【一書 第一】
稚日女尊(わかひるめのみこと)が斎服殿(いみはたどの)で神衣(かむみそ)を織られていると、素戔嗚尊が斑駒(ぶちこま)を、天つ罪の一つとされる逆剥=馬の皮を尻の方から剥いで、御殿の中に投げ入れてきました。
稚日女尊は驚いて機織りで使っていた「ひ」(木へんに俊のつくりの部分を合わせた漢字)で体を傷つけて亡くなりました。
(この女神は大神の子とも妹とも言われています。)
このため天照大神は素戔嗚尊に
「あなたには邪心があります。もう会いたくありません」とおっしゃり、
天石窟に入って岩戸を閉じてしまわれました。
そのため天は真っ暗闇になりました。
そこで神々は天高市(あめのたけち)に集まって相談し、
高皇産霊(たかみむすび)の御子で、大変思慮深く知恵の豊かな思兼神(おもいかねのかみ)が思案して、
「天照大神のお姿をかたどったものを作って大神をお招きしましょう」と申されました。
そこで石凝姥(いしこりどめ)を鍛冶とし、天香山の金属を採って日矛を造らせ、また鹿の皮を丸ごと剥いでふいごを造らせました。
こうして作られた鏡が紀伊の国にまします日前神(ひのくまのかみ)です。
※日矛を造ったと書いてありますが、鏡と解釈されています。