時代に合わない「名目賃金と実質賃金」 | 猫の遠ぼえ『次の世代に残したい日本』

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名目賃金を論じる際に抜けがちな視点の一つは、労働者のかなりの比率がパートタイム(短時間)労働者という事実だ。アベノミクスと最近の人手不足は主婦や高齢者の雇用を増やしたが、それはが平均賃金である名目賃金、ひいては実質賃金の下降圧力になっている。

では、一般労働者とパートタイム労働者(以下パート)では、労働時間および賃金にどの程度の差があるのだろうか。


労働時間が短いことを考慮してもパートの賃金はかなり低く、時給にすると約半分となっている。
ただ、パートは一般的に責任ある地位に就くことは少なく、企業の中での役割や職種も一般労働者とはかなり違うから単純に比較することはできない。

それはともかく、この大きな賃金差はパートの増加が賃金の平均値にも大きな影響があることを示唆している。そこで、アベノミクス開始後の名目賃金と、そこからパートを除いた一般労働者の賃金推移(前同比)を比較してみた。


予想通りというか当たり前というか、パートを除いた一般労働者の賃金(決まって支給する給与)は2013年の途中から上昇に転じている。グラフから分かるように一般労働者とパートの賃金の伸びより名目賃金の伸びのほうが小さいが、それこそがパートの人数が大きく増えた結果なのである。

一般労働者もパートも賃金は増えているのに、パートの増加は名目賃金を引き下げていた。しかし、賃金に関する議論はパートも含む名目賃金とそれを基に計算した実質賃金で行われるから、かみ合わないのである。とりあえずは上記のように、分けて議論するべきだろう。

では、そのパートタイム労働者は一体何人くらい増えているのだろうか。ところが、雇用者を労働時間で分けた厚労省の統計(毎月勤労統計調査、賃金構造基本統計調査)では人数が分からない。一方、雇用者を雇用形態で分類しているのが総務省の労働力調査だが、こちらなら人数が分かる。(訂正 厚労省の統計でも人数は分かります。勘違いでした

縦割りの弊害なので、ぜひ改善してほしいと思うが、現状の分類は次のようになっている。


(労働時間による分類)  厚労省
  一般労働者
  パートタイム労働者

(雇用形態による分類)  総務省
  正規の職員・従業員
  非正規の職員・従業員(パート、アルバイト、労働者派遣事業所の派遣社員、契約社員、嘱託、その他)

『労働時間による分類』の一般労働者のなかには非正規の職員・従業員が含まれるし、『雇用形態による分類』の正規の職員・従業員(正社員)のなかにもパートタイム労働者が含まれている。だから「正社員=一般労働者」「非正社員=パートタイム労働者」ではないことに注意が必要だ。

そこで、労働時間による分類上のパート労働者数の代わりに、雇用形態による分類上のパートとアルバイトを足した人数に注目した。大雑把ではあるが、傾向を示していると考える。アベノミクスが始まった2013年当初から最近までの「パート・アルバイト』と『その他』の増減をグラフにした。

(追記)上記グラフの数値が間違っていたので修正しました(2015.5.2)

非正規雇用全体で135万人増加している中でパート・アルバイトは93万人と69%を占めているが、その主役は景気回復と共にパート勤務などを始めた主婦層と定年を迎えて再就職する世代だ。
そして最初に見たように、パート勤務の給与は意図的に抑えていることもあって低い。

また、定年後の再就職は同じ会社に契約社員や嘱託として残っても、給与が半額になるのが一般的だ。高齢者は週のうちの数日だけ働くケースもあるから、その場合はもっと少なくなる。

以上のような理由から、アベノミクスで雇用が大幅に改善されたことが平均給与の引き下げ方向に働く結果につながっているのである。

生産年齢人口の減少はとうの昔に始まっており、それにつれて女性や高齢者の就業率は上がってきている。そして、これからも多様な就業形態、雇用形態を準備して働きやすい環境を整備する必要がある。人手不足がさらに進めば、短時間労働者はますます増えることになる。

ところが、現在公表されている名目賃金はそのような環境の変化を反映していない。これは週3日しか働かない高齢者や4時間勤務のパートタイマーとフルタイムの正社員をごちゃ混ぜにしてはじき出しており、無用な誤解を招きかねない指標になっている。

実質賃金は、その名目賃金を基に、しかも消費増税の影響を考慮せずに計算しているから、デフレ不況で雇用環境が悪かった民主党政権時代の方が良かったなどという馬鹿げた話も出てくるのである。

政府は現状の名目賃金、実質賃金を補完する指標を検討するべきだ。

(以上)

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