アンディ・シュレク 運命のチェーン脱落事件の真相!
2010年ツール・ド・フランスもどうやら決着が付いたようだ。
結局勝ったのは…やはり、アルベルト・コンタドール。
もはや新鮮味はないが、さすがは現在の総合キング。これで最近4年間に出場したグランツールすべてに勝っていることになるから、その実力はまさに世界のナンバー1! そのことに異論を唱える人はほぼいないだろう。
だが、待てよ…
今年のコンタドールは、実はひやひやものの勝利だったのだ。
もしかしたら…コンタでなく、アンディ、そうアンディ・シュレクが総合優勝を勝ち取っていたかもしれなかったのだ!
そう、それはほんの何日か前の7月20日火曜日のステージのこと。
この第15ステージのゴール前約20kmほど前に設定された超級山岳バレ峠の山頂から4kmほど手前の地点でそれは起こった。
2位コンタドールに31秒差(この数字ちょっと重要)を付けて総合首位に立っているアンディ・シュレクが、さらにタイム差を付けるべく満を持してアタック!
アンディの何台か後ろを走っていたコンタドールは反応が遅れた。
いち早くアンディのアタックに気づいたヴィノクロフ(コンタドールのチームメイト)がすかさずアンディに追いすがる。
アンディはなおも加速!
ぐいぐいと後続を引き離す。
これは決定的アタックか!
誰もがそう思ったその直後、悲劇は起こった。
なんとアンディ・シュレクの自転車のチェーンが脱落したのだ!
アンディは急激に失速する。
アンディはもはや加速力を失った自転車に乗ったまま、左レバーを操作してチェーンをチェーンリングに戻そうと試みるが、脱落したチェーンはなかなか戻らない。
アンディの失速を見たコンタドールは、ここぞとばかり一気にアタック。ほとんど止まるほどのスピードになってしまったアンディを置き去りにし、山頂を目指しぐいぐいと力強いダンシングで加速を続ける!(実はここが大論争を巻き起こしたポイントでもある。トラブルに遭ったライバルを待つのが暗黙の紳士協定なのではないのか…???という見方をする人も多いよう。)
あぁなんということ!
アンディは結局自転車を降り、自らの手でチェーンを戻し、再び自転車にまたがりコンタドールらを追うが、ここで貴重な貴重な数十秒を失ってしまった。(一説によると約45秒ほどのロス)
アンディは、まさに鬼の形相で残り3~4kmほどの登りを駆け上がるが、本気でアタックを掛けているコンタドールにそう簡単に追いつくはずもない。
結局アンディは、コンタドールに遅れること約15~20秒で山頂を通過(実はここでかなり差を縮めていることにも注目)。ゴールまで残り20kmほどのダウンヒルに運命を賭ける。
アンディは(文字通り)命を賭けた決死のダウンヒルでコンタドールらのグループを追うが、いくつかの不利な条件が重なり(たとえばコンタドールのグループにはダウンヒルのスペシャリスト、サミュエル・サンチェスがいた…人数がコンタドールのグループの方が多かった…など)、タイム差を詰められないだけでなく、徐々に差は開いていってしまう。
結局その日、アンディはコンタドールから39秒遅れでゴール。(この39秒という数字に注目。)つまり、この日のチェーン脱落というアクシデントによってアンディは39秒を失ってしまったのだ。
そしてもちろん、総合首位の証であるマイヨジョーヌはアンディからコンタドールの手に渡る。(そしてそれは二度とアンディの元へと戻ってくることはなかった…ということになる。)
その何日か後、昨日の第19ステージのタイムトライアル。アンディはコンタドールに付けられた8秒という僅かな差を詰めるべく、「自分史上最高のタイムトライアル」(本人談)をする。
だが、やはりコンタドールはタイムトライアルにおいては、実力が確実に一枚上手。
コンタドールが結局31秒のタイム差(この31秒差というのも重要)を付け、マイヨジョーヌを死守したかたちとなった。
だが、ここでこのタイム差を見ると大変面白い数字になっていることに気づく。
第15ステージ以前にアンディがコンタドールに対して付けていたタイム差は31秒。
第15ステージでのチェーン脱落事件でアンディが失ったタイムは39秒。
第19ステージのタイムトライアルでコンタドールがアンディに付けたタイム差は31秒。
第19ステージ後にコンタドールが持っているアンディからのタイム差は39秒。
つまり、こういうことだ。
もしも…そう、もしもあのチェーン脱落事件がなければ、2人の差はゼロ秒!つまり19ステージまで闘って、3500kmもの距離を走って、2人の間のタイム差は全くなかった!!!ということになる。(ということは、ほんのちょっと何かが違っただけでアンディがツールを勝っていたかもしれない……!ということ!!! あぁ…なんという…)
もちろん、スポーツ競技に「たられば」はないし、チェーン脱落事件がなかったら、その翌ステージや翌々ステージの展開も全く違ったものになっていただろうから、そんなことを考えるのは全く意味のないこと…と言ってしまえば確かにそうなのだが、だがそれにしてもこの白熱した2人の“シンクロニシティ的・運命のいたずら的”肉薄ぶり、アンディ、あるいはサクソバンクにとってあまりにもあまりにも痛いチェーン脱落事件であった…ということは疑う余地がない。(フランク・シュレクが居たらどうだったのだろう…というのもちょいと面白い仮説だが…)
で、そのチェーン脱落事件の真相…つまり何故そんなことが起きたのか…というコメントを海外の情報で見つけたので、ここで紹介しておきたい。私が見る限り、日本ではこの情報は、今現在どこにも載っていないと思われるので、実はかなり貴重な情報だ。
情報源はCompetitor.com(VeloNews)というところのツールドフランス特集動画の中。英語が得意な人は是非見てみるととても面白いと思うのでちょっとおすすめ。(実はこの動画チャンネル、ランス・アームストロングやクリス・ホーナーなどの生声を随時伝えてくれていたり、ツールの裏の状況が結構よくわかる。日本のメディアでは出てこない情報がちょくちょく出て来るのがなかなか興味深い。)
コメントしたのはスラム(コンポメーカー)のロード関連広報担当者。つまりメーカーとして実際にアンディのバイクを検証した上でのコメント。
要約するとこんな感じだ。
実際、バイクや機材には全く問題がなかった。アタック前もその後のダウンヒルチェイスの際にもすべては全く問題なかった。だから原因を究明するのにとても時間がかかった。
チェーン脱落直前、ギアは38-12になっていた。(bikes注:つまりフロントインナー、リアはおそらくトップギアの一枚手前のギア。かなりのたすき掛け状態。フロント、リアとも小さいギア同士の組み合わせになるので、チェーンテンションが低めになってしまう組み合わせでもある。余談だがフロントインナーが39でなく38だったというのはちょっと興味深い。)この比較的あまり使わない前後のギアの組み合わせで、チェーンの張りが弱くなったことが引き金になったのは事実だろう。
結果として“チェーンサック”という状態が起きてしまった。(bikes注:チェーンサックとはフロントインナーギアの下部でチェーンがリングからうまくはずれずに、チェーンが上に“吸い上げられた”ような状態になってしまうこと)そして、リアディレイラーがたるんだチェーンを調整するために自動的に動き、結果としてそれがチェーンの波打ちを起こし、そしてチェーンが脱落してしまった。
誰も悪くない。誰もミスを犯してない。ただそういう状態が起きてしまったということ。
(コメンテーターの補足で、路面の段差や振動などのすべてのタイミングが一致してしまったということもあるだろう…とのこと)
※チェーンサック(chain suck)とは、トリプルギアのMTBでは比較的起きやすい症状のよう。実際には突然にペダリングできなくなってしまうので結構危険らしい。
むむむ…これは不運というしかない状況なのか。だがそれにしてもこのタイミングで起きてしまうとは…運命の神様もなんという演出家!?
来年のツール・ド・フランスが早くも楽しみになってきたゾ!
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そして今年のツールは、実はあと1ステージ残っている!新城の逃げまたは上位入賞に期待!!!(いや、ステージ優勝に期待!)
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結局勝ったのは…やはり、アルベルト・コンタドール。
もはや新鮮味はないが、さすがは現在の総合キング。これで最近4年間に出場したグランツールすべてに勝っていることになるから、その実力はまさに世界のナンバー1! そのことに異論を唱える人はほぼいないだろう。
だが、待てよ…
今年のコンタドールは、実はひやひやものの勝利だったのだ。
もしかしたら…コンタでなく、アンディ、そうアンディ・シュレクが総合優勝を勝ち取っていたかもしれなかったのだ!
そう、それはほんの何日か前の7月20日火曜日のステージのこと。
この第15ステージのゴール前約20kmほど前に設定された超級山岳バレ峠の山頂から4kmほど手前の地点でそれは起こった。
2位コンタドールに31秒差(この数字ちょっと重要)を付けて総合首位に立っているアンディ・シュレクが、さらにタイム差を付けるべく満を持してアタック!
アンディの何台か後ろを走っていたコンタドールは反応が遅れた。
いち早くアンディのアタックに気づいたヴィノクロフ(コンタドールのチームメイト)がすかさずアンディに追いすがる。
アンディはなおも加速!
ぐいぐいと後続を引き離す。
これは決定的アタックか!
誰もがそう思ったその直後、悲劇は起こった。
なんとアンディ・シュレクの自転車のチェーンが脱落したのだ!
アンディは急激に失速する。
アンディはもはや加速力を失った自転車に乗ったまま、左レバーを操作してチェーンをチェーンリングに戻そうと試みるが、脱落したチェーンはなかなか戻らない。
アンディの失速を見たコンタドールは、ここぞとばかり一気にアタック。ほとんど止まるほどのスピードになってしまったアンディを置き去りにし、山頂を目指しぐいぐいと力強いダンシングで加速を続ける!(実はここが大論争を巻き起こしたポイントでもある。トラブルに遭ったライバルを待つのが暗黙の紳士協定なのではないのか…???という見方をする人も多いよう。)
あぁなんということ!
アンディは結局自転車を降り、自らの手でチェーンを戻し、再び自転車にまたがりコンタドールらを追うが、ここで貴重な貴重な数十秒を失ってしまった。(一説によると約45秒ほどのロス)
アンディは、まさに鬼の形相で残り3~4kmほどの登りを駆け上がるが、本気でアタックを掛けているコンタドールにそう簡単に追いつくはずもない。
結局アンディは、コンタドールに遅れること約15~20秒で山頂を通過(実はここでかなり差を縮めていることにも注目)。ゴールまで残り20kmほどのダウンヒルに運命を賭ける。
アンディは(文字通り)命を賭けた決死のダウンヒルでコンタドールらのグループを追うが、いくつかの不利な条件が重なり(たとえばコンタドールのグループにはダウンヒルのスペシャリスト、サミュエル・サンチェスがいた…人数がコンタドールのグループの方が多かった…など)、タイム差を詰められないだけでなく、徐々に差は開いていってしまう。
結局その日、アンディはコンタドールから39秒遅れでゴール。(この39秒という数字に注目。)つまり、この日のチェーン脱落というアクシデントによってアンディは39秒を失ってしまったのだ。
そしてもちろん、総合首位の証であるマイヨジョーヌはアンディからコンタドールの手に渡る。(そしてそれは二度とアンディの元へと戻ってくることはなかった…ということになる。)
その何日か後、昨日の第19ステージのタイムトライアル。アンディはコンタドールに付けられた8秒という僅かな差を詰めるべく、「自分史上最高のタイムトライアル」(本人談)をする。
だが、やはりコンタドールはタイムトライアルにおいては、実力が確実に一枚上手。
コンタドールが結局31秒のタイム差(この31秒差というのも重要)を付け、マイヨジョーヌを死守したかたちとなった。
だが、ここでこのタイム差を見ると大変面白い数字になっていることに気づく。
第15ステージ以前にアンディがコンタドールに対して付けていたタイム差は31秒。
第15ステージでのチェーン脱落事件でアンディが失ったタイムは39秒。
第19ステージのタイムトライアルでコンタドールがアンディに付けたタイム差は31秒。
第19ステージ後にコンタドールが持っているアンディからのタイム差は39秒。
つまり、こういうことだ。
もしも…そう、もしもあのチェーン脱落事件がなければ、2人の差はゼロ秒!つまり19ステージまで闘って、3500kmもの距離を走って、2人の間のタイム差は全くなかった!!!ということになる。(ということは、ほんのちょっと何かが違っただけでアンディがツールを勝っていたかもしれない……!ということ!!! あぁ…なんという…)
もちろん、スポーツ競技に「たられば」はないし、チェーン脱落事件がなかったら、その翌ステージや翌々ステージの展開も全く違ったものになっていただろうから、そんなことを考えるのは全く意味のないこと…と言ってしまえば確かにそうなのだが、だがそれにしてもこの白熱した2人の“シンクロニシティ的・運命のいたずら的”肉薄ぶり、アンディ、あるいはサクソバンクにとってあまりにもあまりにも痛いチェーン脱落事件であった…ということは疑う余地がない。(フランク・シュレクが居たらどうだったのだろう…というのもちょいと面白い仮説だが…)
で、そのチェーン脱落事件の真相…つまり何故そんなことが起きたのか…というコメントを海外の情報で見つけたので、ここで紹介しておきたい。私が見る限り、日本ではこの情報は、今現在どこにも載っていないと思われるので、実はかなり貴重な情報だ。
情報源はCompetitor.com(VeloNews)というところのツールドフランス特集動画の中。英語が得意な人は是非見てみるととても面白いと思うのでちょっとおすすめ。(実はこの動画チャンネル、ランス・アームストロングやクリス・ホーナーなどの生声を随時伝えてくれていたり、ツールの裏の状況が結構よくわかる。日本のメディアでは出てこない情報がちょくちょく出て来るのがなかなか興味深い。)
コメントしたのはスラム(コンポメーカー)のロード関連広報担当者。つまりメーカーとして実際にアンディのバイクを検証した上でのコメント。
要約するとこんな感じだ。
実際、バイクや機材には全く問題がなかった。アタック前もその後のダウンヒルチェイスの際にもすべては全く問題なかった。だから原因を究明するのにとても時間がかかった。
チェーン脱落直前、ギアは38-12になっていた。(bikes注:つまりフロントインナー、リアはおそらくトップギアの一枚手前のギア。かなりのたすき掛け状態。フロント、リアとも小さいギア同士の組み合わせになるので、チェーンテンションが低めになってしまう組み合わせでもある。余談だがフロントインナーが39でなく38だったというのはちょっと興味深い。)この比較的あまり使わない前後のギアの組み合わせで、チェーンの張りが弱くなったことが引き金になったのは事実だろう。
結果として“チェーンサック”という状態が起きてしまった。(bikes注:チェーンサックとはフロントインナーギアの下部でチェーンがリングからうまくはずれずに、チェーンが上に“吸い上げられた”ような状態になってしまうこと)そして、リアディレイラーがたるんだチェーンを調整するために自動的に動き、結果としてそれがチェーンの波打ちを起こし、そしてチェーンが脱落してしまった。
誰も悪くない。誰もミスを犯してない。ただそういう状態が起きてしまったということ。
(コメンテーターの補足で、路面の段差や振動などのすべてのタイミングが一致してしまったということもあるだろう…とのこと)
※チェーンサック(chain suck)とは、トリプルギアのMTBでは比較的起きやすい症状のよう。実際には突然にペダリングできなくなってしまうので結構危険らしい。
むむむ…これは不運というしかない状況なのか。だがそれにしてもこのタイミングで起きてしまうとは…運命の神様もなんという演出家!?
来年のツール・ド・フランスが早くも楽しみになってきたゾ!
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そして今年のツールは、実はあと1ステージ残っている!新城の逃げまたは上位入賞に期待!!!(いや、ステージ優勝に期待!)
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