穏やか緑園の「横浜ネット倉庫」 -60ページ目

<馬車道の不思議少年・翔>6

不思議な少年はさらに男に話を続けた。

「スマホのサイトでは“買い物かごを見る”のボタンが最初にあるといい。
親子では大きな画面でおもちゃを選び、
後でママがスマホで注文というのが流行るかも。」

男の脳裏に急に明るい陽射しが差し始めた。
-確かにこれは面白いかもしれない。
今は、店舗で選びネットで注文が流行りだけど、
これからは、デスクで選びスマホで注文というのもあるかも。-

「それにこの画面はもう少し何とかしてほしい。
ママも立派すぎて使いにくいと言っていた。
ママにも僕にももっとわくわくさせてほしいよね。」

男はタブレットの画面から目を離し、前を向いた。
-販売サイトを格調高く作ることに精いっぱいで、
わくわく感とか面白さとか使いやすさは考えてこなかった。
まだまだいろいろと考えることがありそうだ。-

ソフト会社の「工夫が必要ですよ。」の問いかけには
あえて理解しようとしてこなかったが、
その言葉の意味がやっとわかり始めたような気がした。

男は少年に感謝をしなくてはと思い、
「僕の名前は?」と横を向いてアッと驚いた。
不思議なことに少年の姿はなくすでに視界から消えていた。

太陽の母子の像の横を少年が通り過ぎようとする時、

突然、子供の方の像が少年に話しかけた。
「翔、そんなに早く答えを教えてどうする。」
少年は驚くこともなく平然と答えた。
「答えじゃないよ、ヒントをあげただけだよ。

彼にはこれからもっと頑張ってもらいたいから。」
少年はそれだけ返し、静かに立ち去って行った。

その日、馬車道を歩く人は少なくなかったが、
少年と子供の像の短いやりとりには誰も気づかなかった。

完   (記 原田修二)

■次回は12/22 <馬車道の不思議少年・翔:第2話>1