バルディオス | 監督ブログ  wecker

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「時空警察ヴェッカー」シリーズの原作・監督 畑澤和也の個人ブログです。
現在中国広東省で活動中

前に「マクロス」を話題に出した後、なぜか猛烈に「バルディオス」が観たくなり、週末中国に持ってきた(バルディオスとゴッドマーズは持ってきている)DVDを見返しました。


DVD10年ぐらい前に買ったけど、忙しいのもあって特典についてきた「劇場版」だけ観てテレビシリーズは観ていなく、実に30年ぶりぐらいに観ました。


観直すと実に面白かった!記憶の中で過小評価していたようです。「愛着はあるけど、名作でもなんでもない」と。


主役のマリンと敵側の女幹部アフロディアのラブロマンス(笑)が中心と評される事が多いけど、各話観直すとアフロディアは完全にワルモノであり、恋愛描写は実は殆どない。

むしろ幼少のころからアフロディアを「可愛がってきた」総統ガットラーのいやらしさがリアル。

終盤になって長官と女博士クインシュタインの大人の恋模様が示唆されていたり、放送当時も話題になったクインシュタインとそれを慕う年下の青年の10年ごしの恋など、主人公以外の心象がけっこう丁寧に描かれている。

大人(笑)になって観るとガットラーやら長官やらに感情移入出来たりして。

アフロディアも一途な(やってる事はかなり残忍)悪役ぶりが実に可愛い。


「特典」として未放映分の3話も収録されていて、観ると世界中で巻き起こる大津波で街が押し流されて行き、シリーズ中登場したゲストキャラたちが世界中のそれぞれの場所で無念に死んでいく姿だけが耽々と流れていく。バルディオスの出番はなく(文字通り登場しない)、大自然の驚異の前ではどんなハイテクノロジーも無力なのだという事を登場人物とともに思い知らされる。

その後未映像化分の結末では核による世界規模の汚染に地球が侵されていくのが描かれるのであるが、3.11後に観ると…。


この(未映像化分を含む)未放映話が存在するのは番組が打ち切りになったからであり、テレビ版放映時の最終回のタイトルは「破滅への序曲(前篇)」であった。

最終回なのに前篇。このタイトルに当時20代だった広川和之監督をはじめとするスタッフの無念さを思い知らされた気分だった。

そしてまったく無関係者なのに、その無念さに共感した自分がいた。

30年経て「後篇」を観て、余計やるせなくなった…(内容は前述の通りだし)。


後に劇場映画化されたけど、キャストは主役以外ほぼ変えられ、絵も奇麗に、アクなく描き直された。これも殆ど話題にならず(僕は大騒ぎしていた)ひっそり公開された。


同じく20代のスタッフが中心に作られ、今も続編が作り続けられ、歌とともに世界中で称賛されている(し、それに値する作品だった)「マクロス」と違い、ほぼ顧みられる事はなく、僕のようなマイナー志向のマニアの語り草にしかならない(にもならない)「宇宙戦士バルディオス」。


でも僕はこの作品がとても愛しく思えます。

今でも、なんか誤魔化された感じの劇場版より、未映像化のテレビエピソードをちゃんと観たいと思っています。


80年代のいろんな作品が30周年を迎えますが、自分(及び少数のファン)だけのアニヴァーサリー作品って、ありますよね?

「ヴェッカー」もそうなるのかな?