【一書 第二】
素戔嗚尊が天に昇ろうとされた時、羽明玉(はかるたま)神がお迎えに来られ、
端八坂瓊(みつのやさかに)の曲玉(まがたま)を献上されました。
そこで素戔嗚尊はその玉を手に持って天上に昇られました。
この時、天照大神が弟に悪い心があるのではないかとお疑いになり、兵を集めて詰問されると、素戔嗚尊は、
「私が参ったのは姉上に会いたかったからです。また珍しい宝である端八坂瓊(みつのやさかに)の曲玉(まがたま)を献上しようと思っただけで他意はありません。」と答えられました。
天照大神がまた
「あなたのいう事の真偽は、どのようにして証明するのですか?」と問われると、素戔嗚尊は、
「どうか私と姉上で誓約(うけい)を立てさせて下さい。誓約によって女を生んだら悪意があると思って下さい。男を生んだら悪意が無いと思って下さい」と答えられました。
そこで、天真名井(あめのまない)を三つ掘り、向かい合って立たれました。
天照大神は素戔嗚に
「私の帯びている剣をあなたに授けましょう。あなたは持っている八坂瓊の曲玉を私に授けなさい」とおっしゃって持ち物を交換しました。
そして天照大神がその曲玉を天真名井に浮かべ、吹き出された息から生まれたのは三柱の女神でした。
曲玉の端を嚙み切って吹き出された息の中から生まれた神を市杵島姫命と申します。この神は沖津宮にまします神です。
また曲玉の中ほどを噛み切って吹き出された息の中から生まれた神を田心姫命と申します。この神は中津宮にまします神です。
次に曲玉の尾を噛み切って吹き出された息の中から生まれた神を端津姫命と申します。この神は海浜にまします神です。
対して素戔嗚尊は、天照大神の剣を天真名井に浮かべて剣の先を噛み切って五柱の男神を生みました。
まず初めに天穂日命、次に
正哉吾勝勝速日天忍骨尊(まさかあかつかちはやひあまのおしほねのみこと)
天津彦根命 (あまつひこねのみこと)
活津彦根命(いくつひこねのみこと)
熊野楠日命(くまのくすひのみこと)
の五柱です。
※三女神は現在の三か所の島とご祭神名が違いますが、宗像神社の御祭神であることは同じです。