こんばんは。
以前から予告しておりました、例のアレ・・・「アンドゥイエット」が完成致しました!
元々ヨーロッパビールフェアに合わせてオンメニューの予定だったのですが、
紆余曲折を経て、ようやく昨日、完成致しました。
長引いた経緯をご説明する前に、そもそもアンドゥイエットとは・・・。
シャルキュトリー(豚肉加工料理)の一つで、豚の内臓(大腸、小腸、ガツ、ハツ、ハラミ、仔袋など)を豚の直腸(丸腸)に詰めたソーセージで、小形をアンドゥイエット、大形をアンドゥイユと呼びます。
シャルキュトリーの技が感じられる1品です。
フランスのどの地方にもあり、各地で材料や作り方は様々に存在します。
最大の特徴とも言えるのが、この丸腸に詰めるということです。
一般のソーセージは、このケーシング(ソーセージの表皮部分、下記の写真のような豚腸と呼ばれるもの)を使っています。
しかしながらアンドゥイエットでは、一般焼肉店で食べられている直腸の開かれていないもの(丸腸)にファルスを詰めます。
下記写真が、その丸腸です。開かれているものは、焼肉店などで見慣れていますが、
開かれていない丸腸は、ちょっとグロいですね。
こちらを下処理して、この中にファルスを詰めます。
今回仕込んだアンドゥイエットは、リヨンのレシピによるものです。
シェフがレシピ構築のために多様なレシピを集め、比較、検討した結果、リヨンのレシピとなりました。
リヨンならではの特徴は、ゆでた内臓類を大量のディジョンマスタードでマリネすることです。
(ディジョンはリヨン近郊の中核都市でマスタードが名産品です。)
マスタードの辛味と香味成分で、内臓の臭みを和らげます。
正直に申し上げますと、ワイン担当Y・Yはホルモンが大の苦手・・・。
今回のアンドゥイエット製作を、恐る恐る見守っておりました。
アンドゥイエット製作にあたり、最もシェフが時間を費やしたのが、素材探しです。
アンドゥイエットに必要不可欠な丸腸は、焼肉店用に開かれて流通しているものがほとんどで、
腸詰をすることのできる、開かれていない状態のものを探すのに大変苦労しました・・・。
あらゆる業者さんに聞いたり、地元肉屋さんを何軒か訪ねたところ、1軒の取引業者さんが、取り寄せてくれることになりました。
そして内に詰める内臓類ですが、シェフの希望する豚の内臓類は松山市内では見つからず、
今治までわざわざ仕入れに行ったのだとか。
フランスで実際にアンドゥイエットを召し上がったお客様にお話を伺うと、
「内臓の臭いが大変強烈でした・・・。フランス人はそれが好みのようだけど。」
とのことで、日本人向けに作るとなると、各内臓を丁寧に下処理しなければなりません。
材料が揃い、レシピが構築されたところで、仕込み開始です!
処理前の内臓類からは「動物園のような香り」が・・・(ノДT)

香味野菜と内臓類(大腸、小腸、ガツ、ハツ、ハラミ、仔袋)を用意します。
鍋に内臓類と水をたっぷり入れ、吹きこぼしをします
沸いたらザルに上げ、流水します。
この作業を2回、繰り返します。
吹きこぼしを終えた後の内臓類と、香味野菜と香辛料を鍋に入れ、たっぷりの水で煮込みます。
煮込み終わった内臓類を、包丁で細かく刻みます。
刻み終わった内臓に、ディジョンマスタード、玉ネギのアッシェ、
にんにくのアッシェ、白ワインを加え、一昼夜マリネします。
次は丸腸の下処理です。
鍋にお湯をたっぷりと沸かし、その内に丸腸を放り込みます。
再度沸騰したら、お湯から取り上げ、流水します。
この湯通しの終わった丸腸を、端から手繰り寄せ、裏返します。
写真が裏返した状況です。
下に白く見える部分が脂肪の部分です。
この脂肪の部分をある程度掃除します。
下に切り離されたのが、掃除された脂肪の部分です。
食べやすくするのと、より多くのファルスを詰めるためです。
あまり掃除しすぎると、強度が弱るため、程よく脂肪の部分を残します。
こちらが掃除された丸腸です。
美しいピンク色をしております。
前日にマリネしておいた内蔵類と、豚首肉のミンチ肉を合わせます。
塩・コショウ・香辛料を加え、練り上げます。
これでファルスは完成です。
絞り袋にファルスを入れ、詰める準備です。
絞り袋の口金に丸腸の入り口部分をしっかりと固定し、ファルスを絞り袋にて押し込みます。
絞り込んだら、適度な大きさにタコ糸でしばり、成形します。
こちらが詰め終わったアンドゥイエットです。
詰め終わったアンドゥイエットを、内臓を煮込んだ時のブイヨンで火入れします。
80度で約30分ほど。
火入れが終わったアンドゥイエットです。
香辛料の香りとともに、内臓のソーセージとは思えないほど、
肉の甘みを思わせる、素敵な香りが漂います。
そして早速、焼いて試食です。
フライパンで焼いている際漂う香りからも、処理前に感じた「動物園のような香り」は一切無く、
食欲をそそる肉の香りです!
恐る恐る・・・まずはシェフから・・・。
シェフの、「うまい!」の一言に、スーシェフKさんと私も続いて口に運びます。
本当に驚きました・・・!
マスタードの酸味と香味がしっかりと利いていて、内臓の美味しい風味は残してあるものの、
臭みは優しい香りに変化しておりました。
食感も、丸腸と内臓類の弾力のある食感と、肉肉しさを和らげる玉ネギのコントラストが大変面白く、
味のバランスもとっても良い!
「仕込み1回目でここまで決まるとはな~!」
と、シェフも満足いく仕上がりだったようです。
これならお客様にお出しできる!
とのことで、早速メニュー入りです。
偶然にも、フランス出張から帰国されたばかりの、フランスのアンドゥイエット事情をお話して下さったお客様がご来店、お召し上がり頂きました。
「臭いも無く、食べやすくてビックリ!」
と、お気に召して頂きました。
そのお客様を含めて初日から2オーダー頂き、ありがとうございます。
製作を決めてからメニュー入りまで、約2ヶ月ほど・・・大変時間がかかってしまいましたが、
自信を持ってお勧めできる仕上がりとなりました。
とは言え、やはりホルモンのソーセージと言うと食べ手を選ぶ1品になりそうですが・・・。
ビールや辛口の白ワインとの相性は最高だと思いますので、ご注文(挑戦?)をお待ちしております!
そして、最近シャルキュトリーメニューが充実し、毎日のように何かしらシャルキュトリーの仕込みが行われているLangue de chatです。
ブーダンノワールにしても、アンドゥイエットにしても、食べ手を選ぶメニューにも関わらず力を入れているのには、理由があります。
フランスにおいて、シャルキュトリーとは、豚肉加工料理、またそれらを販売する店を指し、そこで働く人はシャルキュティエと呼ばれ、キュイジニエ(料理人)とは区別されています。
ですので、フランスでは料理人がシャルキュトリーを作ることはまず無いそうです。
ビストロやブラッスリーでもシャルキュトリーから仕入れるのが基本です。
一方日本では、ハム・ソーセージの専門店ではドイツをベースとする店が大半であるため、
フレンチレストランでは料理人がシャルキュトリーを手がけているのが現状です。
専門店と異なり、材料や器具などに制約がありますが、シャルキュトリーの仕事には、ア・ラ・ミニュート(オーダーを受けてから作る料理)とはまた違う面白さがあるのだそうです。
スタンダードでオーセンティックなビストロを目指すLangue de chatでは、
シャルキュトリーに力を入れるべく、邁進しております。
松山では受け入れられがたい料理スタイルではありますが、お客様一人ひとりにスタンダードでオーセンティックなビストロとして認知して頂けるよう、努力していく所存です。
どうぞ、ご愛顧を宜しくお願い致します。
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そして、8月の営業日程のお知らせです。
8月15日(木)は、通常定休日ですが、お盆真っ只中なので、頑張って営業致します。
そして8月19日(月)は、ワイン担当Y・Yのソムリエ試験受験のため、夜のオープンを18時~とさせて頂きます。
あとは通常通りの営業となります。
どうぞ宜しくお願い致します。
ワイン担当Y・Y