私は25歳の時にふと思った事がある。
「ケガせずに最大限に身体能力を引き出す事は不可能なのか?」と。
いろいろ研究した。
具体的には、
体を動かすのは「体幹内操法」のコンセプトを応用した。
筋肉を動かすのではなく骨を動かす事で体の負担を減らし、
マインドフルネスによって内部を観察し、
余分な力みが残っている筋肉に脱力を指示、
脱力を覚えた事で筋肉への余分な負担は軽減、及び関節の連動がよりスムーズになった。
お蔭で最小限の力で、最大限の動きを見せる事が可能となった。
技の習得の際、
可能な限りゆっくり動きながら無駄な部分を削り、
動きを理解したのちは脱力した状態で繰り返す。
体が無意識な状態でも動きを完璧に動くようになった時
(これが自然の状態、プログラム完了の合図)
ようやく少しずつ力を加え、
体に負担をかけずに最大限の力を引き出す事が出来るようになった。
そうする事で技習得時によるケガを回避した。
疲労時の体には、
マインドフルネスにより脱力し、
ゆるんだ筋肉に対し柔軟やマッサージ、
時には可動範囲の真ん中30%~70%の範囲内でゆっくりと関節を回し、
老廃物を流す作業をする。
筋肉を伸ばす際は、伸ばした状態を維持し、
腹式呼吸をする。すると呼吸によって筋肉が自ら伸び縮みし、
ゆっくり筋肉がほぐれていく。
そうして体をケアし、疲労を次の日の残す事を抑え、
バトル後の疲労回復に努めた。
逆に疲労時に瞬発的なパワーを出さないといけない時は、
脱力とは逆のやり方で呼吸法を使った。
具体的には、筋肉を引き締めてから腹式呼吸で息を吐く、
すると筋肉は段々と締まっていく、
この時にしまっていくのは外側の筋肉よりも
インナーマッスルが締まっていくのが分かる。
つまり良く言われるコアを活性化するにはこの方法でやる。
この方法は「インパルス」といい
脳が指示を出す時の電気信号の事をいう。
それを外部刺激で肉体を目覚めさせる方法、
一言で言えば気功の応用である。
逆に同じく脱力しながら息を吐けば、
全身のインナーマッスルが緩み、
固まった筋肉によって止められた血液が流れ、
疲労がたまりにくくなり、回復力がアップする。
また、息切れも呼吸法で回復できる。
はじめの一回目の呼吸はしんどいが、
ゆっくり吐き切るまで吐く。
二回目以降もゆっくり吸って、ゆっくり吐く。
無意識に体は早く吸ったり吐こうとしたりするが、
それでは実は体が疲れていなくても
脳が疲れていると思い込んでいるがために、
息切れを継続させてしまう。
ゆっくり息をしながら、
体を観察し、思った以上に疲弊していない事を認識したら、
今度は呼吸しながら脳に「大丈夫」と呼びかける。
すると驚くほどに、3呼吸で大体は通常の呼吸に戻る。
その差は歴然で、1分で回復するか、5分で回復するかの差である。
そのように、我々には子供の頃から必要のない習慣が身についているので、
それらのデータを更新する作業をするためにも、
身体を無意識に預けるのではなく、
常に観察し、データ更新をしていく必要がある。
バトル中、相手がムーブしている間に回復を図らないといけない、
そんな時に上記の知識が役に立つ。
お蔭で今までケガなくやってこれたし、
「体力の鬼」なんて呼ばれていたが、
実際は誰よりも省エネを研究し、
サボっていたにすぎない。
それは、少しでも長くダンスをしていくためだった。
だが、もうそれも限界に近くなったようだ。
練習をした訳でもなく、
日常生活をいつも通りに過ごしていっているだけなのに
両ひざが階段上りの際に痛みが走る、
腰も少しずつ弱くなり、
少しの踏ん張りにも耐えられず
簡単に痛みが走る。
両手の平は年始に自転車から転倒してから、
未だに手のひらは地面を満足につけれず、
チェアーをする時に激痛が走る。
首もずっと違和感が残り、
満足に夜も眠れない。
本当は少しずつでもいいから
パワーやアクロバットなどを頑張っていきたいのに、
これではフットワークすらままならない。
去年までは体の退化なんて微塵も感じなかった。
それどころか、二十代の時よりもはるかに体が動くし、
出来る事が多いので、このまま体は衰える事なく、
ずっと若さを保てると思っていた。
しかし、本当に一気に来たのだ。
もう「体力の鬼」はどこにもいない。
これまでしてきた努力は無駄だったのだろうか...
否。
俺は諦めない。
体が弱くなってきたのなら、
鍛えて強くするだけだ。
回復が遅いようなら、
プロテインでもシップでもなんでも使ってやる。
カッコ悪いパットだってハメてやるさ。
派手な動きで勝負が出来ないなら、
上手さと表現力で勝負してやる。
たかが36歳。
若くもないが、年取ったという程とってもいない。
無理をしなければまだまだダンスの探求は全然出来る年だ。
だから俺はこれまで通り、いつまでも踊り続けるさ。
ただ、ひとつ確かなのは
確実に体力は本当に落ちた。
さぁ、ここからのダンスの旅はどうなっていくのだろうか。
本当に人生は未知な冒険に満ちていて楽しみだ。
どんなクエストも攻略してみせるぜ!
ちぇりおー!(チェストー!)