出産直前の嫁さんの要望に応えて、閉店前日の松坂屋の大食堂に行った。
デパートの大食堂でご飯を食べることなど、小学生以来のことである。
あの頃は入口で食券を買い、テーブルでウエイトレスの女性が、その食券をフィンガースナップの如く、パチンッ!と指で切る姿がかっこ良かった(あの音は今も忘れない)。
僕はいつも決まってハンバーグとフルーツポンチを注文した。
懐かしい。唯々懐かしい。オフクロの「さっ、たくさん食べなさい」という声が蘇える。
郷愁に浸る。食べることなど、そっちのけで、買ってもらったおもちゃの包装紙の隅をこじあけていた小学生の自分の姿を思い浮かべる。
単純に、(良かった、あの頃は…)と、しみじみ感に浸る。
閉店となる松坂屋の大食堂での食事は、郷愁という僕の宝箱の蓋を一瞬開けてくれた素敵なものだった。
ありがとう、松坂屋。
