよく軍務違反されてますナメられるんでしょうか。軍務違反した隊は必ず敵にやられてますが。言うこと聞けっちゅうんじゃ。
だから西南戦争で熊本城突入の時に山川浩が単独行動をしたのにあんだけブチ切れたのだろうか?(あれは本隊との連絡が取れなくなったからやむを得ずの判断だったかと)
が、その西南戦争まではこの小説は行きつかず。五稜郭で終わっています。
戦後、山田が法の道に進んだこととか、長女が会津の松平容保公の三男と結婚したとか、第一線で戦ってきたからこその心境の変化を書いて欲しかったなあ。(一言ナレーションにて終了。)
途中で打ち切りっぽくて残念。
〜おまけ〜
↑「死にたがりの獅子 山川大蔵幕末異聞」より
会津人に対する憎悪が和らいだのって山川浩の影響があったかと思うのですが・・・そんなことないかな?(わたしの妄想)
ヒジカタ君の11月カレンダー。五稜郭のメンツで。
このカレンダー、来年のも欲しいな。