いやー、これは面白かった。
2017年、松本清張賞受賞作とのこと。なるほど納得です。
これは明治21年、御茶ノ水にある高等師範学校女子部(女高師)で学ぶ女学生たちが活躍する物語。
現在のお茶の水女子大学の前身にあたります。
女性教員の養成機関で、帝国大学への門戸が女子には閉ざされていた時代にあって女子教育の頂点でした。
(余談ですが日本で初めて女子を受け入れた帝国大学は東北大学で、それは大正2年のこと)
まずはさておき、とても個人的な萌えどころの話をしてもいいでしょうか。
山川校長
超絶かっこいい
山川校長とは会津の英雄。
幕末戊辰の会津の籠城戦を戦い抜いた会津藩家老の山川大蔵さんです。
明治の西南戦争でも活躍した後は、高等師範学校の校長をしています。(史実です)
そして寄宿舎の舎監は、山川大蔵さんの姉である山川二葉さん。あだ名・フタ婆。
この人が会津武家の権化とも言うべく、大変厳格でおっかない舎監として登場します。
辛いこともありましたけど、新しい明治の世を生き抜いているこの姉弟の会話がね、なんとも良いのですよ。
そして華麗なる美女・大山捨松さんもいらっしゃいました。
二葉さん、大蔵さんの末の妹です。
津田梅子らと共にアメリカ留学し、日本人で初めてアメリカの女子大学で学士号を取得した才媛。
女学生たちの憧れの的なのです。
この方達が舞踏会でダンスなんて踊ったりしている様子を見ると、昔、壮絶な戦争があったなんて信じられないですね。
やっぱり、生きてナンボなんだろうなあ……
最初からテンション上がりましたけど、あくまで上記の人々は脇役です。主役は女学生。
横浜出身の才色兼備の優等生・咲と、咲に憧れながら引け目も感じている親友・夏のコンビです。
他の学友たちも個性豊かです。
師範学校の講堂で、森有礼文部大臣が主催する舞踏会が開かれることになって、咲や夏たちはドキドキしながらオシャレをして出席します。
ですが会場に不審な人物が入り込み、庭に爆弾が仕掛けられる事件が発生。その後、新聞に犯行声明が掲載されます。
それは、欧米の真似事をして日本の道徳を貶めているという森有礼に対する糾弾状でした。
次は鹿鳴館を狙うと言う挑戦的な文句が書いてありましたが、森大臣は師範学校の女学生たちを鹿鳴館の舞踏会に招き、敢えて挑戦を受けるような態度をとって・・・
この、爆弾事件に始まる鹿鳴館の危機を咲や夏がどう防ぐのかがミステリーになっています。
これだけでも読み応えがありますが、この小説、話題が何層仕立てにもなっていて、軸はこれだけではない。
咲たちと知り合う人力者の車夫、ハーフの久蔵を通して、外国人相手の遊女「ラシャメン」の悲劇も描かれています。
どうしてこんなに彼女らは差別されなければならないのか。久蔵も日本人離れした容貌から蔑まれて生きてきた人間です。
そして、いくら女子の最高学府で学ぶ優秀な女子学生とはいえ、世間一般には、女子が教育を受けることに否定的な意見が大半の時代。爆弾事件があっても同情するどころか、「女が学問なんかするからこういうことになるんだ」などと中傷の言葉が出るくらいで、その理不尽さに腹が立ちます。
森有礼は女子教育に熱心ではありますが、それは強い国家を作るため。そして欧米と対等なところを見せるためです。
真に彼女たちの幸福や将来を考えてくれているわけではない・・・
そんな欺瞞を女学生らは見抜き、傷付き、怒って泣いて乗り越えてゆく物語でもあります。
「どんな粗相をしたとしても、それが誠心誠意からの行いであれば恥じることなくお帰りなさい」
厳しくおっかないけど、一本筋が通っている会津のフタ婆がビシッとキメます。
同じく一本筋が通った山川校長も、父親のような大きな暖かさで生徒たちを包み込みます。
そして、ひっそりと活躍しちゃう警察官の藤田五郎さん・・・
藤田さんは”もと会津藩士”という名乗り方をしていて、新選組とは言ってなかったですけど。
暴漢に向かって「士道不覚悟」なんて言っちゃって、もうこの書き方が奥ゆかしいんだから。
〜おまけ〜
これも追っかけてるマンガ『パリピ孔明』
最新刊の9巻より。
現代に転生した諸葛孔明さんが、歌手志望の英子さんの軍師になってメジャーデビューさせようとプロデュースするお話です。
アニメ始まりましたね!!
ホストクラブに潜入して、ホストと勝負する孔明さん。
酒に関しては底なしの大虎って・・・
あの人よね??