新書野郎 -35ページ目

変容する中国の労働法

へんよ変容する中国の労働法—「世界の工場」のワークルール (九大アジア叢書 14)
山下 昇

九州大学出版会
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新書版の九大アジア叢書だが、スタートしてもう8年になるのか。年に2冊か3冊のペースだけど続いているだけで大したもん。大学出版会も自給自足で新書シリーズでも出せば、著書のない教員の救済策になるし、ハードカバーのテキスト買わされるくらいなら、学生にとってもテキストは新書で十分だろう。九大アジア叢書は東京の書店ではさっぱり見かけないが、図書館には結構来てるから元はとれてるんじゃないかな。他の専業新書みたいに自転車操業で点数だけ出している訳ではなかろうし。ということで今回も博士課程一人を含む4人の共作となっているのだが、文体は統一がとれている。中国も金融危機以降、企業倒産が未曾有の規模と伝えられる一方で、失業した農民工が一斉に引き揚げたため、労働市場は一気に売り手市場になったとも伝えられるのだが、労働法の整備を待たずとも、韓国や香港系の「夜逃げ企業」は淘汰されていく運命にあるのだろう。日系企業は体質的に簡単に夜逃げなどできないし、反日の縛りもあるから、中国側の撤退ガードが高い。もっとも、夜逃げできるほど、投資を回収し終わった日系進出企業など、ほとんど無いだろうから、否応無く運命を天に任せるか、中国に騙されたことにして、銀行を騙すしかない。撤退の理由を突き詰めれば、販売不振とそれに伴う低コスト化の失敗にある事が多いのだが、そうなると、かつての韓国の様に労働争議リスクというものを政府の投資振興と切り離して考える必要があろう。工会を労働組合とするのは間違いという指摘があるが、その工会も急速に無力化している現状では政府の介入がむしろ仇となるケースも出て来よう。「反日」と結びかねない日系企業の争議は政府も警戒しているところだろうし、事実、反日デモ時に便乗があったのだが、こうなると、今後は「協力工場」という名の請け負い企業へのシフトが進みそうだ。
★★

南アジア 世界暴力の発信源

南アジア 世界暴力の発信源 (光文社新書)南アジア 世界暴力の発信源 (光文社新書)

光文社 2009-11-17
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中東もの新書の帝王、宮田律先生が南アジアにも手を出したか。それにしても「世界暴力の発信源」とはあんまりな言い草だけど、アルカイダの皆さんもここにいるそうだし、中東の人にとって南アジアはいい迷惑になってるのかもしれないね。ということで「世界一幸福な国」ブータンとか、イスラム圏だけど「楽園」なモルディブ、ドンパチは終了したが未だきな臭いネパール、スリランカは非イスラム圏だからパス。正に「世界暴力の発信源」であるアフガニスタンと、その親玉パキスタンを中心とした記述。これだけ新書を書いていたら、もうお手の物なんだろうけど、現代史をちゃんとなぞってくれるので入門としてはこの上ない出来映え。しかし、貧困失業問題は変わらないのに,バングラデシュで「イスラム過激派」の類いの問題があまり起きないのはなんでだろ。それは仏教の時代の影響という話もあるが、パキスタンへの反感とかがあるのかな。チッタゴン峡谷の問題とかはあるけど、基本的にベンガル人が圧倒的多数で、今の不遇を異民族とか異教徒とかのせいにするという習慣がないからかもしれん。その辺は日本と似ているとも言えなくはない。
★★★

ビジネスマンの精神科

ビジネスマンの精神科 (講談社現代新書)ビジネスマンの精神科 (講談社現代新書)

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うつ病ものは定番だね。

勇気ってなんだろう

勇気ってなんだろう (岩波ジュニア新書)勇気ってなんだろう (岩波ジュニア新書)

岩波書店 2009-11-21
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蓮兄や高遠さんを英雄化ねえ。

都市伝説の正体

都市伝説の正体-こんな話を聞いたことはありませんか? (祥伝社新書159)都市伝説の正体-こんな話を聞いたことはありませんか? (祥伝社新書159)

祥伝社 2009-04-21
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正直、あんま聞いた事がないのばっかなんだけど。

ドキュメント高校中退

ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所 (ちくま新書 809)ドキュメント高校中退―いま、貧困がうまれる場所 (ちくま新書 809)

筑摩書房 2009-10
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凄まじいな。
別に話のウラはとっていないだろうが。
★★

マルコムX

マルコムX (岩波新書)マルコムX (岩波新書)

岩波書店 2009-12-18
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オバマ本のネタが尽きたからという訳ではないんだろうが、岩波新書がマルコムXというのも唐突な気がする。自らの体内に流れる白人の血も黒人の血も呪われる対象ではないという意味では、オバマの様な存在はマルコムXの時代には考えられなかった事というのはその通りなのだが、今、マルコムXが生きていたら、今、マーチン・ルーサー・キングが生きていたらオバマ大統領の誕生をどう捉えたかというのは誰しも思うところであろう。それがアメリカという国の進歩を表したと言えばそれまでなのだが、オバマが大統領になって、マルコムXとキング牧師は暗殺されたという両極性を単に時代の違いで片付けてしまってよいのだろうか。オバマも就任前は暗殺の可能性が囁かれたりしたのだが、それが杞憂に終わった(まだ分からないが)のも時代が変わったからではなく、オバマに流れているのが奴隷の血でも、強姦した白人の血でもない「純血」であったからであろう。オバマがイスラム教に救いを求める必要がなかったのも正にその点においてだが、マルコムXが最終的に命を落としたのはイスラムの普遍性の追求だとすれば、先日の航空機テロの犯人がナイジェリア人だったことはイスラムの普遍性とアメリカという普遍性の深刻な矛盾が憂慮されるものである。
★★

社会主義と個人

社会主義と個人—ユーゴとポーランドから (集英社新書)社会主義と個人—ユーゴとポーランドから (集英社新書)

集英社 2009-11
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社会主義時代のユーゴスラビア、ポーランド滞在記なのだが、例のベルリンの壁崩壊10周年とはあまり関係無さそう。というのもユーゴはチトー全盛期、ポーランドも連帯が政権を担う時期で、鉄のカーテンの向こう側の閉ざされた世界といった趣ではない。西側との差異は物質的事情ぐらいなものなのだが、そうなると社会主義政権の意味はということを突き詰めて考えさせられることとなる。もっとも初出が93年頃のものを使用とのことで、こと東欧に関しては既に決着がついた問題を振り返ってみようというものなのかもしれない。社会主義イデオロギーの特徴はインテリによるインテリ批判というものなのだろうが、腐ってもヨーロッパの東欧ではヨーロッパ教養主義の伝統が親西欧と結びつき、「アジア的」専制支配に抵抗するといった構図であろう。もっともスターリンをそのアイコンとする「アジア的野蛮」はチトーもワレサも内包していたもので、ワレサ自伝に感動した著者がポーランド人から、あれはワレサが書いたものではないと指摘され狼狽する様は面白い。まあワレザに限らず、クリントンも安倍晋三も世の政治家のほとんどの著書が自分で書いている訳ではないことは常識なのだが、そうしたポピュリズム政治家がインテリにとって侮蔑の対象であることの所以ではある。政治家がウソを演じている社会である限り、社会主義のポチョムキン村を我々は笑えないのだが、ユーゴとポーランドという国民の意識が西側に傾いていた世界で、壁崩壊後に台頭したのが民族主義であったというのは考えさせられるものがある。
★★

ハーフはなぜ才能を発揮するのか

ハーフはなぜ才能を発揮するのか (PHP新書)ハーフはなぜ才能を発揮するのか (PHP新書)

PHP研究所 2009-10-16
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ハーフの人も結構視野が狭いね。
アフリカ系、有色人種系は取材対象外か。

米謀略放送「ポストマン・コール」

対米謀略放送「ポストマン・コール」 (幻冬舎ルネッサンス新書)対米謀略放送「ポストマン・コール」 (幻冬舎ルネッサンス新書)

幻冬舎ルネッサンス 2009-12-20
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遂に自費出版までが新書進出か。近代文芸社も細々と続けている様だが、準大手の幻冬舎が進出となると影響力は大きい。新書なら読み捨てで買って行く人もいるだろうし、書く側も新書の方がイメージが良さそう。単行本だと無用に200頁くらいに膨らませるところだろうが、これは130頁ちょと。ただ一定の基準はある様で、新書を希望しても、箸にも棒にも系とか、画像多数系には引き続き単行本にまわされるのかもしれない。航空会社が格安航空を設立するのと同じで、この方が収益も見込まれそうだが、自費に特化し内容は無関係の文芸社などは追随しないだろう。ということで、この本の限って言えば、幻冬舎新書本体でもいけそうな感じなのだが、話が20年以上も前の取材ものとなると、幾ら著者がNHK出身とはいえ、厳しいものがあるか。たしかに東京ローズの「ゼロ・アワー」などは「華」がったから、記録の蓄積があるのだけど、この「ポストマン・コール」についてはよく知らなかった。その放送に当たっていた元捕虜の証言を中心とした取材裏話みたいなものだが、20年後の現在、登場人物の多くはもう亡くなっているだろう。普通はその辺のことについて触れる筈なのに主人公のドッジ氏を含め現況に関しては言及がない。15年前に書き始めたという原稿をそのまま活用しただけなのだろうか。
★★