【チャンネル桜】政治家を守るためなら言論人はスジを曲げていいの?【西田昌司】 | 独立直観 BJ24649のブログ

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流行に浮かされずに独り立ち止まり、素朴に真っ直ぐに物事を観てみたい。
そういう想いのブログです。

 倉山満先生が、「ジャパニズム 18号」(青林堂、2014年4月)で、驚くべき告発をした。
 本号の重大なネタの1つをバらすことになってしまうが、発売日から大分経過しているので、そろそろいいだろう。
 本号も内容は全体的に良いので、購読をおすすめする。

「 私は「くららじ」という生放送の番組で二〇一三年二月から、上念司氏、浅野久美氏とともに、財務省の木下康司氏を諸悪の根源として増税反対の論陣を張っていました。官僚の都合で増税延期ができないのなら国家予算審議とはいったい何だ、という話です。附則第十八条のいわゆる景気条項を発動させることは可能なわけですから。経緯はご存知の方が多いと思うので省きますが、要は、それまで我々と同じく木下氏を黒幕として安倍総理がんばれと自らの番組でも言っていたはずの水島氏が、ある筋から情報を得て我々に、安倍総理は増税を決定したようだから木下氏を叩くのは止めてくれ、増税反対Tシャツなどというのも止めてくれ、と番組開始の三十分前に突然言ってきたことがきっかけです。そちらはそちらでやってくれ、我々は認めないといった話が本番五分前まで続きました。その日のくららじはどっと「通夜らじ」になったわけです。ご自分の政治的立場、活動家的立場はともかく、番組を、それも自分の会社の番組をつぶしにかかるなどというのは社会人としてどうなんだという話でもあります。
 次の日の水島氏の番組が私からみてあまりにひどかったので、当時は専務だった井上氏に、まったく納得ができない旨のメールを送りました。会いたいというので二時間、井上氏と水島氏、私で話をしたんですが、初公開というのはここからです。反安倍とならないよう木下批判を止めてくれということについて、水島氏は三つの理由をあげました。藤井氏の国土強靱化に予算をつけてもらわなければならないこと、尖閣の漁民対策に予算をつけてもらわなければならないこと、そして参議院議員の西田昌司氏にはNHKの問題についてがんばってもらわなければならないこと。西田氏、藤井氏を守りたい。だから木下の悪口を言うな、ということでした。
 明らかに変節して、木下は悪くない、悪いのは戦後レジームだというわけのわからない論調になったチャンネル桜から私は離れました。」(88,89ページ)

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 幻滅である。
 チャンネル桜は消費税増税について財務省を批判する貴重なメディアだった。
 なのに、西田昌司参議院議員、藤井聡内閣官房参与という、「身内」を守りたいがために変節したのである。
 常識的に考えて、消費税増税について財務省が重要な役割を果たしていないわけがない。政治家の多数が貧乏人からもお金を巻き上げる(逆進性がある)消費税増税を狂信的に不合理に推進し、財務省が体を張って止めようとしても止められなかった、などということがあり得るのだろうか。選挙に不利なことを政治家がやりたがるわけもなく、普通に考えて、財務省が重要な役割を演じているだろう。財務省は悪くない、木下康司は増税に反対するいい人だ、というのであれば、その根拠を示すべきだ。百歩譲って「戦後レジームが悪い」というのを認めるとしても、その戦後レジームの中には財務省がおり、そして消費税増税との関係では財務省が重要な部分を占めていることは疑いなく、やはり財務省批判はすべきことになるだろう。
 水島氏が財務省批判を封印するのはスジが通らず、誤魔化しを言っているに過ぎない。財務省には、そして木下康司事務次官には、必ず批判されるべきところがある。
 「日本のため」「本当のことを言う」という報道姿勢はどこに行ってしまったのか。しかも消費税増税という重要な局面で。

※ 水島総氏は先の都知事選に際してチャンネル桜の社長を辞し、現社長は井上敏治氏の模様(http://goo.gl/ZJ3k)。



 水島氏は、西田議員のためを思ってスジを曲げた。
 しかし、あえて言おう。
 それは西田議員への裏切りであると。



◆◆◆



 西田議員は、言論人と政治家の関係について、下の動画で述べている。
 奇しくも、水島氏が倉山先生にスジを曲げるよう要請する少し前である。



「週刊西田一問一答「政治家の発言と言論人の発言はどう違うのですか?」」YouTube2013年7月1日
https://www.youtube.com/watch?v=Yt7hLXhKohQ



 要するに、言論人はスジを曲げるなということである。
 言論人は語るべき理想(正論、大局観)を語り、政治家がその理想と現実を調整する。
 大体そんな話だ。
 理想と現実を調整するというと聞こえはいいが、政治の現場ではなかなか理想を貫くのは難しく、長いものに巻かれて折れてしまうことがある。
 そんなときでも、言論人は、政治家よ折れるな頑張れ、とスジを通すよう言い続けるべきなのである。



 また、西田議員は、財務省についても見解を述べている。



「【やまだ賢司】西田昌司議員・藤井聡教授と山田氏の鼎談 書きおこし・前編 【政策勉強会 4.21】」モスリンブログ2012年4月27日
http://himawari-gumi.cocolog-nifty.com/blog/2012/04/421-13e2.html
「<やまだ> 新入社員で銀行はいった時は、日経ぐらい読めとか、あのねえ、まあ、日経のコマーシャルに騙されてですね、あの~「日経読んでる?」みたいな、あの会社の社長から言われてたんで。最近、どう考えてもおかしいやろという事が書いてあるんですね。消費税も絶対上げなアカンいう感じで書いてあるし。TPPもやらなアカンように書いてある。とんでもないんちゃうかと思うんですけれども。これ西田先生あのどうなんでしょうか、消費税を上げないといけないというのは他の国会議員の方、分からないんでしょうかね。こんなあたりまえのことが。

<西田> これねえ。ちょっと、かなり重症なんですよ。で、今、あの藤井先生の話とあの共通するんですけども。まずね、まず、マスコミがそういう形で、えー汚染されてますけども、マスコミの情報発信のもとなんか全部ね、これ大蔵省ですよ、財務省。財務省が、要するに財務省益の為にやってるんですよ。あんまりそういうことを言うとね、財務省の彼らには悪いんですがね、要するにこういうことですよ。財務省の仕事といったら皆さん何だと思います?これは予算つくることでしょ“入るを量りて出ずるを制する(量入以爲出)”というのが予算の大原則なんですよ。

つまり、予算を作ろうと思ってたらですよ、入るを量る、税収をどうやってまとめるか。それから出ずるを制するね、それをどう、予算をどうカットしていくかこのふたつをセットしないと予算って出来ないんですね。ところが日本はずっとこの暫くの間ですねデフレ政策やっちゃったんで税収どんどん落ちゃってます。そしてその一方で社会保障政策費いると。そうなってきた時に、入るが量れなくて出ずるが制することが出来ない状況なんですね。

で、それで どうしたらいいか。だから、まずは、ね、出ずる方を減らしなさいという話を、どんどんどんどんやってきました。ね。そして、それからそれやっちゃった為に、実は、経済が悪くしてからますます税収落ちたんですけれども。今度、落ちてきたから、ますます今度は増税しますと。こういう論法なんですね。しかし、彼らにとってはね、これ正しいんですよ。財務省の仕事ですからこれが。

ところが問題はですね、政治家の方が、ちょっと待てと、お前、言ってもそれは財務省のミクロの話じゃないかと、ね。日本国家というのはミクロで言えば、例えば民間の企業も同じことですよね。景気悪くなってきて売り上げ減ってきたら役員の給料を減らしますと。従業員もね首切らなければならないこともありますと。だからそういうことを民間だってやってるんだから、国もやりなさいと言うことを財務省言ってるわけです。しかし、みんながそれやっちゃうと、これは所謂いつも言われる“合成の誤謬”ということですよね。マクロ全体に、国家全体でおかしくなる。だから、全体の話をするのが政治家なんだ。これは。ね、だから全体ミクロ其々の個別の企業、其々のこの省庁の話、大蔵省の話、しかしその全体の国全体としてどうやるかというのが政治家なのに今の政治家はですよ、完全に財務省のミクロの話をマクロの話と勘違いしているんです。

特に民主党のね、この政権は、菅さん、そして野田さん、この二人はともに政権交代やってきた時にね、菅さんはまず財務大臣だった。その副大臣が野田さんでしす。それまでそういうこと全く考えたこともない。この方々が2年間ずうっと、財務省からこうやられてくる。そして無駄を無くせばいいと言ってきた鳩山路線で失敗したことが分かってくる。そうすると菅さんもね、野田さんも、もうね、これはね財務大臣からやってくると、これはもうとにかく、入るを量らないと出ずるを制せないからどうしようもないじゃないかという、この財務省の話に完全に汚染されたんですね。そして、日経新聞はじめ、民間企業も同じことやってるでしょ、そうするとみんなやってるんです、国がね、こんな時にですよ、お金どんどん使ってるとは狂ってるじゃないかという、ほんとに我々がいうと一番狂ってるのは( 聞き取れず )ですね。だからミクロじゃなくて全体を見るというね、これがやっぱりね無くしてしまったんが一番ですね。

<やまだ> ありがとうございます。あの、やっぱり政治家はね、やっぱり私も政治家をね、政治を目指すものも含めてですね、しっかり自分で自分の目で判断しておかしいことはおかしいと言えるようにしないかんなと思っております。そういう意味でね。あの藤井先生も西田先生も、どんどん発信していただいてるんでね。昔はもう、日経とか、それこそ日経新聞やテレビしかなかったんですね、自分が間違えてるのかなみたいなとこ、あったんですけど、こういうのをどんどん発信して、おかしいやないかと、マスコミも間違えてるでっと言うことを言うていかなあかんなと思っております。」




 西田議員は、省益のためにメディアコントロールをする財務省を批判している(財政研究会のことだと考えて大過ない。「2010年に向けて 後編」三橋貴明ブログ2009年12月31日http://ameblo.jp/takaakimitsuhashi/entry-10423385447.html等参照)。
 また、西田議員は、財務省に経済を大きくする発想がないことも批判している。
 言論人であれば、西田議員を、こういう正論を維持してスジを曲げないように応援すべきである。言論人にスジを曲げるなと言う西田議員であればなおさらである。
 しかし、いろいろな事情でスジを曲げそうになっている西田議員を応援しようとして、チャンネル桜は、西田議員に合わせて自分もスジを曲げてしまった。
 政治家は現実に妥協する。それ自体は仕方ないところはある。政治の世界は、一寸先は闇の魑魅魍魎の世界である。
 言論人である水島氏は、西田議員と共に魑魅魍魎に屈するのではなく、一太刀を浴びせるべきだったのだ。
 水島氏は財務省批判を続けるべきだったのだ。たとえ西田議員が財務省に屈するという結果を知っているとしても。
 それにしても、チャンネル桜が財務省批判をやめることと、西田議員がNHK問題でがんばることと、どれほどの関係があるのだろうか。「チャンネル桜がスジを曲げずに消費税増税に反対し財務省批判をする→西田議員がスジを曲げて増税容認に転じる→桜視聴者の間で西田議員の人気が下がる→西田議員がNHK問題でがんばれなくなる」ということなのだろうか。釈然とせず、スジが通っている気がしない。



 西田議員は、もともと「経済をデフレから脱却させる方が先で消費税の増税はその後です。」という正しい主張をし(http://showyou.jp/claim-main/index.html?id=441#claim_441)、「名目GDPが下落するデフレ下では増税はできない。まずはデフレ脱却が必要だ。」という旨を言い(http://youtu.be/6wwjTKqYWf8?t=4m16s)、「まずは何よりデフレ脱却。デフレを脱却すれば経済が大きくなって税収は自然に増える。」という旨を言っていた(http://youtu.be/s9jgBO7eYNk?t=2m46s)。
 しかし、最終的に、消費税増税容認に転んでしまった(https://www.youtube.com/watch?v=r44EvZkf334、倉山満「増税と政局・暗闘50年史」(イースト・プレス、2014年)90ページ)。
 チャンネル桜が財務省批判を続けていたら西田議員は転ばなかったとは言わないが。

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 水島氏は、安倍総理を叱咤激励するという。
 安倍総理にも戦後レジームが存在し、誤った政策を行ってしまうことがあるから、批判すべきところは批判するという姿勢だ。
 過剰に批判しているのではないかと思うこともある。無用に安倍総理に対する不信感を高めている感がある。
 他方、水島氏はなぜ西田議員を叱咤激励しないのか。消費税増税という重大な局面で西田議員がいろんな圧力に屈しそうになっているからこそ、チャンネル桜の叱咤激励が必要なのではないか。
 このダブルスタンダードは何なのか。
 どういう価値判断が働いているのか。
 水島氏が「反安倍とならないよう木下批判を止めてくれ」と言うのは本音なのだろうか。
 本音は、「反麻生とならないよう木下批判を止めてくれ」ではないかと勘繰ってしまうのである(倉山「増税と政局」116ページ)。