『黒と青』 著 イアン・ランキン (HPB)
評価:☆☆☆
1960年代に実在したグラスゴーの殺人鬼バイブル・ジョン。その犯行を模倣する新たな殺人鬼ジョニー・バイブルがスコットランド全域で犯行を繰り返していた。その頃、リーバスは過去の捜査に違法な点があったとマスコミに騒がれ、警察内部からも厳しい追及に追われていた。逃げるように、管轄内で起きた奇妙な墜落死事件とジョニー・バイブル事件の手がかりを求め、リーバスは北の街アバディーンに向かう。しかし、本家バイブル・ジョンも新参の殺人鬼を探しにアバディーンに向かっていた。英国推理作家協会賞ゴールド・ダガー賞を受賞したランキンの代表作。
今回もリーバスは胃の傷みそうな状況に置かれる。前作でお偉い方から反感を買ったリーバスは、セント・レナーズ署からエジンバラ一治安の悪いクレイグミラー署に移されてしまう。さらに、過去の事件を内部からも外部からも穿り返され警察生命の危機にさらされる。現実苦から逃れるように仕事に打ち込むから「今日も長い一日」となっていく。この人は長生きできないなぁ。
シリーズの面白さはどんどん深まっていくのだが、ミステリの面白さはいまいち深まってこない。この作品でゴールド・ダガー賞を受賞したようだが、なんだかなぁ。
過去のサイコ・キラーとリーバスのどちらが先に現在のサイコ・キラーを追い詰めるかという設定は面白いのだが、ミステリとして意外性に欠けている。二人の殺人鬼が実は……みたいなものが無かったのが不満であった。ランキンが敬愛するエルロイは複雑なプロットを駆使しつつ、ミステリとして物語の中盤と終盤に意外な展開を設けている。ここに格の違いがある。