<土曜夜の散歩>
3.2km, 4812歩、7階分。
先日休業していたファミレスもパチンコ屋も再開。ファミレスは夕食時ということもあり、駐車していた車は多かったが、パチンコ屋の駐車場はガラガラ。
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『世紀の空売り』をこのところ読んでいる。これもリーマンショックを扱った本だが、経済学者や渦中の財政官僚が書いた本でなく、かつての偽物トレーダー(本人が自嘲的にそう言うから本当なのだろう)が書いた本なので、内容そのものに余り期待していなかった。ところが1/3ほど読んだ段階で、非常に判り易く、かつ面白い本であることが判明した。とりわけ高く評価したいのは、以前から不思議に思っていたことの謎が解けたことだ。
それは当時の債券市場のリスク算定を何故、金融工学の専門家であるはずのトレーダーが <計算間違い> をしでかしたのかという疑問。
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これは、発癌研究をやっていた者からすれば <馬鹿げたリスク算定> だと思っていたからだ*。つまり個別の倒産や債務不履行が起こる確率を何故、独立の事象として計算し、かつリスク分散が可能だと考えたのか、全く理解出来なかった。今回のコロナ禍のように同時に各種の企業が業績不振や倒産に陥る可能性があるからだ。
* 複数の発癌遺伝子上の多重変異の出現頻度は、先に起こった変異がその後の変異頻度に影響を与えることを想定することで『ヒトの一生の間には癌は発生しない筈の癌が発生することを説明できる』 例えば、3個の遺伝子変異は独立事象ならば10^-6 x 10^-6 x 10^-6 =10^-18だが、最初の変異がその後の変異頻度を1,000倍あげるならば10^-6 x 10^-3 x 10^-3 =10^-12となり、100万倍に頻度を上げる。注)遺伝子上の変異頻度は10^-6くらいと実験的に求められている。
ところがこの本のなかで、トレーダーは計算間違いをしたわけではなく、単に<労なく>大量の債券を生み出して、それを売り、その歩合で大儲けができることに気がつき、それを実行したにすぎないことが判った。とりわけ同じ債券を何回も複製して売れることが魅力的だった。
例を挙げて考えるのが判りやすい。一束1,000件のサブプライム・ローンの債券を売るにしても、例えば住宅ローン1,000件を成立させなければならない。1,000人の貸し手と1,000人の売り手を探して物件を1,000件成立させないといけない。だけど一旦、すでに存在する「1個のローン束=1,000件のローン集合」を様々に組み換え直し、切り分けて、例えば10個の「幻の塔=ローンの束」にすれば、同じ案件(1,000件のローン集合)で手数料が10倍になる。これを使わない手はないではないか! 実に判りやすい! 成る程と思った。 これも間違いなく、新たな「お勧めの1冊」
『危機と決断』下巻12
2009年には住宅保有者の 1/4は家の時価価格より多いローンを抱えたという。こうした状況ではローンを払おうというインセンティブは働かない。事実、差し押さえ件数は2008年170万件、2009年210万件、2010年に180万件になる。p184
第19章の「量的緩和」にはいる。バーナンキは当時、テレビのインタビューを積極的にうけるようにした。それは彼曰く、『いまは非常時ですから、私にとって、これは米国に直接話しかけることのできる好機なのです』と答えた。p189 それは <市場と大衆が私たちの考え方を理解してくれたなら、金融政策はもっと効果的なものとなるだろう>との信念からだった。p190
こうした態度が非常時には大切なことで、現在のコロナ危機にも求められることだ。たとえ反対者がいたとしても、自信をもって自分の考えや方針、そして予測を語ることが出る政治家や官僚がいたら国民の多くは(反対でも)『それならば任せてみよう』という気になる物だ。残念ながら日本の政治家や官僚は彼のように専門家ではない。自信をもって語りかける内容も自信もない。これが大きな違いだろう。
短期金利がゼロになった後の金融政策についてのところで数千億ドルもの米国国債を買い取った理由として、その結果
国債の利回りが下がる>他の金利も下がる=社債についても低い利回りを受けいれる>買い取りで国債の供給量が減れば投資家は株式などの他の資産の移行を余儀なくされる>そうした資産の価値が上がる。という三段論法みたいだ。p193
著者のバニー・サンダース上院議員評は以下のようなものだ。
『(彼は)世界は大企業と金持ちによる巨大な陰謀と思っている(ような人物)』
それに対し著者は大企業と金持ちは大きな権力を持っていることは認めつつも<現実世界では悪いことは大抵無知や無能、不運ゆえに起こる>とした。p212
またバーナンキの2期目の承認(オバマ大統領の指名に対する)を上院で求められたとき反対票を投じた議員のなかに後からバーナンキに電話し謝罪したのち、『まあ、野蛮人どもに赤身の肉を投げてやらねばならぬこともあるのさ』と答えた議員がいたことを衝撃的と表現している。おそらくこうした国家の重大な経済政策に対して個人的判断よりも政治的判断を優先したことに驚きと憤りを感じたのだろう。もちろんそうしたことは何も本の中では語られていないが、気持ちは判る。
同じような点を今の国会答弁でも感じる。明らかに難癖としか言えないような批判しかできない野党議員がいることは事実だ。それも、ま、それぞれの立場を演じているわけだが、それに対し一国の宰相=安部氏が本気でムキになるのは更に嘆かわしい。どちらもどちらというところ。
少し先走るが:最後の「謝辞」のところを拾い読みしてみた。それによると、この本は彼自身の記録や記憶の他に元AP通信記者だった人物がバーナンキの任期中公式見解などの準備をしてくれたFRBの広報局のデーブ・スキッドモアなる人物がFRBから1年の休暇をとり助けてくれたみたいだ。p396 そうだろうな~ と思ったそうでないとこれまで詳細な記録は取れないはず。やはりこうした記録を残すことは将来に備えて価値ある作業であることは公式にも認められていることのようだ。
またこの本の情報元として参考文献は以下のサイトから、オンライン(のみ)で参考にできるみたいだ。p406
www.couragetoactbook.com/