メインストーリーの筋書きが明らかに

先ほど見ました、「どうする家康」の第47回「乱世の亡霊」。1614年(慶長19年)~1615年(慶長20年)、家康は満71~72歳になる年のお話です。

 

ここからはネタバレになりますので、まだ見ていない方はご注意ください。

番組紹介 | 大河ドラマ「どうする家康」 - NHK



なお、私は歴史ドラマは「ドラマとして面白ければいい」と考えています。歴史にあまり興味がない人が興味を持つきっかけになることが一つの重要な効果だと思います。なので、通説や異説と異なるストーリーであっても構わないと思っています。むしろ、説得力があって斬新な切り口で描かれた方が面白いと思っています。感想はあまり飾らずになるべく素直に書きますが、大河ドラマや『どうする家康』を貶めるつもりはまったくありません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<あらすじ>

大砲の効果で豊臣家は和議を受け入れた。秀頼は引き続き大坂に居続け、人質も無し。その代わり、大坂城の堀をすべて埋めるという条件で和議が成立。しかし、豊臣家が集めた牢人衆は納得できず、不穏な動きを続け京都に火を放った。徳川からの最後通達の使者として初と江が大坂に。ここに、茶々・初・江の三姉妹とその息子・娘である秀頼・千姫夫妻が一堂に会した。江は家康直筆の手紙を茶々に渡し、手紙を読んだ茶々は心を揺さぶられた。茶々は、秀頼自身の意思でどうするか決めなさいと託した結果、秀頼は「信長と秀吉の血を引く我こそが正しい天下人」といい、牢人衆を前にして徳川打倒の気炎を上げるのであった。

 

 

・明らかにされたメインストーリーの骨組み

最終回を目前にした今回で、長期に渡る大河ドラマ『どうする家康』のメインストーリーが茶々の妹である初・江の口から明らかにされました。

大坂の陣に至ったそもそものきっかけは、第4回「清須でどうする!」。今川を捨てて織田信長と同盟することを選んだ家康は、同盟の証としてお市の方との縁組を提案命令されますが、これは断固拒否するも今川打倒を誓いました。この時は、戦国乱世を生き延びるために非情な決断をしなければならなかった一方で、家康が守り続けた瀬名とその子たちへの想いが描かれましたが、この時にお市の方と結ばれなかったのが、そもそもの発端だった、という話です。

どうする家康 第4回 清須でどうする! | big5historyのブログ (ameblo.jp)

 

当時、私は「(家康とお市の方の縁組は)あったかもしれない話」としか感じませんでしたが、それを最後の大坂の陣まで引っ張る、というのは意外でしたね。お市の方が自害した第30回の内容で、この流れは予想できていましたが

どうする家康 第30回 新たなる覇者 | big5historyのブログ (ameblo.jp)

 

この筋書きはなかなか面白かったです。あり得ない話でもないので、説得力もあります。

 

 

・臣従して生き延びるよりも、戦うことを選んだ秀頼

家康の手紙を読んだ茶々は、かつて母・お市の方が自分たちを生き延びさせたことを思い出させ、茶々の気持ちを変えました。この時、茶々は「(自分ではなく)秀頼に意思決定を託せば、戦わない」と言うだろう、と考えていたのが表情から読み取れます。裏を返せば、それまでは茶々が秀頼の代理人であるかのように豊臣家の意思決定をしていた、ということが想像できます。まさに、豊臣家の真の当主は茶々であり、秀頼は飾りに過ぎなかった、ということでしょう。

しかし、自分の期待を裏切った家康を反面教師とし、自分が描く理想の天下人として育てた秀頼が望んだことは、豊臣家の天下を取り戻すことでした。これは、戦乱の世が背景にあったとはいえ、茶々自身のこれまでの選択と行動の結果といえます。

豊臣秀頼は1615年で満22歳ですので、かなり若いです。若いし、秀吉の子なので世間知らずだったことでしょう。家康憎し、豊臣家を再び天下人に、という茶々に育てられた秀頼が、戦いを決断したことは不自然ではありません。

 

 

・女性と人類の歴史

『どうする家康』のメインストーリーに大きな影響を与えているのは、ほぼ女性です。瀬名、お市の方、茶々、於愛の方、千姫と、歴史史料では脇役に回されがちな戦国時代末期の女性たちが活き活きと描かれているのは、とても良かったと思います。有名な歴史人物の大半は男性です、それは「女性は男性に従うだけの存在だった」ことを意味するわけではありません。表に出て目立たないだけで、女性の言動や性格が歴史の流れに大きな影響を与えていることは、古今東西共通の原理だと思います。そういう観点からすると、『どうする家康』はこれまでの男性中心の史料準拠史観ではなく、女性の活躍に注目して新しい話を構成した現代的な物語、ということができると思います。瀬名の策など、あまりに現実離れた話もありましたが、メインストーリーに関してはとても興味深い内容でした。

 

さて、『どうする家康』も次回で最終回。おそらく、大坂冬の陣と主だった登場人物の最期が描かれ、ラストシーンはこれまでの主要登場人物との回想 or あの世での再会、という形になると思います。最後まで劇的で暗い話だった昨年の『鎌倉殿の13人』とは異なり、最後はハッピーエンドになりそうです。

個人的には、いつからかほとんど登場しなくなった服部半蔵に再登場してほしいです。