伊上勝 評伝 | 監督ブログ  wecker

監督ブログ  wecker

「時空警察ヴェッカー」シリーズの原作・監督 畑澤和也の個人ブログです。
現在中国広東省で活動中

井上敏樹さんによる実父「伊上勝」を著した「評伝」が発売されているのを見つけ、購読しました。
伊上勝は我が師平山亨と供に日本のヒーロー史の黎明から黄金期を支えた脚本家で、僕らにとっては立志伝中の英雄です。

故人になられて久しく、あまり顧みられる機会は無く、実子である井上敏樹さんも、あまりお話しをされたがらなかったので、ただただ偉大な先人としてのイメージしかなかった方です。


それが、『平成仮面ライダー』の代表的脚本家である井上敏樹自らが、伊上勝についての随筆を書かれた!という事で…
貪る様に読みました。


読後、自然に涙が出た。
最近涙脆いんですが…

実父のありのままの姿を、時に脚本家として、時に息子として、文字通り「評されて」います。

本の大半はその後の、いわゆる伊上勝評論集なんですが、資料的価値として以外は蛇足です。


井上さんが書かれた随筆には(これから読まれる人の)楽しみが減るので本文からの引用は避けますが、長くない文章の中に、「伊上勝として生きた」一人の男の人生が生々しいまでに書かれています。


実父を語るにも関わらず、井上さんらしいドライな視点が貫かれ、随筆というより一編の短編小説のように…大笑いさせてもらった部分もありながら…
(「補足」の方に、伊上ヒーローの真髄が書かれています。井上さんも書いてみて初めて気付いたのでは?)

最後には自然に涙が出てきました。


「父を反面教師にしてきた」と繰り返し書かれていますが、供に「天才」脚本家であるだけでなく、僕の知る井上敏樹さんと、ここに書かれている伊上勝とがオーバーラップする部分がたくさんありました。



畑澤自身も、亡くなる間際「お前は分身だ」と言ってくれた父にとって…従順な息子ではなかった。

父を嫌い、憎みもした時代もあった(勘当されてましたからね)。


でも、どういう形であれ、男はやはり父親を継いでいくのだ。


それは間違いない、と思います。


井上敏樹さんに書き下ろしてもらったホン、まだ預かったままです。


これも何とかして実現させねばっ!