今日は寒い。

特にこの高台は、下の街と比べると気温が2~3度は違う。いや、もっとかもしれない。その分、夏は涼しいのだけれど。

いつも、帰る時に、高台からの長い下り坂が終わり、街に続く道へ出るための曲がり角を曲がった途端、景色が一変する。前も見えないほど雪が降っていても、その曲がり角を曲がると、急に雨になる。車に雪や氷の塊が付いていると、どこからきたの?と言われそうなほどだ。

今日はもしかしたら雪になるかもしれない。不安に思いながら、曲がり角を曲がると、そこから右手側に続くプラタナスの木が、もうすっかり葉が落ちてしまって、まん丸い実たちが一本の茎で枝にしがみついている。なんとも可愛らしい。



そんな寒い日に、バスで出かけて心療内科へ行ってきたという石丸さんがやってきた。

石丸さんは彫りの深い顔立ちをした、太り気味のおじいさんだ。初めて会った頃はいつも、不機嫌な様子で病院や医師に不満がたくさんあるようだったが、薬局では、聞いてもらってると思うのか、叱られることはなかった。

処方箋を見ると、いつもと変わらない眠剤が2種類出ていた。

「いつも通りですね。変わりないんですね」

と話しかけると、満足したような笑顔で、

「うんうん。ちゃんと寝れてるよ。11時にAを飲んで、3時に目覚ましかけて起きてからBを飲む。これで、ちゃんと眠れてるよ」