ハリウッドで勝て!
一瀬 隆重
ハリウッドで勝て!
有名な映画プロデューサーの著者だが、新潮新書なので、「バカの壁方式」で作られた本ぽっい。映画業界というのは成功した奴が勝ちということが如実に出るところなのだが、この著者の言わんとしているしているところは正にそこにある様で、著者が六本木ヒルズに住むこともそういうことなのらしい。つまり清貧さを称えたり、商業主義をバカにすることは敗者の僻みでしかないということなのだが、なるほど、著者が「ハリウッドで勝った」成功の秘訣としてはあまりにも分かりやすい。幾ら虚業であろうと映画も一つの産業である以上、利益を追求しないことには立ち行かなくなることは確かなのだが、「ハリウッドモデル」が唯一のビジネスモデルだとしたら、これまた映画の危機とも言えなくはない。つまり映画を産業として見るか文化として見るかで、その方向性が全く別のものになってくるのだが、どこぞの国の様に文化として保護してしまうのも、映画の持つ自由さを束縛する様な気がしないでもない。最近の日本映画の好調さはいろんな側面から語られるのだが、単純化すれば、産業と文化がうまくバランスがとれていると言うこともできるだろう。産業的には海外に頼らない成熟した国内市場があったからこそ「復活の日」を迎えたのだろうし、産業の穴を文化が埋めて持ちこたえたといった感もある。ほとんど産業一筋で来た香港映画が国内市場の縮小によって壊滅状態になったのをみれば、海外依存度が高くなってきているハリウッドもまた安泰ではなく、そこに新しい血を入れることが生き残りへの道だったとも思う。そうなると、ボリウッドって奴は正に優良産業ということになるのだが、将来、カレーを食わない世代が登場すれば、インド映画を観ない世代が出てくるのもまた必然なのかとも思う。
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インドネシア
水本 達也
インドネシア―多民族国家という宿命
時事通信の元ジャカルタ特派員が書いた新書。如何にもインドネシアという国家を反映しているか如くごった煮の印象もある。記者系にしてはあまりまとまりがない。副題が「多民族国家という宿命」となっており、それが著者の一番、言いたかったことだというのは分かったのだが、前半のJIで頁数を食ってしまったのか、最後の西パプアは時間切れに終わってしまった感じ。取材申請なんかしないで、直接行っちゃえばいいのにとも思うのだが、一応、大手マスコミの端くれである以上、そうもいかんかった様だ。しかし、特派員生活の最大の収穫が支局記者と知り合えたことというのはどうなんだろう。一番身近で、一番長く、一番深く接したインドネシア人ということで、それはそうなんだろうが、イスラム教徒の女性であると。この辺は何か意味深。正直にこの本は彼女がいなければ書くことが出来なかったと記しているのは好感が持てるが、それなら彼女にどれだけ依存していたのかというところも気になる。「東アジア共同体」についてはインドネシアが大きな鍵を握っているということは分かったが、日本と中国を競わせるようなしたたかさはインドネシアにはないだろう。何よりもその前提となる石油は純輸入国に転落したというからなおさらだ。そうなるとシーレーン保護や地域大国という立場を最大限活用することが、今後の外交に求められる訳だが、JIをはじめとする「アルカイダ危機」も米国に眼を向けさせる策略という可能性があったりして。
★★