ベルリン物語
![]() | ベルリン物語 都市の記憶をたどる (平凡社新書) 川口 マーン 惠美 平凡社 2010-04-16 売り上げランキング : 28916 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この著者もコンスタントに新刊を出してくるな。進歩派とか近隣諸国の枕詞「日本はドイツを見習え」に反発する様な本も徳間から出したから、もう左傾化の平凡社新書からは出さないのかとも思ったのだが、料理本に続いて、歴史ものも。統一ドイツの首都としての歴史もドイツの歴史も長くはなく、ベルリンの都市の歴史の方が長いのだが、新書では紙幅の問題があるのでビスマルクから壁崩壊までの歴史を辿っている。追放ドイツ人やソ連兵による強姦に関しては著者のこだわりがある様で、ヒットラーを戯画化したり、ホロコーストの悲劇をことさら強調したりといったこともしない。前回読んだドイツ本にはヴァルキューレ作戦に連座した軍人たちがピアノ線を使っての絞首刑となり、それが記録フィルムとして撮影されたなんておぞましい事も書いてあったのだが、そうしたことには触れていない。アマゾンでアウシュビッツ否定派で有名な人がレビューを寄せているが、この著者は否定派ではないにせよ、ドイツ人の残虐行為を現実のドイツ人との兼ね合いから歴史として受け止めるにはためらいがある様だ。その点、東独時代の国家犯罪に関してはリアルタイムで知っているので、歴史として壁に関する悲劇を紹介している。チェックポイント・チャーリー以外の「国境」にまつわる話は興味深い。
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中国侵略の証言者たち
![]() | 中国侵略の証言者たち――「認罪」の記録を読む (岩波新書) 荻野 富士夫 岩波書店 2010-04-21 売り上げランキング : 129665 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
岩波も最近は時勢の変化もあって中国の暗部も指摘するものを出したりはしているのだが、バランスをとったのか久しぶりの岩波らしい中共賛美本。中共は撫順の奇跡の子飼を岩波に送り込んではいるのだが、ようやく結果が出たか。まあ侵略者の反省と謝罪もまだまだ必要なのだが、やはり中共と中帰連の連中の史料に全面的依拠して一冊の本を作るのは宣伝臭が否めない。その点を気にしてるのか、中国人が最初弁明しているのもキツイものがある。曰く、洗脳なら帰国後は解けるはずとか、シベリアからの移送組が過酷だったから撫順で真人間にあなったとか、どうなんでしょうね。中国が自慢する「寛大」が戦略に過ぎず、決して中共の本質を表すものではないことは歴史が証明しているのだが、無邪気に中国に平伏している連中には哀れみしか感じない。純粋な歴史としての戦争を研究するのは結構だが、中国を清々しく、日本を残虐に描くことを目的としていれば、それは政治でしかありえない。この連中も中国の残虐さに少しでも言及すれば、アリバイにもなるのに、やってるのは「反日」などない、中国は寛大で、日本は偏狭だとかいう中国の工作だけ。まあこの手のものの市場はまだ存在はするのだろうけど。
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大学論
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大学論ていうか、てめえの大学報告。
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ハングルの誕生
![]() | ハングルの誕生 音から文字を創る (平凡社新書 523) 野間 秀樹 平凡社 2010-05-15 売り上げランキング : 4053 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ハングルについての新書や朝鮮語の文法書が日本ではこれまでなかったとは知らなかったが、たしかに文春新書の「蓮池流」とか辛淑玉流とかとは違った本格的なハングル解説書。正音が文字通りハングルとして整備されるのが、民族の言語が奪われたはずの「日帝強占時代」というのも逆説的だが、この時代に制定された「ハングル綴字法統一案」のおかげで、「解放後」に南北に分かれた国の文字が統一を保っているのだという。小中華を自認してきた朝鮮が訓民生音をハングルに昇華させるには外発的要因が必要だったのであろう。例のチアチア族のハングル採用の話も出てくるが、民族文字として高揚させたハングルが今度は内発的要因によって外部へ広がりをみせるというのは興味深い。
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中国共産党を作った13人
![]() | 中国共産党を作った13人 (新潮新書) 譚 〓美 新潮社 2010-04 売り上げランキング : 69402 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
革命家の家系である華人作家の著者は天安門事件以降、中共政権には完全に背を向けた様で、中共による中国革命史からは除外されている自身の大叔父にまつわる話などをノンフィクションにしているのだが、同じく中共史からはないがしろにされている李書城や李漢俊の孫といった人たちの知己を得て、中国共産党史から「消された」創設メンバーの掘り起こしに挑戦。その多くが日本留学経験組だったということで、著者は中共による意図的な隠蔽工作があったのではないかと疑っているのだが、というか凡庸な一地方代表に過ぎなかった毛沢東の功績を最大限にする為に、他の実力者の影響力というものを削り取ってしまったのではないかと思われる。その際たるものが、実質的な中心であった陳独秀なのでが、彼の場合、大陸でもだいぶ復権が進んでいるらしい。ただ、何十年も顔写真が別人と取り違えされていたとは驚き。もはや歴史用語に過ぎなくなったトロツキストの陳独秀に対して、陳公博や周佛海といった人たちは汪兆銘政権に参画した「漢奸」である訳だから、その罪は共産党政権が続く限り、修正されることはないかと思うが、蒋介石が客観的評価の対象となった様に、今後は歴史上の人物としては真っ当に扱われる可能性もあろう。祖先の名誉回復に執念を燃やすのは中国人として当然なのかもしれないが、そうした感情を日本と共有できる様になった時に両国にとって新しい時代が始まるのかと思う。
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アパートホテルで巡る欧州
![]() | アパートホテルで巡る欧州 (中公新書ラクレ) 山内 英子 中央公論新社 2010-03-10 売り上げランキング : 25714 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
滞在型旅の人には常識なんだろうが、この方面はあまりガイドブックがないのかな。実際には1日から可能なところもあるんだけど、最低1週間となると普通の旅行人には使い勝手が悪いか。日本ではこの手のものはツカサのウィークリーマンションとかしか思いつかないけど、韓国人や台湾人が勝手にワンルームマンションの一室を貸しているのはよくあるね。この本で紹介しているのはそういう「曖昧宿」ではなく、レジデンシャルとかペンションとか呼ばれる実質的なホテルだから、別に新書のテーマになるほどのことはないと思うけど、日本人客は清潔にし、トラブルを起こさないからどこでも好まれるというのはどうかな。それなのに一般より高めの日本人料金がえるというのだから、別の理由で上客なのではないかな。
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南アフリカの衝撃
![]() | 南アフリカの衝撃(日経プレミアシリーズ) 日本経済新聞出版社 2009-12-09 売り上げランキング : 6329 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
これはワールドカップ関連本というより、便乗本だが、著者はジェトロの人。10年前にもアジ研双書で同じタイトルの本を出しているのが気にかかるが、当然の如く経済中心。南ア一国で完結しないのは、この地域の経済が統合しているとか一体化しているといった事情によるものだが、実質的には南アの経済的プレゼンスが圧倒的で、経済規模が小さい周辺国は必然的に南ア経済に依存しなくてはならないということになるのだが、世界の経済成長センターだった東アジアの様な産業構造でない以上、南アの成長モデルが周辺国に波及するにも限界がある。ただ、ハンドルの関係ではなかろうが、日本で販売されるベンツの多くが南ア製で、その輸入率はイタリア車を上回るのだという。現在の生産コストはタイ以上となると、アジアからの投資は鉱業に偏らずをえないが、ここでも中国の影は甚大である。最後に中国を持ってきているのは日本での関心事がそこに集中しているということなのだろうが、大学に設置した「孔子廟」とは「孔子学院」のことではなかろうか。
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歩いて見た太平洋戦争の島々
![]() | 歩いて見た太平洋戦争の島々 (岩波ジュニア新書) 吉田 裕 岩波書店 2010-04-21 売り上げランキング : 74187 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
岩波ジュニア。著者はカメラの人らしいが、戦跡ものを撮っていて、「若い世代に語り継ぐ戦争の記憶」というプロジェクトを主宰しているらしい。監修の吉田裕は岩波文化人。ということで、日本軍の惨劇や米軍の非道などそっちのけで、「アジア」への謝罪と反省を求めるものかと思ったのだが、最初が硫黄島なので、そういう感じでもなかった。もちろん、随所に朝鮮人軍属とか従軍慰安婦は記述されるのだが、まずは入り口から押さえるということで、日本が如何に広い海域で戦っていたかということが分かる仕組みにはなっている。その上で、戦場になった島の人々が決して「反日」ではないことも分かるのだが、誰が誰と何処で戦った戦争かということはハッキリさせておかないとジュニアの皆さんも混乱するだろう。その上で、サブストーリーを組み合わせていけばよいのだが、まずはじめに結論ありきで洗脳したところで、この情報過多の時代ではいずれは反動がきて、結果的にマイナスになってしまうんではないかな。
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