風になり過ぎたピナレロ君!追い風超特急は運休か!
前回は、ピナレロ君がいきなり超特急と化した話を書いた。あれは、確かに気持ち良かった。できればまた体験したい…と思っている。ただあそこまでの超特急はそれ以来一度も体験したことはない。むしろ…
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★シーン2:多摩川沿いの道[登戸~世田谷B地区]
あの日の“追い風超特急”体験をしてから、私は多摩川沿いの道を走ることが好きになった。
もちろんあの日並みの追い風はそれ以来経験していないが、この道ではうまくすると結構なペースで走ることができる…そんな味をしめてしまったからか、サイクリングロードは通らずに脇の車道を通ることが多くなった。
この日、私は稲城方面へと例のSFD(LSDではなく、短く速いトレーニング!)で走りに行き、そこから自宅へと戻る途中だった。
時刻はもう午後7時過ぎ。
あたりは完全に暗くなっていた。
私は例によって多摩川サイクリングロード脇の車道----そう車道の方だ----を快調に飛ばしていた。
快調とは言っても、スピード的にはあの日のようなわけにはいかない。時速30km/h台というロードバイクとしては特に驚きはしない程度のスピードで道路の左隅を走る。
やはりクルマの方が速い!
あたりまえだ。驚くことではない。彼らは自転車に比べると走ることに掛けているコストが違う。クルマによっては5km走るごとに150円分のガソリン代を使い、しかも減価償却費用や消耗品費用、さらには税金さえ払っているのだ。
その分彼らにしてみれば、必要にして充分…いや必要以上のパワーを得ていることはまさに当然の権利。本来はクルマの方が速くあるべきなのだ…ただ、多くの場合、東京都内ではほとんどその能力をフルに発揮するなんてことはできないけど…。
話はちょっと逸れた。
いずれにしろ、今日のピナレロ君は全く普通の調子だった。特に驚くべきことは何もない。
小型トラックが横を追い抜いて行く。
私はなるべく道路の左側に寄り、小型トラックに道を空けるようちょっとした配慮をしながら走る。一部の無法自転車乗りとは違う…マナーの良さを自負するロードバイク乗りなら当然のことだ。
続いて高級乗用車が横を通り過ぎる。彼らとしてもそれほどスピードを出しているわけではない、時速50km/h前後だろうか…。だがさすがに速度差が15km/h以上あってはロードバイクも単なる“邪魔者”に見えるのだろう、ちょっと面倒くさそうに反対車線にちょっとはみ出しながらピナレロ君を抜いて行く。
そんな状況がしばらく続いたろうか。
ふと気が付くと、前方で渋滞が起きている。
登戸を過ぎて数キロのあたりだろうか、さっき抜いて行った高級乗用車が前方に見える。
やっぱり追いついちゃった…結局自転車の方が速かったりするんだよな、コストを掛けてなくても…。
そんなことを考えながら、クルマ達の“集団”の最後尾に付く。
クルマ達の“集団”はノロノロと進むが、やがて完全に停止してしまう。
どうやら信号待ちらしい。
私は乗用車やトラックの左の隙間をすり抜けながらゆっくりと信号に近づく。
あ、これが交通をブロックしてたんだな…。
クルマ達の“集団”の先頭に停止していたのは、大きな清掃車だった。
街でもときどき見かけることのある、イエローにペイントされた大型清掃車。勇ましいディーゼルエンジンの唸りを上げるくせに、その排気音に見合ったスピードが全然出ていない…そんな印象の大型特殊車両だ。
信号が青になる。
私は大型清掃車の前にまで出ることはできなかった。結果として大型清掃車のすぐ後ろを付いて行く。
直後だと前方が見えないから危険だ。だからちょっとナナメ後ろを走る。
大型清掃車は大体時速30km/hほどで走る。エンジンは唸っているが、やはりあまりスピードは出ない。どうやらこれがこの特殊車両のここでの巡航速度のようだ。
後方のクルマ達もすぐ後ろを付いて来る。車間距離があまりない。
対向車が断続的に通るため、追い越しは結構難しそうだ。クルマのドライバー達はきっとイライラモードのはず…。
だが、この状況は自転車乗りである私にとって、決して悪い状況でないことにすぐに気付いた。
ラクなのだ。
清掃車の速度は時速30km/hちょうどくらいというまさに“自転車並み”のスピードで走る。しかも大型車両ゆえ防風効果は抜群だ。
だから足に伝わって来る感触では時速20km/h台の前半で走っているような感じ…。
あの追い風超特急のときもそれほど苦しくなく高速走行ができたけど、あれは結構足を使っての高速巡航だった。だが、今回のこれは遥かにラクチンだ。
なにしろすぐ前方を走るのは超強力ドラフティング効果のある大型特殊車両。追い風…というよりも全く無風…といった感じ。空気抵抗がないとこんなにも楽なのか…と、空気の力の偉大さをあらためて逆説的に感じることさえできる…そんな状況だった。
「これはいい!」
私はそのまましばらく“大型風よけ車両”の後ろで走り続けた。清掃車はまさに私のために速度を落として走ってくれているような状態だ。
速度は非常に安定している。きっちり時速30km/hをキープしている。速度の安定性も申し分ない。
だが、人間、好ましい状況で何を望むか…といえば、“さらに好ましい状況”ということになってしまう。
「もうちょっと速くてもいいのに…」
贅沢なことに、私はさらなる“幸福”を望みはじめた。な、なんと恐れ多い…
まだまだ足には全然余裕がある。
このままあと5km/hスピードが上がったからといって、特に問題となるようなことはない。いや、この風よけ効果があれば、あと10km/hスピードが上がったって全然平気!
本当にそう思えたのだ。
さらに、そのままの状況は続く。後方のクルマ達の中から1~2台、反対車線へ出て強引に追い越しをする者もいる。だが私には彼らのような“コストのかかった”パワーはない。いくらちょっと遅いからといって、時速30km/hほどで巡航する清掃車を追い越すのはちょっと難しい。
ま、いいか…
さらにラクチン走りは続く。
今にして思えば、私には確かにもうひとつの選択肢はあった。
このまま清掃車の後を付いて世田谷B地区まで走り続けるという…。
だが、持って生まれた“贅沢さ”ゆえなのか、それとも、持って生まれた“チャレンジスピリットの多さ”ゆえなのか、いずれにしろ、私はその選択肢を選ぶことをしなかった。
そう、あまりのラクチンさに多少退屈していた私は、信号の関係で速度が一時的に落ちた“大型風よけ車両”を一気に抜き去ってしまったのだ!
速度的には全く問題ないはずだった…
私は前傾姿勢を強めると、ケイデンスを上げる!
スピードメーターは、時速35km/hを示す。
さらに速度は上がるはず!
私はそう思って、足に力を込める。
だが、速度が上がらない!
えっ?
何故?
そう、いつの間にか、“大型風よけ車両”の前では向かい風が吹いていたのだ!大きな“動く遮蔽物”に守られていた私にはそのことが伝わってこなかったのだ!
盛り上がった土手があるがゆえに、道路に沿って一方向の風が吹きやすい川沿いの道。前回は強力な味方となってくれた“偉大な空気の力”が、今回はまさに正反対の方向から自分へと向かって来る。
空気の壁だ。ほんの20分前よりかなり強い。無視できない強力な向かい風だ!
私は決断を誤ったことに気付いた…だがもうすでにサイは投げられた!!
自転車のくせに、いや、自転車の分際でエンジン付きの車両を多少強引に追い越してしまった!
もしも、万が一、向かい風で失速して、後方の大型清掃車をブロックするようなことになってしまっては、“マナーの良いロードバイク乗り”として申し訳が立たないじゃないか!!!
しかも加速力が自転車並みの清掃車では、対向車のタイミングを見計らって自転車を追い抜くことさえできないに違いない!
私にはもう選択肢は残されていなかった。
全力で風に挑むしかない! 清掃車に迷惑をかけるわけにはいかない!!!
万が一にも時速が30km/h以上を維持できなくなってしまったら…そんな悲観的な不安はこの瞬間に脳裏から消し去った。
世田谷B地区まではまだ距離はある。だが強力な向かい風の中、時速30km/h以上をキープしなければならない!
自分で蒔いた種は自分で刈らねばならないのだ!
起きるはずのなかった、“あり得ない”チャレンジが、今、幕を開けてしまった!
私はとにかく、風に向かってペダルを思い切り踏み込んだ!
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やっぱり終わらなくなっちゃった! 次回へ【続く】(ゴメンンサイ!)
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★シーン2:多摩川沿いの道[登戸~世田谷B地区]
あの日の“追い風超特急”体験をしてから、私は多摩川沿いの道を走ることが好きになった。
もちろんあの日並みの追い風はそれ以来経験していないが、この道ではうまくすると結構なペースで走ることができる…そんな味をしめてしまったからか、サイクリングロードは通らずに脇の車道を通ることが多くなった。
この日、私は稲城方面へと例のSFD(LSDではなく、短く速いトレーニング!)で走りに行き、そこから自宅へと戻る途中だった。
時刻はもう午後7時過ぎ。
あたりは完全に暗くなっていた。
私は例によって多摩川サイクリングロード脇の車道----そう車道の方だ----を快調に飛ばしていた。
快調とは言っても、スピード的にはあの日のようなわけにはいかない。時速30km/h台というロードバイクとしては特に驚きはしない程度のスピードで道路の左隅を走る。
やはりクルマの方が速い!
あたりまえだ。驚くことではない。彼らは自転車に比べると走ることに掛けているコストが違う。クルマによっては5km走るごとに150円分のガソリン代を使い、しかも減価償却費用や消耗品費用、さらには税金さえ払っているのだ。
その分彼らにしてみれば、必要にして充分…いや必要以上のパワーを得ていることはまさに当然の権利。本来はクルマの方が速くあるべきなのだ…ただ、多くの場合、東京都内ではほとんどその能力をフルに発揮するなんてことはできないけど…。
話はちょっと逸れた。
いずれにしろ、今日のピナレロ君は全く普通の調子だった。特に驚くべきことは何もない。
小型トラックが横を追い抜いて行く。
私はなるべく道路の左側に寄り、小型トラックに道を空けるようちょっとした配慮をしながら走る。一部の無法自転車乗りとは違う…マナーの良さを自負するロードバイク乗りなら当然のことだ。
続いて高級乗用車が横を通り過ぎる。彼らとしてもそれほどスピードを出しているわけではない、時速50km/h前後だろうか…。だがさすがに速度差が15km/h以上あってはロードバイクも単なる“邪魔者”に見えるのだろう、ちょっと面倒くさそうに反対車線にちょっとはみ出しながらピナレロ君を抜いて行く。
そんな状況がしばらく続いたろうか。
ふと気が付くと、前方で渋滞が起きている。
登戸を過ぎて数キロのあたりだろうか、さっき抜いて行った高級乗用車が前方に見える。
やっぱり追いついちゃった…結局自転車の方が速かったりするんだよな、コストを掛けてなくても…。
そんなことを考えながら、クルマ達の“集団”の最後尾に付く。
クルマ達の“集団”はノロノロと進むが、やがて完全に停止してしまう。
どうやら信号待ちらしい。
私は乗用車やトラックの左の隙間をすり抜けながらゆっくりと信号に近づく。
あ、これが交通をブロックしてたんだな…。
クルマ達の“集団”の先頭に停止していたのは、大きな清掃車だった。
街でもときどき見かけることのある、イエローにペイントされた大型清掃車。勇ましいディーゼルエンジンの唸りを上げるくせに、その排気音に見合ったスピードが全然出ていない…そんな印象の大型特殊車両だ。
信号が青になる。
私は大型清掃車の前にまで出ることはできなかった。結果として大型清掃車のすぐ後ろを付いて行く。
直後だと前方が見えないから危険だ。だからちょっとナナメ後ろを走る。
大型清掃車は大体時速30km/hほどで走る。エンジンは唸っているが、やはりあまりスピードは出ない。どうやらこれがこの特殊車両のここでの巡航速度のようだ。
後方のクルマ達もすぐ後ろを付いて来る。車間距離があまりない。
対向車が断続的に通るため、追い越しは結構難しそうだ。クルマのドライバー達はきっとイライラモードのはず…。
だが、この状況は自転車乗りである私にとって、決して悪い状況でないことにすぐに気付いた。
ラクなのだ。
清掃車の速度は時速30km/hちょうどくらいというまさに“自転車並み”のスピードで走る。しかも大型車両ゆえ防風効果は抜群だ。
だから足に伝わって来る感触では時速20km/h台の前半で走っているような感じ…。
あの追い風超特急のときもそれほど苦しくなく高速走行ができたけど、あれは結構足を使っての高速巡航だった。だが、今回のこれは遥かにラクチンだ。
なにしろすぐ前方を走るのは超強力ドラフティング効果のある大型特殊車両。追い風…というよりも全く無風…といった感じ。空気抵抗がないとこんなにも楽なのか…と、空気の力の偉大さをあらためて逆説的に感じることさえできる…そんな状況だった。
「これはいい!」
私はそのまましばらく“大型風よけ車両”の後ろで走り続けた。清掃車はまさに私のために速度を落として走ってくれているような状態だ。
速度は非常に安定している。きっちり時速30km/hをキープしている。速度の安定性も申し分ない。
だが、人間、好ましい状況で何を望むか…といえば、“さらに好ましい状況”ということになってしまう。
「もうちょっと速くてもいいのに…」
贅沢なことに、私はさらなる“幸福”を望みはじめた。な、なんと恐れ多い…
まだまだ足には全然余裕がある。
このままあと5km/hスピードが上がったからといって、特に問題となるようなことはない。いや、この風よけ効果があれば、あと10km/hスピードが上がったって全然平気!
本当にそう思えたのだ。
さらに、そのままの状況は続く。後方のクルマ達の中から1~2台、反対車線へ出て強引に追い越しをする者もいる。だが私には彼らのような“コストのかかった”パワーはない。いくらちょっと遅いからといって、時速30km/hほどで巡航する清掃車を追い越すのはちょっと難しい。
ま、いいか…
さらにラクチン走りは続く。
今にして思えば、私には確かにもうひとつの選択肢はあった。
このまま清掃車の後を付いて世田谷B地区まで走り続けるという…。
だが、持って生まれた“贅沢さ”ゆえなのか、それとも、持って生まれた“チャレンジスピリットの多さ”ゆえなのか、いずれにしろ、私はその選択肢を選ぶことをしなかった。
そう、あまりのラクチンさに多少退屈していた私は、信号の関係で速度が一時的に落ちた“大型風よけ車両”を一気に抜き去ってしまったのだ!
速度的には全く問題ないはずだった…
私は前傾姿勢を強めると、ケイデンスを上げる!
スピードメーターは、時速35km/hを示す。
さらに速度は上がるはず!
私はそう思って、足に力を込める。
だが、速度が上がらない!
えっ?
何故?
そう、いつの間にか、“大型風よけ車両”の前では向かい風が吹いていたのだ!大きな“動く遮蔽物”に守られていた私にはそのことが伝わってこなかったのだ!
盛り上がった土手があるがゆえに、道路に沿って一方向の風が吹きやすい川沿いの道。前回は強力な味方となってくれた“偉大な空気の力”が、今回はまさに正反対の方向から自分へと向かって来る。
空気の壁だ。ほんの20分前よりかなり強い。無視できない強力な向かい風だ!
私は決断を誤ったことに気付いた…だがもうすでにサイは投げられた!!
自転車のくせに、いや、自転車の分際でエンジン付きの車両を多少強引に追い越してしまった!
もしも、万が一、向かい風で失速して、後方の大型清掃車をブロックするようなことになってしまっては、“マナーの良いロードバイク乗り”として申し訳が立たないじゃないか!!!
しかも加速力が自転車並みの清掃車では、対向車のタイミングを見計らって自転車を追い抜くことさえできないに違いない!
私にはもう選択肢は残されていなかった。
全力で風に挑むしかない! 清掃車に迷惑をかけるわけにはいかない!!!
万が一にも時速が30km/h以上を維持できなくなってしまったら…そんな悲観的な不安はこの瞬間に脳裏から消し去った。
世田谷B地区まではまだ距離はある。だが強力な向かい風の中、時速30km/h以上をキープしなければならない!
自分で蒔いた種は自分で刈らねばならないのだ!
起きるはずのなかった、“あり得ない”チャレンジが、今、幕を開けてしまった!
私はとにかく、風に向かってペダルを思い切り踏み込んだ!
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やっぱり終わらなくなっちゃった! 次回へ【続く】(ゴメンンサイ!)
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