「目的」の明確化 & 『サピエンス異変』 | Hiroshiのブログ

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<『お勧めの一冊』から食パンの袋>
このところ『転ばぬ先の経済学』を読み続けているが、まさしくお勧めの一冊。非常に判りやすく、多くの点で納得できる。ただし全て同意というわけではない。それでも何が「不同意」を引き起こしたのかが、判りやすい論理展開で明らかになる。実は意見の「同意」よりもこちら(=相違の原因の明確化)の方が重要だ。1つの例を示そう。

累進課税について著者は累進課税では均一課税よりも国に納められる税金の額が低くなるとしている。つまり著者の最大の目的は「どの方法が沢山の税金が集められるか」という目標からの結論である。しかし、累進課税の目的は「税金の額を最大化する」ことではなく「格差解消」とするなら、違った結論が出るはず。つまり著者自身の主張そのものである「目的」の明確化で「最善の方策」は異なってくるというだ。

同様なことにプラスチックのリサイクルの問題がある。以前、ある人がリサイクルした場合の方がコストがかかるので燃やした方が良いという議論が出た。これも「コスト」を最大の目的とすればそのような結論が出るだろう。しかし「環境負荷を減らす」ことを目的とすれば別の結果が出るということだ。

それで思い出したことがある。現在、スーパーやコンビニでのプラスチック袋が有料化した。当初、

『袋はゴミ袋に流用しているので無駄に燃やしているわけではないのに、別にわざわざゴミ袋を買わないといけない…』

と内心不満に思っていたが、そのうちゴミ袋用に毎日食べる食パンの包装を使えばいいことに気がついた。これまでそのまま可燃ゴミとして出していたものが有効利用できたわけ。今、4つある全てのゴミ箱全てで活躍している♪

 

行動心理学で「慣性」が話題になっていた。人はこれまで通りに行われ得ることについては改善行動をしないどころか、思考実験すらしない場合が多いということだ。目的(=減プラスチック>環境に優しく)が明確化するとことで出口が見えてくるということだ。



『サピエンス異変』
ヴァイバー・クリガン=リード著、飛鳥新社、2018年初版。
第一章を読んだだけでの印象としては「ファッショナブル・ナンセンス」といった感じがしないでもない。
https://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/5694/trackback

あの、ユヴァル・ノア・ハラリ著の『サピエンス全史』と同じ感想だ。非常に読みやすいし、流し読みできる感じだが、論理の筋道がわからず結論だけ書いてある、一番嫌いなタイプの本。
https://blue.ap.teacup.com/applet/salsa2001/5391/trackback

例えば、『2013年に発表された研究によれば二足歩行と手の器用さは独立して発達した』と著者は述べるが、その論文なりを引用しないので読者は検証の仕様がない。p36 勿論、素人がその論文をきちんと理解できるかはあるが、問題はそこではない。

あるいはホモサピエンスとあのデニソア人との遺伝子の違いは385ヌクレオチドで、ネアンデルタール人とは202ヌクレオチド*だと言うが、これはある特定の遺伝子のDNA配列での違いのはず。その遺伝子が書かれていないのは問題。p40 多分、ミトコンドリアのDNAではないか? 但し、もう少し読まないと最終的な判断ができないことはこれまで沢山経験しているので、もう少し読み進めていくつもりだ。

*ヒトとチンパンジーとは1,400ヌクレオチド違うらしい。

著者は英国ケント大学の准教授で専門は環境人文学と19世紀英文学だとか、学生に人気の名物教授とのことだが、博学なので教えるのは上手いのだろう。

冒頭プロローグで、現代を地質年代としてなんと呼ぶかが話題になる。一般には「完新世」だが、「人新世=アントロポセン」という読み名もあるらしい。前半のanthroposはギリシャ語で「人類」、後半のkainosは「新しい」を意味するらしい。人類の活動により地球上の自然が大きく変貌したという意味においては、それなりの理由は分かる。p14

人類の祖先としてむかし学校では「アウストラノピテクス」と習った記憶がある。現在では2001年に中央アフリカのチャドで発見された「サヘラントロプス」になつたらしい。これは670万年前に遡る頭骸骨の化石による。p24 

ところで化石としては足の化石はほとんど出土しないらしい。確かに化石として頭骸骨と大腿骨は見るが足指の骨は見たことがない。これは食べられやすく、かつ足先の部分の小骨の中にある骨髄は栄養豊富なので捕食者に最初に食べられる部位だからだそうだ。p24  

これが何故、問題かというと、足先の骨がないと「どのように移動したか?」の情報が分からないからだと。その点、あの「ルーシー」は、アウストラノピテクスに属する人体化石は骨格の40%出土したらしい。骨格は左右対象なので、これでほぼ完全な骨格を復元できたらしい。成る程と思う。

<データーベースとして>
二足歩行では太陽光の当たる面積が四足の動物よりも30%程度少ない。その上、汗腺が発達しているので体を冷却する機能は非常に優れているらしい。それゆえ持久力に優れているとか。なるほどと思う。p39