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ヒト由来の抗体を短時間で作成する技術が開発される-抗体医療の普及に一役買うか


「ヒト由来の抗体を短時間で作成する技術が開発される
                        -抗体医療の普及に一役買うか」

富山大学大学院医学薬学研究部免疫学講座の村口教授らの研究グループが、
ヒトの免疫細胞から特定の抗体を短時間(約1週間)で作成する技術を開発しま
した。

抗体を用いた治療(抗体医療)は化学合成した製剤による治療法よりも副作用
の危険性が低く、治療効果についても近年の改良により大きく改善しており、
ガンの治療法として有力視されています。

本法は、従来の動物の血液を使った作成方法よりも早く、しかもヒト由来なので
安全かつ効果も高い抗体を作成できる技術として今後の抗体医療の発展に
大きく貢献することとなるでしょう。

富山大学大学院医学薬学研究部免疫学講座のページはこちら
http://www.med.u-toyama.ac.jp/immuno/index.html

抗体は血液中に存在するリンパ球が、細菌やウイルス、特定のタンパク質に
対して作り出す、天然の治療薬と呼べます。

生命が誕生してから長い進化の歴史の中でこの免疫システムは改良され、
長い間多くの生物種を存続させ続けているこの能力は、結果的に我々が
持っている安全かつ効果的な自己防衛システムと呼べます。

このように優れた能力を持つ抗体反応を医療に用いようという考えは至極当然
の流れであり、実際に抗体を用いた医薬品の開発が綿々と続けられています。

古くはジェンナーが発見・改良したウシ天然痘を利用したワクチンも、広い意味
でのヒトの抗体反応を利用した技術です。近年ではガンに対する免疫療法が
脚光を浴びており、特定の症例では大きな治療効果が報告されています。

ただし、高まる期待の一方で、既存の抗体作成技術には難点もあります。
その大きな原因となっているのが、抗体作成に動物を使用していることが
あげられます。

そもそも抗体の作成は抗体を作らせる動物に抗原を注入し、体内で十分な
量の抗体を作らせなければいけません。

これだけで時間がかかり、更にその動物から全血を回収して抗体を精製
しなければならないので、一度に回収できる量が限られてしまいます。

また、同じ免疫システムを持っている哺乳類を用いて作成した抗体でも、
ヒトに対して100%同じ効果が発揮されない場合もあり、また精製していても
やはり「他の動物の」タンパク質であるため人体に悪影響を与える可能性も
あります。

そのため、ヒトの免疫細胞を使った抗体作成が検討されてきましたが、特定の
抗体を作る細胞の数は限られており、大量精製のためには効率的に抗体を
作る細胞(抗体産生細胞)を検出・分離する方法が求められていました。

村口教授らの研究グループが開発したのが正にこのニーズを満たす技術
となります。具体的には、小さな窪みを多数持つマイクロアレイ上に抗原に
反応したヒトの血液から回収した抗体産生細胞を乗せ、窪みの中に1つずつ
細胞を入れていきます。

この細胞が入ったマイクロアレイウェルに対して、抗体産生細胞が抗原に
反応した際に光る色素とともに抗原を入れ、光った細胞を回収するという方法
です。

原理的にはマイクロタイタープレートを用いたセルアッセイを、マイクロウェル
アレイにしてスループットを上げたものといえます。

既存の技術の応用ですから、実際にB型肝炎ウイルスやインフルエンザ
ウイルスに対する抗体産生細胞の検出に成功するなど、実用化の目処は
確実視されています。

選別した抗体産生細胞を用いた抗体の大量精製における技術的な課題など、
いくつかの懸念材料は残されていますが、の大きなハードルである抗体産生
細胞の選出が本技術でクリアされることにより、今にも増して抗体医療の地平
が開けてくるのではないでしょうか。

抗体医療に力を入れている医薬品メーカーがいくつか知られていますが、
本技術のニュースによって株価が上がったりしているかもしれません。

■研究室紹介
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研究室名: 慶應義塾大学先端生命科学研究所
ホームページ: http://www.iab.keio.ac.jp

慶應大学鶴岡タウンキャンパス(山形県鶴岡市)に設置された本格的なバイオの
研究所です。

当研究所では、最先端のバイオテクノロジー(メタボローム、プロテオーム、
メタゲノム、ゲノム工学)を駆使して生体や微生物の細胞活動を網羅的に
計測・分析し、コンピュータで解析・シミュレーションして医療やバイオ燃料、
食品発酵などの分野に応用しています。

本研究所はこのように「統合システムバイオロジー」という新しい生命科学の
パイオニアとして、世界中から注目されています。

キーワード:システム生物学、バイオインフォマティクス、ゲノム、プロテオーム
        メタボローム、合成生物学

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┃編┣━┫後┣━┓
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最近、M6以上の地震が連発しておき、心も休まらない状況です。。。

東海大地震との関連性はないとされていますが、
地震が何よりも嫌いな私としては、朝起きて、
寝ている間に地震が起きなかったことにほっとします。

いつ起きても嫌なものは嫌ですが、寝ているときに不意打ちでくるものほど
嫌なことはないですから。
                             (鈴木)
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      バイオ・インフォメーション・ニュース編集部

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健康診断で生活指導を受けた方に朗報? メタボリックシンドロームの仕組みが解明される


「健康診断で生活指導を受けた方に朗報?
                     メタボリックシンドロームの仕組みが解明される」

内臓脂肪と高血圧・高脂血症などの複数の要因で成立するといわれる
メタボリックシンドロームは、自覚症状が無い上に治療方法が食生活を含めた
生活習慣の改善という、ある意味最も治療が困難な病気とも言えます。

そんな厄介なメタボリックシンドロームの原因を、東京大学大学院の永井教授らの
研究チームがマウスを使って解明しました。

すぐにヒトへの応用とは行きませんから、現段階でメタボと診断を下された方は
生活習慣の改善を続ける必要がありますが、生活習慣の改善と同様長い目で
成果を期待して欲しいです。

東京大学大学院医学系研究科内科専攻循環器内科永井教授のページはこちら
http://plaza.umin.ac.jp/nagai/jp/Change.htm

メタボリックシンドローム、数年前からメディアに露出したワードで、巷ではメタボと
呼ばれていますが、症候群(シンドローム)といわれるように明確な疾患状態を
示してはいません。

メタボリックシンドローム状態自体には明確な傷害はありませんが、そのままの
状態を放置すれば高確率で循環器系に大ダメージを与える可能性が高く、
早期発見・治療が望まれています。

ただ、自覚症状が無いのが本症候群の厄介なところで、対策として日本では
2008年から40歳以上の健康保険加入者に対する健康診断の際に特定検診の
実施を行い、該当者には生活習慣の改善指導などが行われています。

しかし、生活習慣の改善はある意味最も困難な治療方法であり、中々改善の
方向に進まないのが実際のところです。

そこで、生活習慣の改善による内臓脂肪の減少だけではなく、内臓脂肪に
かかわらず症状を抑える方法が望まれていました。

今回の研究は、メタボリックシンドロームにおける内臓脂肪の炎症を抑える
ことで、炎症による悪影響(インスリンの効果減→糖尿病・動脈硬化)を
低減するというアプローチです。

これなら内臓脂肪があっても大丈夫というわけです
(メタボリックシンドローム以外の悪影響についてはこの際割愛します)。

しかし、脂肪細胞を攻撃する免疫細胞の働きを抑制するということは、
同時に人体にとって必須の機能(細菌やウイルスに対する免疫機能)も
低減させることにつながります。

現段階では脂肪細胞に対する免疫反応のみを抑制することは出来て
いないため、実用化にはまだ時間がかかりそうです。

将来的に免疫細胞が脂肪細胞を標的とするメカニズムが解明されれば、
一気に実用化の目処が立ちそうです。

ただ、恒久的に脂肪細胞に対する免疫を低減させることが出来ない
のであれば、過剰な内臓脂肪が存在する限り恒久的に投薬を
続けなければならないでしょう。

結局のところ、メタボリックシンドロームに限らず、ある程度の体調管理は
必要だということには何らかわりは無いのかもしれません。

まあこの際、新薬の開発を待ちながら、のんびりとウォーキングなどの
運動をしてみるのも良いのかもしれません。
薬の開発も、体質改善もまず初めの1歩から、ですね。


◆求人情報
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国立遺伝学研究所 発生遺伝研究部門(広海健研究室) 助教公募
https://www.biojobs.jp/job.php?id=48&action=view

国立遺伝学研究所 微生物遺伝研究部門(荒木弘之研究室) 助教公募
https://www.biojobs.jp/job.php?id=47&action=view

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┃編┣━┫後┣━┓
┗━┫集┣━┫記┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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歯の完全再生がマウスで成功したようですね。
iPS細胞を利用した研究成果がどんどんでています。

安全性、コスト面での不安を解消し、
早く実用化して欲しいですね。

日本の再生医療を活性して欲しいところです。
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文部科学省がiPS細胞研究のロードマップを作成

「文部科学省がiPS細胞研究のロードマップを作成。
      5年以内の臨床研究を目指す:
        地図と同時に足枷を付ける・・・な事が無いよう他省庁との連携を」

文部科学省がiPS細胞研究に関する目標を示したロードマップを作成しました。

その中ではiPS細胞を利用した再生医療の臨床研究を5年以内に始めるとされてい
ます。世界中でiPS細胞研究は競争激化の傾向にあり、同省からも多額の予算が
計上されていますが、臨床研究における指針などはまだ制定されておらず、
実現に向けての法整備など関係省庁による連携が期待されます。

今回のロードマップでは、iPS細胞を高品質に作成する方法の確立を最優先課題とし、
iPS細胞の万能性に関する基礎研究・疾患モデルiPS細胞の作成・それらの細胞
バンクの構築という4つの分野が定義されています。

期日目標としてiPS細胞研究の基本である作成方法の確立と細胞バンクの構築は
2年以内に、残りの分野は5年以内を目処に設定されています。

基礎研究においては京都大学に付随して設立されたiPS研究センターを中核に
運営され、細胞バンクは理化学研究所バイオリソースセンターに集約される予定
です。

再生医療については集約施設など示されていませんが、分野については具体的に
テーマが定められ、目の病気の治療につながる網膜色素上皮細胞は5年以内、
心筋は5~7年程度、造血幹細胞は7年後以降などとされています。

ただ、最後に紹介した臨床研究をするには現在まだない指針を策定しなければ
ならず、これについては文部科学省のみでは策定できるものではなく、関係省庁
との連携がどの程度得られるかが、一般の治療への応用への大きな要因と
なりそうです。

iPS細胞は理論的にはどんな細胞からも構築できると山中教授が7月2日付の
ネイチャーで述べており、最重要課題であるiPS細胞を高品質で作成する方法
が確立されれば、iPS細胞を利用した再生医療の適用範囲は劇的に広がるはず
です。

多くの疾病に対する有効な切り札になるiPS細胞研究ですので、関係省庁は
是非とも協力して支援を続けていただければと切に願います。

◆求人情報
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国立遺伝学研究所 発生遺伝研究部門(広海健研究室) 助教公募
https://www.biojobs.jp/job.php?id=48&action=view

国立遺伝学研究所 微生物遺伝研究部門(荒木弘之研究室) 助教公募
https://www.biojobs.jp/job.php?id=47&action=view

国立遺伝学研究所 研究教育職員募集
https://www.biojobs.jp/job.php?id=45&action=view


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┃編┣━┫後┣━┓
┗━┫集┣━┫記┣━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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ついに先日、東京で熱帯夜を記録しましたね。

ジョギングで外に出た瞬間、いつもと違う空気を感じ取り、
あ、今日はそんなに走れないな・・・と。

熱帯夜であるか、そうでないかによって、
距離・スピードともに雲泥の差です。

それを体感してから、アジアの熱帯地域のアウェイで戦うサッカー選手
に後半足が止っても文句は言いません(笑)。
                             (鈴木)
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