エルヴィスの出現によって、ロックン・ロールはあっという間にアメリカ全土(さらには日本を含む世界じゅうにも)に広まった。
ビル・ヘイリー、ジーン・ヴィンセント、エディ・コクラン、リトル・リチャード、チャック・ベリーなど、彼らの音楽はティーンエイジャーたちの抑圧されていた心を解放した。
それに対し、大人たちの政治家や教育委員会、婦人団体、そして宗教団体が目くじらを立て抗議した。
“ロックン・ロールは若者を麻薬患者のようにしてしまう音楽だ!”、“あれは悪魔のリズムだ!”、“暴動を誘発する音楽だ!”などロックン・ロールへの非難が高まるなかで、その親玉的存在であるエルヴィスへのバッシングは特に凄まじいものがあった。
バチカンはエルヴィスを“悪魔の使徒”と決めつけた。
ナッシュヴィルでは集められたエルヴィスのレコードが広場で燃やされ、彼を形どった人形が中世の魔女狩りの如く、大衆の面前で縛り首にあい、セントルイスでは火あぶりとなった。
ニューヨークの婦人団体はエルヴィスをテレビから締め出すよう市民に働きかけた。
全米クリスチャン教義団体はエルヴィスを乱れ狂うセックスの首謀者だと決めつけた。
そういった大人たちに対し、エルヴィス自身は言っている。
『どんな音楽も人に悪い影響を与えるということはありません。少年犯罪にロックン・ロールが多大な影響を及ぼしていると新聞なんかに出ているけど、信じられません。少年に悪い考えを起こさせるとか、ワイセツだとか、アメリカじゅうの少年犯罪の原因が僕だとも言われています。でも僕は人前で、ワイセツなことをする人間じゃありません。そんなふうに育てられた覚えもありません』