匠の技を見た。ロードバイクの奥深い世界。
出撃準備中の「ピナレロ君」ことピナレロ・アングリル07モデル。後方は「YFK2号」ことスペシャライズドのクロスバイク(本ブログ未登場)が発進に備えてスタンバイ中。この「ピナレロ君」、どういうわけかワイヤーの初期伸びもなく、ブレーキやディレイラーなども全く狂わない。乗り味も軽く、絶好調だ。これも匠の技か!?
そう、それは2006年の春のこと。その日は一日中雨。私も仕事を終えてそのまま帰ろうかとも思ったが、それも面白くない。誰かを誘って飲みにでも行くという選択肢もないわけじゃなかったが、それもどこかしっくりこなかった。
今日のこの雨ではもちろんのこと、自転車には乗って来ていない。それもあったのだろう。例の病気、糖尿病のことではない、そう、あの病気がうずき出していることに私は気づいていた。
「自転車何台でも欲しい症候群」
この病に冒されたことが発覚したのはつい最近のこと。意外に重いその症状に特効薬はない。もしかしたら最高級モデルを購入することが特効薬になる場合もあるのかもしれないが、それはまだ未検証だ。
気が付くと、私は自由が丘のとある自転車店、いやロードバイクプロショップの前にいた。
思いの外小さな店だ。ショウウィンドウ越しにフレームがいくつも飾ってあるのが見える。
私は思いきって扉を開け、恐る恐る店内に足を踏み入れた。
「いらっしゃい。」
店主の声だ。見るとなにやらロードバイクの整備をしている。
オルベアだ。スペインの大手自転車メーカーのカーボンバック付きロードバイク「AQUA」のようだ。どうやら納車整備をしているらしく、店主は鮮やかとも言える手つきで、素速く整備作業を行っているのがわかる。
「あのぅ…」
私は何かを言い出したかったのだが、その雰囲気とあまりに鮮やかな手さばきに気をとられ、うまく言葉が出ない。
「あ、あの…ロードバイクの購入を考えているんですけどぉ…」
口から出てきたあまりにありきたりのセリフに、自ら笑い出しそうになりながら、当時の乏しい知識を織り交ぜ、いくつかロードバイクに関しての質問をした。カウンターの向こうには、店主の奥様と思われる女性がいて、私のオバカな質問に嫌な顔ひとつせず、とてもやさしくアドバイスをしてくれる。
「なんだかとても良い雰囲気の人たちだなぁ。」
それが私の彼らに対する第一印象だった。少し気に入った。
私がなんの気なしにこの日訪れたこのお店こそ、業界では知らぬ人などいないあの伝説のカリスマメカニックがオープンしたプロショップだったのだ。
その人は数年前までイタリアのプロレーシングチーム「ファッサボルトロ」のメカニックとして活躍しており、ツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなどのレースで何度もプロのメカニックとして戦ってきた、ちょっと普通じゃない経歴の人だったのだ。J-Sportsをご覧の方なら良く知っている、そう、あの人のお店だったのだ。
(だが、残念なことに最初の訪問時には私はそのことをあまり認識していなかった。)
私はしばらく話をしてから、その店を出た。なんだか良いものを見せてもらったような気がする。それは良かったのだが、それ以外にひとつ確実なことがあった。
私は火に油をそそいでしまったのだ。あの病は確実に悪化したに違いない。
「もう後戻りはできない…」
私は若干の後悔を押しのけるように、どんよりと曇った暗い雨雲の先を見つめていた。
「何がいいかな、ピナレロかな、ビアンキかな…それとも…」
まだ、「YFK1号」や「JFK2号」を買ったばかりだというのに、私はもう次のバイクのことを考えていたのであった。
かなりの重症である…
つづく
あの峠で、あの電動ママチャリについに勝つ日がやってきた。次回はそのレポート!
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