The Dandelion Girl | 監督ブログ  wecker

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「時空警察ヴェッカー」シリーズの原作・監督 畑澤和也の個人ブログです。
現在中国広東省で活動中

本読みの間で密かに人気…と思っていたら、いつの間にやらミリオンセラー、コミック化、そしてドラマ化もされ(先日放送終了した)たライトノベル「ビブリア古書堂の事件手帖」


前にココで紹介した「万能鑑定士Q」シリーズあたりから流行り始めた、人が死なない「日常の謎系」と言われるミステリの傑作…という事で、僕も帰国の度に続刊を買って読んでました。


毎回実在する小説を元にそれを巡るミステリ(現実に起こる事件と小説の内容が巧みにリンクしたりしなかったり)なんですが、その中の本の一つが、今回の記事のタイトル、ロバート・F・ヤングの「The Dandelion Girl」和訳名「たんぽぽ娘」です。


80年代にコバルト文庫のロマンチック(笑)SF短編集として出ていたのを僕も当時持っていました(「ビブリア」で扱われるのもこの本)新井素子女史の本と共に実家のどこかにしまってある筈なのですが、最近本屋では見かけず、帰国の度に探してたんですが見つからず…にいます。


「ビブリア」で紹介されていた文章とネット上で拾える情報から記憶の断片をつなぎ合わせてみました。


「44歳の主人公が丘の上で会う10代の少女を好きになるが、彼女は200年以上未来から来ていた。

次にまた会う約束をして分かれるが、彼女は二度と姿を現さない。

実はさらに20年前の24歳の主人公と出会い、結婚する。…つまり今の奥さんがその少女だった…」


超要約するとそういう話だったと思います。劇中の描写にこの時代にはない素材で出来た白いワンピースを着た少女(その服が奥さんがずっと秘密にしていたトランクの中にあった)…というのがあったりして…無意識に僕の中で「ヴェッカー」の原形になっていたんだと感じます。


実際作中「時空警察」も出てくるし、過去に干渉する事でパラドクスは起こるのか?その善悪は?というテーマにも踏み込んでいて…

最近のヴェッカーは便利な多次元論に逃げてますが、この作品が語る「これから起こるいかなることも、すでに起こっていることと同じであると考えられる。だから、未来から来た人が過去の出来事に関わっても、彼は歴史どおりの出来事の一部となる――」という考え方の中にこそ…ドラマは作れると再認識しました。


40代の主人公が妻を大切に思いながら10代の少女に惹かれていく過程、40歳になった少女が、愛する人が10代の自分に恋してしまう事だけを心配している…そんな描写には、自分がその年になって読んでこそリアルに感じられるでしょう。


…こんな(脳内)作業をさせてしまう「ビブリア古書堂」。テレビドラマ版も観てましたが、キャスティングやドラマ自体の出来はさておき(;^_^Aやっぱりこれは文章で…小説として味わうのが最適な物語だと思います。


「ビブリア古書堂の事件手帖」はともかく、「The Dandelion Girl」…いやさ「たんぽぽ娘」もう一度読みたいなぁ。コバルト文庫版で。

そして…映像化したいなぁ(「ビブリア」の方じゃなくて)…と切に思います。