僕が出演しているライヴ店に『音楽室』という店がある。
そこの店で僕は初めて榎本健一(エノケン)の音を聴いた。最高だった。
すぐにその店の店主に頼んでそのCDを借りて帰ってきた。
『甦るエノケン・榎本健一大全集』と題したそのアルバムには、35ものエノケンのお宝音源がぎゅうぎゅう詰めにされている。
同じジャズのテイストながら、二村定一の凄さとは異なる類いの凄さをエノケンも秘めていて、北斗の拳&南斗の拳の流派に違いとでもいうのだろうか、その異なる凄さの違いがたまらないのだ。
お薦めは全部だが、一億円あげるからどうしても一曲だけ挙げてくれ、というなら、やはり〈恋はやさし野辺の花よ〉が断然だ。
しゃがれた声に、はずれた音。一般的には決してお世辞にもうまいとはいえないヴォーカルかもしれないが、エノケンをそもそも一般的尺度で計ること自体間違いなのである。
だから単純にスピーカーから流れ出たその音にド肝を抜かれ、そしてその声に温もりを感じた、ただそれだけの理由だけでもう僕はエノケン様に大きな二重丸&花丸を進呈してしまうのである。