第4室6話 リード線一本で人生を語る男たち。
第6話 リード線一本で人生を語る男たち。
~なぜ人は、数センチの線に夢を見るのか~
ある日、友人のオーディオルームを訪ねた時のことです。
EMT930。
McIntosh。
JBL4343。
申し分のないシステムです。
ところが、その友人は、ターンテーブルの前で腕を組み、真剣な顔をしています。
「どうしたんですか?」
と尋ねると、彼は静かにこう言いました。
「リード線を替えようかと思ってね。」
私は思わず笑ってしまいました。
リード線。
カートリッジとシェルを繋ぐ、ほんの数センチの線です。
しかし、彼は真剣でした。
銀線が良いか。銅線が良いか。古いオルトフォンが良いか。
いや、やはりWEの単線か。
まるで人生相談です。
そして、数時間後。
ようやく決まった一本を取り付け、静かに針を落としました。
すると彼は、目を閉じてこう言ったのです。「ああ、低音が少し前に出てきた。」
私は思いました。
普通の人には、きっと分からないだろう、と。しかし、同時にこうも思ったのです。
「なんて素敵な生き方なんだろう。」
たった数センチの線に心を砕く。数時間悩む。
そして、その違いに喜ぶ。
考えてみれば、人生も同じではないでしょうか。
大きな成功は、案外、小さな積み重ねでできています。
* 毎日の挨拶。
* 家族への一言。
* 本を一冊読むこと。
* 少しだけ人に優しくすること。
リード線一本。
ほんの数センチ。
しかし、その先には、「音楽。」が待っています。
そして、その音楽の先には、「人生。」
が待っているのです。だから、オーディオファンは細部を大切にします。
インシュレーター。
シェル。
フォノケーブル。
電源。
ラック。
そして、リード線。
それは、音にこだわっているのではありません。
「人生は、細部に宿る。」ことを知っているからです。
私は、リード線を交換する友人の横顔を見ながら思いました。
この人は幸せなんだろうな、と。70歳を過ぎても。数センチの線に夢を見られる。
それは、とても贅沢なことではないでしょうか。
リード線が教えてくれた七つのこと
1. 神は細部に宿る。
2. 小さな違いが、大きな違いを生む。
3. 人生は積み重ねでできている。
4. ときめきに大きさは関係ない。
5. 趣味は人を少年に戻す。
6. 細部にこだわる人は、人生にも丁寧である。
7. 何歳になっても夢を見ていい。
オーディオファンが愛する小さなもの
* リード線
* シェル
* フォノケーブル
* インシュレーター
* スタビライザー
* レコードブラシ
* 水平器
男たちの会話
「やっぱり銀線かな。」
「いや、WE単線の色気は捨て難い。」
「そのSPUなら、オルトフォン純正でしょう。」
「いや、そこが人生なんですよ。」
最後の一文
「リード線は、音を運んでいるのではない。」
「何歳になっても、ときめきを忘れない人々の夢を運んでいるのである。」
次回予告
第7話「音とは、その人の生き方である。」
~オーディオが最後に教えてくれたこと~
第2室 ロックの部屋 その7
第7話「人生には、ロックが必要だ。」
~何歳になっても、人は心にギターを持っている~
人は、何歳まで夢を見ていいのでしょうか。
20歳まででしょうか
40歳まででしょうか
それとも
定年を迎えたら、夢を見ることを卒業しなければならないのでしょうか。
私は、そうは思いません。
70年近く生きてきて
一つだけ、はっきり分かったことがあります。
それは 「人は、何歳になっても少年である。」
ということです。
少年は遠くの街に憧れます。
新しい世界を見たがります。
好きなことに夢中になります。
そして「いつか、こんな人生を生きてみたい。」と、目を輝かせます。
不思議なことにその少年は、70歳になっても心の中から消えません。
ビートルズを初めて聴いた日のこと。
友人とギターを抱えて歌った日のこと。
初めて買ったレコード。
深夜ラジオから流れてきた一曲。
あの頃の自分は。
今も、心のどこかで生きているのです。
人生には
時々、ロックが必要です。
「もう無理だ。」と思った時。
「歳だから。」と言い訳をしたくなった時。
「今さら遅い。」
と諦めそうになった時。
ロックは、こう言います。「本当にそうかい?」と
私は思いますロックとは若者の音楽ではありません。
ロックとは。 「まだ終わっていない。」と信じる人の音楽なのです。
エルヴィスは、自由を教えてくれました。
ビートルズは、夢を教えてくれました。
ピンク・フロイドは、人生を教えてくれました。
フレディは、最後まで生きることを教えてくれました。
そして彼らが最後に残したものは。
「人生を楽しめ。」という、とてもシンプルなメッセージだったのです。
もし人生を一本の映画だとするなら。
今、何幕目でしょうか。
まだ、エンドロールは流れていません。
まだ、ステージの灯りは消えていません。
だったらもう少しだけ。
好きなことをしてみてもいいではありませんか
私は最近、こう思います。
人生の最後に必要なのは。
大きな成功ではありません。
「面白かった。」
「よく生きた。」
「楽しかった。」
そう言って笑えることです。そしてその時、心の中では、きっとロックが流れているのです。
ロックが最後に教えてくれた七つのこと
1. 人は、何歳になっても夢を見ていい。
2. 少年は、心の中で生き続けている。
3. 人生に遅すぎることはない。
4. 好きなことは、最後まで大切にしていい。
5. 「まだ終わっていない」と思うことが大切である。
6. 人生は、思っているより短く、美しい。
7. 最後は、笑ってステージを降り
先生。
もし今「もう歳だから。」と思っているなら。
どうか、レコードに針を落としてみてください。
きっと20歳のあなたが、スピーカーの向こうからこう言うでしょう。
「何を言ってるんだ。」「まだ始まってもいないじゃないか。」と。
最後の一文
「人生には、ロックが必要だ。」
「何歳になっても、人は心に一本のギターを持っているのである。」**
第2室 ロックの部屋 終幕
自由を知り
奇跡を知り
哲学を知り
歓びを知り
自分らしく生きることを知る。
そして最後に 心の中の少年と再会する。
それが、ロックの部屋でした。
次の扉
第3室 オリジナル盤の部屋
「なぜ、人は一枚のレコードに人生を重ねるのか。」
音の文化館へ還る
第2室 ロックの部屋 その6
「クイーンと生きる歓び。」
~なぜ、フレディ・マーキュリーは今も歌い続けるのか~
1985年。
ロンドン、ウェンブリー・スタジアム。
7万人の観客。
そしてステージの中央に、一人の男が立っていました。
白いタンクトップ。
短く刈り込まれた髪。
片手には、マイクスタンド。
その男が一声発した瞬間。
7万人の心が、一つになりました。
「エーオ!」観客が応えます。
「エーオ!」あの瞬間を見て。
「ロックとは何か」が分かった気がしました。
ロックとは大音量でも、派手な演出でもありません。
「生きている!」と、全身で叫ぶことなのです。
フレディ・マーキュリーは、決して順風満帆な人生を送ったわけではありません。
自分の居場所を探し続けました。
愛に悩みました。
孤独とも向き合いました。
そして人生の最後には、大きな病とも闘いました。
しかし、彼は最後まで、歌うことをやめませんでした。
私は『The Show Must Go On』を聴くたびに、胸が締め付けられます。
"The show must go on..." 「ショーは続けなければならない。」
この曲を録音した時。
フレディは、すでに自分の命が長くないことを知っていました。
それでも彼は歌いました。
いや人生そのものを歌い切ったのです。
人は、いつか必ず終わりを迎えます。
若さも。
健康も。
時間も。
永遠ではありません。
だからこそフレディは、私たちにこう問いかけているように感じます。
「君は、本当に自分の人生を生きているかい?」と。
面白いことがあります。
フレディは、30年以上前にこの世を去りました。
しかし今も世界中の人々が、彼と一緒に歌っています。
『Bohemian Rhapsody』。
『We Are The Champions』。
『Don't Stop Me Now』。
人は亡くなっても、生き続けることができるのです。
誰かの心の中で誰かの思い出の中で。
歳を重ねるほど、私は思います。
人生に必要なのは長く生きることではなく。
「どれだけ、自分らしく生きたか。」
なのだと。
フレディは短い人生の中で、それを私たちに見せてくれました。
フレディが教えてくれた七つのこと
1. 人生は、思っているより短い。
2. 自分らしく生きることは、美しい。
3. 孤独を知る人ほど、人に優しくなれる。
4. 今日という日は、二度と戻らない。
5. 人生は、全力で楽しんでいい。
6. 最後の瞬間まで、歌い続けていい。
7. ショーは、最後まで続けなければならない。
もし今「もう歳だから。」
そう思っているなら。
ぜひ、『Don't Stop Me Now』を聴いてください。
きっと。
スピーカーの向こうから、フレディが笑いながらこう言うはずです。
「誰が止めるんだい?」「人生は、まだ終わっていないよ。」
最後の一文
「フレディ・マーキュリーは、歌を残したのではない。」
「人生を、最後の最後まで楽しみ尽くす姿を私たちに見せてくれたのである。」
次回予告
第6話「ロックは反抗ではない。」
~それは、“自分らしく生きる”という宣言である~




