「自分に余裕がない人は他者に優しくできない」とはよく言います。自分に余裕がない、とは何のことなのでしょう。

それはきっと、忙しくて自分を休められない、いろいろなものに挟まれていて処理が追いついていない、そこから"自己管理"がおざなりになっている、ということかもしれません。

セルフマネジメントとは「自己管理」のことを言い、自身の思考、感情、行動を管理することで、精神状態や健康状態の安定を図ることが可能になる技術です。

 

自分自身が不機嫌である、メンタルが崩れているなどすると、普段ならなんでもないことも悪く捉えてしまうことがあります。

"そんなことはないはずなのに"、いろんなものが不安になったり、ネガティブなことが起きるんだという思考に取りつかれてしまったり。少しのことでもすぐに怒る、爆発してしまう、というものにもつながってきますね。

人生の中で、自分にとっての「よろこび」が少なかったと感じる人は多いんだと思います。自覚がなくても、よくよく思い返してみると……ということが、あるのではないでしょうか。

そういったものを積み重ねていくと、こころが常に重苦しい状態に固定されてしまいやすくなります。

そうなってしまうと「やりたいこと」「感情」「興味」などの"自分の中のほんとう"に気づきにくくなり、さらにこころを塞いでしまうようになります。我慢をするのは毒だと言われるのも、それ関連のものですね。

 

日々のしがらみや、蓄積による凝り固まった思考・バイアス、呪い(思い込み、洗脳)など。

人は過去の様々な"積み重ね"で、がんじがらめになっています。そんな中で、自分のよろこばせ方なんてわからない、何をどうすれば抱えているものを軽減できるのかもわからない、と言う人もいるかもしれません。

しかしそれも、解決していくための方法はあるんです。

セルフケア(ストレスの受け流し)、レジリエンス(精神のリカバリー)、アンガ—マネジメント(怒りへの心理訓練)、マインドフルネス("今ここ"を意識する)。

これらを意識し、生活に適宜取り入れ実践していくことで、自身の感情や行動のコントロールができるようになったり、体調や精神面の安定化が期待できます。

具体的な目標を設定する(その際にスモールステップを意識する)、マイルストーン(現在地、節目)を設定しモチベーション維持に努める、ToDoリストなどを用いて時間の使い方を意識する、時々自分を振り返りフィードバック(改善点、評価、軌道修正)を心がける。

なにはともあれ実践です。「やってみなければ何も始まらない、わからない」ですからね。やらなければ、行動に移さなければ、身につくものも身につきません。

 

 

 

 

自分をよろばせること。これができると、常に「いい気分」でいることができるので、面倒くさいことや嫌なことも受け流せる可能性が上がります。

「まあいいか」「なんとかなる」と思うことができるようになると、人生から負の要素が減り、こころに余裕が生まれるようになるのです。

そうすると、今まで目を背けていたものに向き合う余裕が生まれたり、今までやれなかったものにチャレンジしたり、という幅も広がるんです。

特別な何かをしなければいけないなどということもなく、「自分は本当はどうしたいのか」というこころの声に気づくことや、日ごろの自身のセルフケア・セルフメンテナンスをする、自分のこころも体も大切にする、それだけのことでいいんです。

こころが疲れている、自分自身への意識が届かないなどすると、自身の”手入れ”ができなくもなります。それは身だしなみ、入浴、食事や睡眠、掃除、また趣味で行っているものなど。それらの「自分を保つための栄養」を、摂らなくなってしまうのですね。

自分で自分を追いつめる、それは「自分いじめ」と変わらないですから。仲の良い人が苦しんでいる、困っていると、優しくしようと思う、手伝ってあげたいと思うはずです。それを、なぜ自分自身に向けないのか?ということですね。

人には寄り添おうとするのに、どうして自分自身に寄り添おうとはしないのでしょうか。落ち込んでいる誰かに何をしてあげたいのか、そんなふうに自分自身を客観視すること。

 

 

 

 

「自分を大切にする」、自分自身を労わる、ケアをする、"マネジメントをする"。ボロボロのものをずっと使い続けていても、何をするにも効率は落ち続ける一方です。

寝ないで作業を続けるよりも、きちんと睡眠時間を確保する。具合が悪いのに出社するよりも、きちんと治してから仕事へ行く。「整える」ことをすることでこそ、そのパフォーマンスは発揮される。

なぜ、そこまでして「休めていないのにやらねばならない」のでしょうか。なぜ、そこまでして「無理をすることが美徳」だとされるのでしょうか。

作業効率、パフォーマンスが落ちる、精神面も不安定になる、脳へのダメージも嵩んで正常な判断ができなくなる。いいことはなにもありません。

 

 

まずは「自分は今不機嫌な状態かもしれない」という部分に、気づけるようになるのが大切です。それができれば、無自覚なまま周囲にあたってしまうようなことも減らすことができますから。

そのためには、普段から自分自身の様子をチェックしておくこと。こころも体も、こういうとき自分はどう反応しているのかな、というマニュアル(取説)を用意しておくとよいでしょう。