新書野郎 -21ページ目

世界最悪の紛争「コンゴ」

世界最悪の紛争「コンゴ」 (創成社新書)世界最悪の紛争「コンゴ」 (創成社新書)
米川 正子

創成社 2010-05-20
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創成社は南アではなくコンゴできたか。ルアンダですら新書は出ていないのにと思いきや、コンゴの紛争の犠牲者数はその10倍以上にあたる540万人というからおぞましい。とにかくゲバラがボリビアで「最後の戦い」をする前に、「最後の前の戦い」をジャングルで展開していたのがこの国である訳で、その時ゲバラが愛想をつかしたゲリラの親玉の息子(とされる)が現在のコンゴ民主共和国大統領とである。言わば、その時代から寸断無く紛争が続いていた訳だが、ルワンダ、ウガンダといった周辺国の紛争も飛び火して、この紛争の構図は正気言ってよく分からんものである。現大統領が公用語であるフランス語やリンガラ語を話せないというのは、ルワンダの現政権同様、亡命2世の政権ということで不思議ではないのだが、何でもL・カビラの息子というのはハッタリで、タンザニアで物売りをしていた男ではないかという説もあるらしい。ゴマの難民キャンプが世界最悪と言われて久しいのだが、すっかりニュースを聞かなくなったので、難民が帰還して平常に戻ったのかと思ったら、今でも最悪の状態で存続しているらしい。コンゴもモブツ以降は難民に国を乗っ取られた形になっているのだが、著者が指し示している紛争の相関図が入り組みすぎていて正に誰が敵で、誰が味方なのかぱっと見では理解できない。著者にとって「初作」ということで、自分語りと経験談が中心になっているのだが、もうちょっと紛争の構図を整理してからでないと、「世界最悪の紛争」が何をめぐって争っているものなのかもよく分からん。
★★

清朝と近代世界

清朝と近代世界――19世紀〈シリーズ 中国近現代史 1〉 (岩波新書)清朝と近代世界――19世紀〈シリーズ 中国近現代史 1〉 (岩波新書)
吉澤 誠一郎

岩波書店 2010-06-19
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岩波新書で始まったシリーズ中国近現代史の第一弾。全6巻だそうで、最近出した日本近現代史シリーズに連なる企画ということになるのだろうか。執筆陣は締めが西村茂雄だけど、日本近現代史より「色」が出ている訳ではない。東大閥が多いが、まあそれも岩波らしいところではある。「革命史」以前はそれほど政治的色分けがなされている訳でもないし、スタンダードな史観ができあがっているから、左右含めて中国暗黒社会史観をとる人以外はそう変わったものにはならないだろう。朝貢システムに関しては上手い説明で、清朝でそれが没落していく理由はわかりやすい。日本が朝貢していたか否かについては色んな見方があろうが、当時から日中関係が「政冷経熱」であったとすれば、政治に関しては中国と距離を置くのが日本の伝統的なあり方なのだろう。菅もこれで軌道修正するのか最期の悪あがきをするか分からんが、政治に関しては日中の長い歴史の間で敵対していたのはわずかな期間というよりも、共同幻想をみていたのはわずかな期間とする方がよかろう。同時代の朝鮮やビルマの対清外交をみても、今の韓国、北朝鮮、ミャンマーがその「伝統」を受け継いでいることが分かる。韓国、北朝鮮はかつて清朝を内心馬鹿にした様に、今も共産党イデオロギーに支配された中国に対して「儒教」の正当なる後継者を自認しているところはあるだろう。北朝鮮にあっては儒教を社会主義に優越させるという点、内心、中国を「野蛮」にみているのかもしれない。ミャンマーも、中国に形式的な服従をみせることで、最大限の利益を引き出すという点では一貫している。イギリスなども形式的な服従を拒否しながらも、経済的利権は確保するという意味では伝統的対中外交たるものがある訳で、日本も政治にはコミットしない伝統的な「政冷経熱」で行くべきだろう。もっとも、改革開放が一段落を向かえ、天安門事件の様な経済的ダメージを中国が今後負う事はあまり考えられないから、日本が中国に「貢献」できる時代はもう来ないかもしれない。だからこそ政治的距離を置くことの重要性が認識されるべきなのだが。
★★★

旅に出よう

旅に出よう――世界にはいろんな生き方があふれてる (岩波ジュニア新書)旅に出よう――世界にはいろんな生き方があふれてる (岩波ジュニア新書)
近藤 雄生

岩波書店 2010-04-21
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岩波ジュニアに持ち込み企画でデビューって。

予習という病

予習という病 (講談社現代新書)予習という病 (講談社現代新書)
高木 幹夫 日能研

講談社 2009-11-19
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塾の広告か。

ユーラシア胎動

ユーラシア胎動――ロシア・中国・中央アジア (岩波新書)ユーラシア胎動――ロシア・中国・中央アジア (岩波新書)
堀江 則雄

岩波書店 2010-05-21
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著者の略歴が国会図書館勤務を経てジャーナリスト(ワシントン、モスクワ駐在)となっているのだが、特派員でなく駐在ジャーナリストって何だと思って調べたらやっぱり赤旗か。前にフランス本でも、新聞社パリ駐在という経歴の人が赤旗特派員だったというのがあったが、赤旗記者っていうのはやはり隠さなくてはならない恥ずかしい過去なのかな。平壌特派員だった萩原遼さんみたいに転向済みでそれをウリにできる人なら良いのだろうが、フランスの奴もそうだけど、左翼馬鹿丸出しの内容を書いているだけだと、「ジャーナリスト」として中立性を装う必要があるか。その意味では岩波新書のこの著者もそれに当たるのだろうが、現在は大学講師とかユーラシア研究所運営委員という肩書きだそうで、「日米同盟」を非難しつつも、それほど偏った内容でもなかった。もっともこの地域を語るに日本の「歴史認識」とかが絡んでくる訳ではないのだが、ソ連派の名残なのか、ロシア側の視線に立って中ソ関係を論じているので、結果的にウイグル問題や極東の中国人流入問題などで、中国に対して厳しいものとなっている。一方でロシア内部の民族問題については触れることは無く、北方領土問題なども当然の如く黙殺されている。ただ、珍保島などの中ソ分割合意地域のロシア側からの取材は珍しいものだし、中央アジア諸国、ユーラシア・パイプラインの現場報告もテキストとしては有用なものであろう。もちろん、キルギスの民族紛争などは予想にあらぬところではあるのだが。
★★

中国経済の正体

中国経済の正体 (講談社現代新書)中国経済の正体 (講談社現代新書)
門倉 貴史

講談社 2010-04-16
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一時よりはペースが落ちたが、ほとんど工業製品の如く、新書を濫発する著者。講談社新書は初めてじゃなかったかもしれんが、新書の「格」が違う岩波と中公以外はあらかた制覇したんじゃないかな。どれもとにかく新書のツボを押さえているから普通のサラリーマンなら通勤時間内で十分読める内容となっているのだが、巻末の参考文献リストのショボさとは裏腹に入門書としてはわりとまとまっている感じがした。チベットの売春ビジネスが隆盛しているなんて話はどこから仕入れたのかしれんが、一見マジメそうで、こういう下半身経済の分析も著者が得意としているところ。まあチベットも中国の「西部開拓」のフロンティアみたいなものだから、一攫千金を狙う内地の男たちが殺到している以上、「従軍慰安婦」ビジネスも花盛りな訳だ。その相場は気になるところだが、低地の人間が高知でセックスすると思った以上に息切れする。腹上死もかなり多いと見えるがそんなデータがある訳ないか。
★★

追悼「広告」の時代

追悼「広告」の時代 (新書y)追悼「広告」の時代 (新書y)
佐野山 寛太

洋泉社 2010-05-07
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広告批評っていのもいい加減な世界だな。

部落差別の謎を解く

部落差別の謎を解く―キヨメとケガレ (モナド新書)部落差別の謎を解く―キヨメとケガレ (モナド新書)
川元 祥一

にんげん出版 2009-09
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にんげん出版モナド新書。解同系なのかな。

不思議な経済大国 中国

不思議な経済大国 中国(日経プレミアシリーズ)不思議な経済大国 中国(日経プレミアシリーズ)
室井 秀太郎

日本経済新聞出版社 2010-01-13
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日経プレミア初の中国本かな。著者は元、上海、北京駐在記者とのこと。とはいえ特に中国寄りということもなく、オーソドックスな入門書。新書なので基本的に日経本体記事より読みやすい。現在は研究所の所属みたいで、中国政府の発表する経済データは基本的に信用できないとしている。それを言ってしまえば、中国経済を生業とする人たちの食い扶持がなくなるということで、細かい検証は抜きにするか、留保をつけた上で利用するというのが研究者のあり方だが、中国人自身も誰もデータなど信用していないというのには笑った。著者が言うには、株式上場なども適当な数字の上に成り立っており、粉飾決算は常識だそうだが、よく分からんのは、投資家もそんなこと百も承知で株を買っているのだということ。そうなると、株式市場は文字通りババ抜きみたいなものなのだが、東証に初めて上場し、廃止となった中国の広告会社なんてのも、別に悪気があった訳ではなく、彼らの常識でコトを進めたということだったのかもしれない。
★★

秘密諜報員ベートーヴェン

秘密諜報員ベートーヴェン (新潮新書)秘密諜報員ベートーヴェン (新潮新書)
古山 和男

新潮社 2010-05
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ベートーベンの「ラブレター」に関する謎の究明は未だ決着をみない様だが、それは政治的危機を伝える暗号文だったという説をとる。となると、何やらトンデモっぽい香りもするのだが、著者は歴史ではなく、音楽理論が専門らしい。この時代は戦争の世紀だから、そのニーズもあったのだろうが、ベートーベンが「秘密諜報員」になる必然性はよく分からんかった。そもそもこの「手紙」の信憑性もはっきりしないものだから、史実の研究というより、メタフィクションの世界であるのだろう。ナポレオンとかフリーメーソンとか関わってくると、どうしてもそういう見方になってしまうのだが、楽聖には暗号文より恋文の方がふさわしいのではないのかな。