écriture 新人作家・杉浦李奈の推論Ⅷ 太宰治にグッド・バイ | あだちたろうのパラノイアな本棚

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読書感想文、映画感想、日々のつぶやきなどなど。ジャンルにこだわりはありませんが、何故かスリルショックサスペンスが多め。

 

 

追っかけてるシリーズの新刊!キラキラ

 

2ヶ月に1冊くらいのペースで出ているのに(しかも松岡圭祐さんは他の作品も出してるのに)全然失速せずに面白いってどういうこと?純粋にすごいです・・・目

 

今回も文句なしに面白かったー!

 

しかも、胸が切なかったぐすん

 

”売れない若手小説家”李奈がゆく先に次々と起こる事件。李奈が冷静で、むしろ淡白な性格なのでサラッと受け入れられてはいますが、いつも人が死んでるし、わりと悪意に満ちた凄惨な事件だったりする。

 

 

この巻の題材は、ふたたび太宰治。

太宰治は山崎富栄との心中で亡くなった時に四通の遺書を遺していましたが、幻の五通目の遺書が見つかったとのこと(もちろん小説上の設定)。

どうやらその内容が、太宰治の遺作『グッド・バイ』の謎を明らかにする可能性があるらしい・・・?

 

筆跡鑑定が完了するのを固唾を飲んで待つ大手雑誌記者たち。

 

だけど、鑑定が完了すると約束されたその日に、密室の火事で鑑定者が亡くなってしまった。

そして、幻の五通目の遺書も燃えて灰になってしまった!!

 

なぜか本業の小説家よりも、文学にまつわる事件の探偵役で活躍してしまう李奈でした。

 

ランニング

 

毎回なんですけど、事件に絡んだ文学作品のウンチクが興味深いです。

 

『グッド・バイ』:

妻子ある身で十人近い愛人がいるという主人公・田島が、愛人たちとの関係を清算するために、愛人を一人ずつ訪ね、別れ話に持っていきます。けれどうまくいかない。落語のような笑いを狙った明るいテンションの一編で、太宰が心中してしまったので未完のまま終了。

 

この作品の解釈から、太宰の心中事件が狂言のつもりだったのに本当に死んでしまったのか、それとも太宰の心が純粋で繊細だったから思い悩んでの行動だったのか、作家論を左右することになります。

 

太宰の繊細さを地でいくかの如く、心が透き通った青年が出てきて、李奈の人生に大きな影響を与える。

が、青年は命を落としてしまうのだ。(それも太宰のように)

 

 

かわいそうだったぐすん

 

青年もかわいそうだったけど、青年を失った李奈もかわいそう。

 

太宰治が時代をこえて読者を魅了するのは、「これはまさに自分のことが書かれている」と読者が思ってしまうくらいの共感を誘うからとあったのだけど、

 

うーんそうなのか・・・真顔

 

「太宰ヘンな人だな」とは思っていたけど、共感ってのはしたことがなかったな・・・

 

小説という作品の文学性や芸術性と、商業主義との兼ね合いもテーマの一つになっていまして、現実は厳しいなあ〜と。

イチ読者として、出版業界を潰さないために出来ることは何でしょうか?とにかく読んで、発信して、おすすめするくらいでしょうか。

 

ミステリの部分はさすが!ポアロや金田一耕助バリの古風なシチュエイションで最後ばしっとキメてくれるのは爽快です。

 

そしてやっと報われつつある李奈の本業。

ヨカッタネ!でもまだシリーズ続いてくれるのかな?

 

 

〜おまけ〜

 

 

雪国のイヌはつらいよ。

 

ある朝のおさんぽの光景。