続けてフェレス編。これはほぼ麻草氏の創作です。1日1回だけ、しかも記録映像さえ撮ってない、とてもレアなエピソードになってしまいました。
■キャラクタ
整備士 フェレス
ロックンローラー気質の新人整備士。時空刑事および時空特捜の装備を担当する。新人時代のメシエと交流があった。
■からみ
メシエ(畠山智妃)
■追加シナリオ
0景
メシエが上手から出てくると、その後ろからブレードを持ったフェレスが追いかけてくる。
フェレス「おい、そこの! これはどういうこと?」
メシエ「これって?」
フェレス「このブレード、あんたが壊したの?」
メシエ「ああそうだよ。ちょっと本気で戦ったらぶっ壊れたんだ」
フェレス「それじゃ、直せないね」
メシエ「えっ?」
フェレス「な、お、せ、な、い。時空刑事ってのは、装備を乱暴に扱って、壊れたらポイって整備班に押し付ける奴のことを言うの?」
メシエ「そ、それは」
フェレス「それとも、新人だからブレードが壊れるまで戦っても許されるって思ったの?」
メシエ「なんだよ、新人って」
フェレス「ブレードに名前が書いてあったから調べたの。時空刑事メシエ、シグナを卒業したばかりなんでしょ?」
メシエ「そうだけど…」
フェレス「時空犯罪者と戦う時って、どんな気持ち? 怖くないの?」
メシエ「……怖いよ、でも、楽しい」
フェレス「楽しい?」
メシエ「ああ。訓練して鍛えた腕を、本番で試せるんだ、自分がどれくらい強いのか……わくわくする」
フェレス「……整備士見習いのフェレス、よろしく」
メシエ「ああ、よろしく……って、見習い?」
フェレス「うん、まだ見習い」
メシエ「おい! 見習いのくせに偉そうだな!」
フェレス「いいの、すぐに偉くなる予定だから……どんな奴がこのブレードを壊したのか、見たかったの。良かった…あんたみたいなバカで」
メシエ「おい今なんつった」
フェレス「バカみたいにまっすぐで格好いいってこと。よろしく、メシエ、こいつは預かっとくよ(ブレードを掲げる)。あたしの初仕事」
メシエ「しっかり直せよ!」
フェレス「任せて! ……でも約束して、絶対生きて帰って来るって」
メシエ「……ああ、任せとけ!」
オープニングテーマが始まる。
8景の前
上手上段から出てくるメシエ。下手上段からフェレス。
メシエ「フェレス! おい! フェレス! 何年ぶりだよ!」
フェレス「ああ、メシエ、久しぶり。あんた相変わらず一人で戦ってるって?」
メシエ「別にいいだろ、一人でも」
フェレス「一人じゃできないこともあるよ」
メシエ「何だよ、久々に会っていきなり説教か」
フェレス「あんたは子供だね」
メシエ「お前は大人になったんだな……今、何やってんだ」
フェレス「時空特捜の装備を研究してる、今は、多次元移動の実験中」
メシエ「マジかよ、大出世じゃんか!」
フェレス「偉くなる、って言ったでしょ……ねえ、今でもブレードが壊れるような、命知らずの戦い方をしてるの?」
メシエ「……関係ないだろ」
フェレス「関係ない……か。そうね、関係ない。結局あんたは自分の事しか考えてないんだ」
メシエ「フェレス?」
フェレス「チームを組むつもりはないの?」
メシエ「チーム?」
フェレス「そう、力を合わせて、互いの弱いところを補い合うの」
メシエ「そういうの、苦手なんだよ! 弱い奴は強い奴の足を引っ張る。それに…あたしが弱けりゃ、あたしが誰かの足を引っ張ることになる……そういうの、嫌なんだ」
フェレス「そうね、そんな風に考えているなら、一人の方が楽かもね」
メシエ「なんだよその言い方」
フェレス「私ね、この実験が成功したら、また整備班に転属になるの」
メシエ「てんぞく?」
フェレス「別の部署に移るってこと」
メシエ「知ってるよ!」
フェレス「辺境の基地だけど、私が主任……責任者、ってわけ。ねえ、メシエ、自分以外の誰かの責任を取る仕事って、想像できる?」
メシエ「……できない」
フェレス「怖いよ、自分で望んだことだけど、怖い。メシエの言う通り、足の引っ張り合いになったらどうしよう、って思うこともある……でもね、力を合わせて、弱いところを補い合えば、一人じゃできないすごい事だってできるんだよ……自分が出来ないときに、誰かの力を借りたって、それは恥ずかしいことじゃない」
メシエ「……」
フェレス「メシエ、あんたにもいつかわかるよ。またね」
メシエ「ああ、またな」
上手に去っていくフェレス、下手に去っていくメシエ。
11景の前
銃声、斬撃音。照明が入ると、上手に背を向けて下手側でブレードを構えるメシエ。上手階段に座っているフェレス。
メシエ「フェレス!」
フェレス「(立ち上がり)大丈夫! メシエ、来てくれたんだ」
メシエ「別にお前に会いに来たわけじゃない!」
フェレス「そうね、久しぶり」
メシエ「挨拶なんてしてる場合かよ!」
フェレス「まさか連中、こんな辺境の基地にまで攻めて来るとはね……(倒れそうになる)」
メシエ「フェレス!」
フェレス「大丈夫だって、ちょっと腹を撃たれただけで、どうってこと……ある、かな」
メシエ「どこか、隠れるとこないのかよ!」
フェレス「ないよ。現場主任が言うんだから間違いない、この基地はもうダメ。そこかしこに火の手があがってる」
メシエ「しょーがねーな。一緒に行こう」
フェレス「知ってる? 戦場では、殺すより怪我をさせた方がいい、死ねば放っておけるけど、ケガ人一人に三人が無駄足を踏まされる、って話」
メシエ「お前を助けるのは無駄足じゃない!」
リモコンのスイッチを押すフェレス。
メシエ「(転送音とともに照明が変化していく)……まさか……時空転送が始まる? フェレス! 何をした!」
フェレス「クリスタルの遠隔操作、エンジニア特権てやつ。メシエ、あんたは安全な時空に転送する。ここはもうすぐ全てが無駄になる……その前に、あいつらごと、この基地を吹っ飛ばす。メシエ、あんたは生きて帰るの」
メシエ「フェレス!」
フェレス「メシエ、いつかあんたに言ったよね、人間には、力を合わせる仲間が必要だって」
メシエ「ああ」
フェレス「信頼できる仲間はできた?」
メシエ「ああ! フェレス、お前の言ってた通りだよ! あたしはバカで、子供で、相変わらずぶっ壊してばっかりだけど、助けてくれる仲間がいる!
そいつなら背中を預けてもいいって思える仲間が、いるよ」
フェレス「良かった……私もあんたに全部預ける! あとは任せたよ!」
メシエ 「フェレス!」
フェレス「メシエ! さよなら!」
トレミー「フェレース!」
暗転、大音響で爆発音。