おやっ???
なんだこの本は…
やたら
エロいぞ?!
と気付いた時はもう遅い、
宇能鴻一郎さんで検索すると、官能作家でヒットする。この本を読むまでそのお名前、知らなかったです…
ただ、官能作家なんだけど、第46回(昭和36年度)芥川賞受賞作家であり、純文学ののち官能作家に転換したそうな。
ちなみに何故この本を手に取ったかというと、スマホのAIちゃんがわたしの購入歴とか検索歴とかをもとに何度も何度もオススメ本に上がるのですが、「いやちょっと今そういう猟奇的な気分じゃないからパス…」と敬遠していたのに、ある時ある本屋の平台で偶然目に止まり、魅入られるようにフラフラと買っちゃったという経緯があります。
(皆様の本の選び方ってどういうものですか?!わたしはこんな風にめちゃくちゃ偶然の出会いに身を委ねる系なんですけども)
ただタイトルからは猟奇的ホラーを連想するのですが、実際はそうではなかったです。
そして短編集なのでお話は色々なのですが、
とにかくエロい
なのでネタバレ防止以前に、内容的にほぼ詳細が書けません。
訳のわからないレビューになると思いますが、ご容赦を。
タイトルとなっている「姫君を喰う話」ですが、
ある庶民的なモツ焼き屋で酒を飲みながら、偶然隣に座った男に酔っ払ってクダを巻く男の話。
話の中身が三分割されていて、1部は、美味いモツ焼きの話。
モツって内臓一般のことですが、人間は獣のいろんなとこを食べますから、牛や豚のここの部分が柔らかいだの色がどうだのコリコリしているだの、微細に説明が加えられていて、美食家のウンチクを聞いているようで、なんだか猟奇的な感じもして、薄気味悪くなってくる。
ああ、これがメスの牛とか豚とかの姫を喰う話か、と。
次が第2部で人間の女の話になって、主人公が閨の間で女性に行う行愛撫の話になる。ネットリと執拗で気持ち悪い。これもまあ、姫君を味わうって意味で喰う話になるのかな、と思いつつ読む。
第3部。隣に座った男が、いきなり自分の話を始める。
彼は、自分のことを滝口の武者、平至光だと明かし、自分がお仕え申し上げた斎宮の姫の話を始めます。
斎宮は高貴なお方だし、汚してはいけない神聖な姫だし、恋慕の対象にはしてはいけないのに、どうしようもなく恋してしまった。
挙句、彼は罪を覚悟で姫を拉致したのですが、姫はすぐに死んでしまい、死んでしまった姫をなお愛撫する…
(雨月物語の「青頭巾」を彷彿とさせる)
結局、主人公となる男がベロベロに酔っ払っているので、この1部〜3部とも、何が本当にあって何がヨタ話なのかわからなかったです。
とりあえず姫は生きていても、死んでいても、解体されていても、とても男に愛されていました。体の隅々まで。
何だこれ……キモ……
ちなみに芥川賞受賞作の「鯨神」も収録されていましたが、芥川賞って何なんでしょうか。理解できないな。
それは、とある漁村で、巨大鯨と闘う漁師たちの物語。
正直言いまして、何が面白いのか分からなかったよ…
一番良かったなと思ったのは、「花魁小桜の足」ですかね。
幕末の長崎出島で、オランダ人を客にする娼館の遊女・小桜の話。
小桜はお客の甲比丹(カピタン。英語で言うならCaptain。オランダ商船の長のこと)に惚れて、憧れています。
オランダ本国に帰るためもう二度と会えない彼にもう一度天国で出会うために、キリシタンになる決意をします。
そのためには、毎年正月に行われる踏み絵で、キリストの絵を踏むことを拒み、そのままハリツケになってマルチリ(殉教)する必要がある。
通事の大村彦次郎に、そのようにそそのかされます。通事は、マルチリの人数を多くあげればあげるほど自分の地位が上がるので、世間知らずで純粋な花魁小桜を騙しているのです。
マルチリって、要は十字架に磔にされて、槍で全身を突かれて死刑になることなのですが、小桜はポーッとしていて、あまり深く考えていない。
ある時、小桜は別のオランダ人客に買われました。
彼は閨の間で、
「僕の顔と体を存分に踏みつけてくれ。もっと、もっと」
とかいう、ちょっと特殊な性癖の方。
「こんな美しい女性の足に踏まれるのは、すべての男の悦びなのだよ」
と聞いた小桜は、へーそうなんだ、と思う。
次の正月の踏み絵で、キリストの絵を前にして、花魁小桜は迷うことなく足を出し…
純粋さと、エロさと、時代の特徴というか異常性が混じっていて、えも言われぬ後味が残る短編でした…
こういうのは好きね。