【憲法改正】「美しい」は共感を得られるか【弱者への配慮】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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そういう想いのブログです。

「改憲派が集会 国会に憲法改正の発議求める」 NHKニュースウェブ2015年11月10日
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20151110/k10010300751000.html

「憲法を改正すべきだという立場の人たちが東京都内で集会を開き、国会に対してすみやかに憲法改正を発議するよう求めました。

東京の日本武道館で開かれた集会には、主催者の発表で1万1000人余りが参加し、主催した団体の共同代表でジャーナリストの櫻井よしこさんが、「現行の日本国憲法では日本の平和と安全は守れず、日本らしさも表現されていない」と述べました。そのうえで、「戦後初めて、憲法改正の発議に必要な3分の2の国会議員を確保することが可能な環境になっている。来年の参議院選挙を一つの目標に、力を結集することが大切だ」と訴えました。
そして、「国民の平和な暮らしと日本の国柄を守るための憲法改正がますます必要となっている」などとして国会が憲法改正をすみやかに発議し、国民投票を実施することなどを求める決議を採択しました。」


「詳報(1)櫻井よしこ氏「来夏の参院選を目標に結集を」」 産経ニュース2015年11月10日
http://www.sankei.com/premium/news/151110/prm1511100013-n1.html

「 有識者らでつくる「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が10日、「今こそ憲法改正を!1万人大会」を東京都千代田区の日本武道館で開催し、国民の会共同代表でジャーナリストの櫻井よしこ氏が来年夏の参院選に向け「憲法改正の実現に向けて全員の力を結集していこう」と呼びかけた。次世代の党の中山恭子代表ら衆参両院の国会議員や米カリフォルニア州弁護士のケント・ギルバート氏も出席。安倍晋三首相は衆院予算委員会のため不参加だったが、「21世紀にふさわしい憲法を追求する時期に来ている」とのビデオメッセージを寄せた。
(以下略)」


「詳報(2)安倍首相「自身の手で憲法をつくる精神こそ新時代を切り開く」」 同上
http://www.sankei.com/politics/news/151110/plt1511100052-n1.html

「安倍晋三首相のビデオメッセージ

 ご来場の皆さま、こんにちは。自由民主党総裁の安倍晋三です。本日ははるばるインド、ベトナムからのご来賓もお迎えし、「今こそ憲法改正を!1万人大会」が盛大に開催されましたことに心からお喜びを申し上げます。憲法改正の早期の実現を求め、全国各地からご参集された皆さまに心から敬意を表します。

 来年は日本国憲法が公布されてから70年の節目を迎えます。わが国は戦後、現行憲法の下で、自由と民主主義を守り、人権を尊重し、法を尊ぶ国として、一貫して世界の平和と繁栄のために貢献してまいりました。現行憲法のこうした基本原理を堅持することは、今後も揺るぎないものであります。

 他方、70年間のときの流れとともに、(※)世の中が大きく変わりました。この間、憲法は一度も改正されていませんが、21世紀にふさわしい憲法を追求する時期に来ていると思います。

 また、現行憲法は日本が占領されていた時代に、占領軍の影響下でその原案が作成されたものであることも事実であります。憲法は国の形、未来を語るものです。その意味において、私たち自身の手で憲法をつくるという精神こそが、新しい時代を切り開いていくことにつながるものである。私はそう考えます。」

※ 「国の内も外も」が抜けている(下記動画)。「外」に言及していることが重要だと思われる。産経新聞はなぜこの文言を省いたのだろう。

http://www.sankei.com/politics/news/151110/plt1511100052-n2.html

「 自民党は結党以来60年、憲法改正を党是とし、選挙の公約にも憲法改正を明記してまいりました。平成24年には党として憲法改正草案を発表し、具体的な改正項目を示して、これを世に問うてまいりました。

 憲法改正の手続きについては、第1次安倍政権で国民投票法が制定され、第2次安倍政権で、宿題とされていた投票年齢の18歳(以上)への引き下げが実現しました。憲法改正に向けて渡っていく橋は整備されたのであります。

 そして今、憲法改正に向けた議論が始まっています。ここで大切なことは、その議論が国民的な議論として深められていくことであります。衆参両院の議員のそれぞれ3分の2以上の賛成が得られて発議されますが、その成否を決めるのはあくまで国民投票です。国民が「憲法を改正すべきだ」と思って初めて、なされるものであります。

 憲法改正は党派を超えて取り組むべき大きな課題です。各党の皆さんにも協力を呼びかけ、実りある議論を十分に行い、国民的なコンセンサスを得るに至るまで深めてまいりたいと思います。

 「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の皆さまにおかれては、憲法改正1000万賛同者の拡大運動を中心に、日本の国づくりの国民的議論を盛り上げていただいており大変心強く思います。21世紀にふさわしい憲法を自らの手で作り上げていく。その精神を日本全体に広めていくために、今後ともご尽力をいただきたいと存じます。憲法改正に向けて、ともに、着実に歩みを進めてまいりましょう。」


「安倍晋三(ビデオメッセージ)「今こそ憲法改正を!武道館一万人大会」主催 美しい日本の憲法をつくる国民の会 日本武道館於 平成27年11月10日」 YouTube2015年11月10日
https://www.youtube.com/watch?v=BpAP7jEiJNY



 10日、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」が憲法改正を訴える集会を開き、これをNHKが報じた。
 改憲派の大規模集会が報じられたこと自体は好ましい。
 ただし、安倍晋三自民党総裁がビデオメッセージを送ったことについて報じた方がよかったのではないかという気はする(産経新聞は「首相」となっているが、「自由民主党総裁の安倍晋三です」との通り、自民党総裁の立場で出した)。

 私が気になるのが、この主催団体に「美しい」という文言が入っていることだ。
 「美しい」が「日本」にかかっているのか「(日本の)憲法」にかかっているのか、曖昧なところがあるが、とにかく「美しい」という文言が入っているし、「美しい」が先頭に掲げられている。
 憲法改正には、安倍総裁も指摘する通り、国民投票を要する。
 これについて国民的合意を形成していくことが必要だ。
 その時、「美しい」という言葉は使わない方がよいのではないか、と思うのである。

 わが国の戦後の言論の主流は「日本は悪い国だ」であった。
 今もそうだと言ってよいだろう。
 世論に大きな影響を与える地上波テレビは基本的にこの路線だ。
 これに対して、保守派においては「日本は良い国だ」「日本は美しい国だ」という言論が好まれる。
 保守派の内輪でこういう話をする分には構わないと思う。
 しかし、憲法改正を目指す国民的議論をする上で、「美しい」という看板を掲げることは適切なのだろうか。
 広く国民を巻き込んだ議論をすべきなのに、これを掲げることが妨げにならないだろうか。

 保守派の皆さんは、
「わが国は天皇を戴き、自然豊かな美しい国だ。
諸外国では「うしはく」王が人民を搾取すれど、わが国では「しらす」天皇が民を「おおみたから」として慈しむ。
日本に生まれたことは暁光であり、幸せなことだ。」
という国家観を大体共有している。
 しかし、日本国内には弱い人、不幸な人もいて、
「なんでこんなところに、こんな時代に、生まれてしまったのだろう。」
という人もいるのである。
 こういう人たちに向かって、「美しい日本の憲法をつくる国民の会」という看板を掲げても、
「無邪気に「美しい」と言えるなんて、あんたらは勝ち組で幸せなんだね。」
と思われるだけで、憲法改正について聞く耳を持ってもらえないのではないか。
 いろんな人を巻き込んで国民的合意を形成する上で、果たして適切な看板なのだろうかと思うのである。

 保守派はもともと「自助・共助・公助」の「自助」を協調し、「独立自尊」を言う余り、弱者に冷淡なところがある。
 経済通のネット保守の間では、弱者に冷淡な保守について「シバキ主義」「酷使様」と皮肉る声が聞かれる。
 例えば、本会代表の櫻井よしこ氏は、消費税増税に賛成している(http://yoshiko-sakurai.jp/2013/09/26/4913、倉山満「増税と政局・暗闘50年史」(イースト・プレス、2014年)118ページ)。
 天皇陛下や皇族が民を慈しんでくださるのはその通りだと思うが、保守言論人が「仁徳天皇の民の竈」を放り投げているかの如きところがある。
 その点、本会に出席した次世代の党は、消費税増税に明確に反対し、弱者への配慮を見せており、憲法改正に向けて好ましい姿勢を示していると言える(http://ameblo.jp/wada-masamune/entry-12094653377.html)。
 「美しい日本の憲法」を掲げるのであれば、「日本は美しい」という共感を広げていかないといけない。
 そのためには、素直にそう言うことができない弱者への配慮が必要になってくると思う。
 なお、安倍総裁は消費税増税に消極的だと解されるし(http://ameblo.jp/bj24649/entry-11875914413.html)、現に昨年末は消費税再増税を先送りするべく解散総選挙に打って出た。
 また、第二次安倍政権は、金融政策を転換し、雇用を創出し、経済的弱者に利益をもたらした。
 そういう安倍政権に対して実質賃金を低下させて貧困化をもたらしているなどという不合理な批判をし、詭弁を吐いて弱者の不満を煽るヒゲメガネの香具師は、憲法改正の障害だと言える(http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-12093906612.htmlhttp://ameblo.jp/calorstars/entry-12095047048.htmlhttp://ameblo.jp/bj24649/entry-11909293500.htmlhttp://ameblo.jp/akiran1969/entry-12019199812.htmlhttps://www.youtube.com/watch?v=n3BCEFpuz1U)。

 安倍総裁は、原案が占領軍によって作られたという日本国憲法の出自の悪さを指摘をしつつ、この憲法の基本原理は堅持するとし、抜本的な見直しをしようとは言わない(基本原理から見直すべきとする本として、長谷川三千子、倉山満「本当は怖ろしい日本国憲法」(ビジネス社、2013年))。
 また、国内のみならず国外の状況も見て、これに対応するべく憲法改正が必要だとする。
 兎にも角にも当面の国防上の問題に対応するため9条2項を改正すべきだという意思の表れではないか。

 本会は国会は憲法改正をすみやかに発議すべきだという決議を採択したとのことだが、公明党が連立与党に入っている以上、それは難しい。
 とは言うものの、9条2項改正に向けた国民的合意は形成していかないといけない。
 「美しい」憲法を目指すかどうかはさておき、自国の安全保障を他国に委ねる日本国憲法が危険なものであり、醜いものであることは間違いない。
 憲法改正すべしという民意を示し、与党を後押しするのがよいと思う。
 安倍総裁も紹介している、本会の行っている署名運動は有益だろう(https://kenpou1000.org/approve/)。

 安倍総裁の言う通り、「憲法改正は党派を超えて取り組むべき大きな課題」だ。
 保守派の仲間内だけでなく、広く国民を巻き込んでいくべきものだ。
 来年の参院選で改憲勢力が国会の3分の2を占められそうだ、国会はすみやかに憲法改正を発議して国民投票を実施すべし、と勇ましい声を上げても、来年の参院選前に消費税再増税が確定してしまえば、安倍自民党は得票を伸ばすことができず、憲法改正は遠のくだろう。
 「美しい日本の憲法をつくる」と言う人たちこそ、弱者に配慮し、消費税増税についても反対の声を上げていくべきだと思う。