以前にコレステロールが運動(代謝)でプロビタミンDに変化し、プロビタミンDが日光浴でビタミンDに変化すると言う話をしましたが、慈恵医大から日本人の殆んどはビタミンDが不足していて、ビタミンDが不足していると陽性癌の5年生存率が88%から62%に落ちる(再発・死亡リスクは3倍に増える)と発表されました。熱中症になるので外に出ない様にニュースで騒いでいますが、そんな事を言っていると癌で死んでしまいます。



ハザード比 = 0.33; 95%CI, 0.16-0.65; P=0.001 とビタミンDが再発・死亡リスクをおよそ 3 分の 1 にまで抑制していました。

累積ハザード関数 (cumulative hazard function)とは、ある時点tjを引数とし、ある個人iが観測開始時点(t0)からある時点tjまでに蓄積したリスクの総和を返す、関数である。H(tij) = ∫ h(tij) dt

 報道発表資料

2023 年 6 月 5 日 東京慈恵会医科大学

98%の日本人が「ビタミン D 不足」に該当

国内初の基準値を公表、植物由来のビタミン D はほぼ検出されず

東京慈恵会医科大学 臨床検査医学講座 越智小枝教授・整形外科学講座 斎藤 充教授らは、島津製作所と新開発の液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC-MS/MS)システムを使用して、2019 年 4 月から 2020 年 3 月までの期間に東京都内で健康診断を受けた 5,518 人を対象に調査を実施し、98%がビタミン D 不足に該当していたことを明らかにし ました。

ビタミン D は骨粗しょう症だけでなく感染症や心血管疾患や神経筋疾患、自己免疫疾患発症にも関連すると言われており、COVID-19 の重症化因子としても注目される重要な栄養素です。世界的にもビタミン D 不足・充足状態に対する関心が高まる一方で、この栄養素は必要基準範囲が完全に確立されていないことが課題となっていました。

本研究の成果は 4 月 23 日に The Journal of Nutrition 誌 Volume 153, Issue 4, p1253 に掲 載されました。

ポイント:

 新開発、完全自動化の液体クロマトグラフィー・質量分析法(LC-MS/MS)システムを使用し、日本で初めて血清中 25-ヒドロキシビタミン D(25(OH)D の基準濃度を計算しました。

 算出した結果は、男性 7–30 ng/mL、女性 5–27 ng/mL(全体 6–29 ng/mL)と、健常人の 98%が日本代謝内分泌学会・日本整形外科学会が提唱するビタミン D 基準濃度 (<30 ng/mL)に達していないことが判明しました。

 測定されたビタミン D のほとんどが動物あるいは日光由来のビタミン D3 であり、シイタケなどの植物由来のビタミン D2はほぼ検出されませんでした。また、年齢が低いほどビタミン D 不足の割合が高くなりました。

今回の研究結果から、日本人の食生活の変化によって、現代社会では特に植物由来のビタミン D が摂取されなくなったことが推察されます。

今後の超高齢化社会へ向け、骨粗しょう症・骨折の予防につながるビタミン D の摂取はますます重要となっています。ビタミン D が不足している現状への早急な介入と共に、ビタミン D 不足を引き起こすその他の原因についても解析が必要です。


報道発表資料

2023年5月9日 東京慈恵会医科大学

ビタミン D サプリメントを摂取すると癌の死亡率は 12%減少する 国際共同研究による 10 万人のデータ解析で明らかに

東京慈恵会医科大学分子疫学研究部浦島充佳教授らは、ドイツの癌研究センター、アメリカのハーバード大学やラホヤアレルギー免疫研究所、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、フィンランド、オーストラリア、ニュージーランドなどとの国際共同研究により二重盲検ランダム化プ ラセボ比較試験に参加した 10 万人のデータをメタ解析し、ビタミン D サプリメントの連日内服により癌種に関係なく癌死亡率が 12%減少していたことを明らかにしました。本メタ解析には浦島教授らの実施したアマテラス試験も含まれます。

< ポイント >

 ビタミンDサプリメントの連日内服により癌種に関係なく癌死亡率が12%減少した 

 70歳以上の場合は癌死亡率が17%減少し、高齢者で特に有効だった

 癌の発症前から連日で内服していた場合は13%、発症後でも11%の癌死を予防した 

 連日の内服は有効だったが、月1回の大量内服では無効だった

本研究は funding of the systematic review by the charity foundation German Cancer Aid から資金援助を受けたものであり、成果は 3 月 31 日に Ageing Res Rev 誌に掲載されました。

東京慈恵会医科大学 分子疫学研究部 教授 浦島充佳のコメント 

世界では毎年二千万人近くが癌を発症し一千万人が癌で亡くなっています。近年では多くの癌治療薬も開発されつつありますが年間一千万円以上の高額な医療費がかかります。一方、ビタミン D サプリメントは安価かつ容易に入手でき、1日 2000IU(国際単位)の連日内服であれば副作用は報告されていません。また日光を浴びれば無料で体内のビタミン D 濃度を上げることも可能です。もし癌死亡を 12%減少できれば、理論上は年間 120 万人の命を救えます。

このような研究を国際共同研究として実施し得たことに誇りと喜びを感じます。しかし、現段階ではビタミン D サプリメントの摂取が有意に癌死を抑制すると言い切ることはできません。何故なら、全体では有意な結果を得たものの、私たちの実施したアマテラス試験を含めて 1つ1つの試験においては有意な結果を得られていないからです。そのため、ビタミン D サプリメント投与の有効性と安全性を1つの臨床試験で明らかにするべく 2022 年 1 月より第2 弾となるアマテラス 2 試験を開始しました。


https://ameblo.jp/bgfps870/entry-12696849416.html


液体クロマトグラフィータンデム質量分析装置Liquid Chromatograph-tandem Mass Spectrometer(LC-MS/MS)

島津製作所製 Prominence UFLC、AB SCIEX社製 QTrap®5500

装置名
  • 島津製作所製 Prominence HPLC
  • AB SCIEX社製 QTRAP®5500
装置の仕様
  • イオン化法:APCI及びESI
  • 質量範囲:50〜1250 Da

LC-MS/MSとは、液体クロマトグラフ(LC)により分離した分析対象成分を専用のインターフェース(イオン源)を介してイオン化し、生成するイオンを質量分析計(MS)で分離して特定の質量イオンを解離・フラグメント化させ、それらのイオンを質量分析計で検出する分析装置です。LC/MSと同様に分析対象は液体に溶解しイオン化するものであればほとんどの化合物が測定可能です。LC-MS/MS法はLC/MS法と異なり、特定の質量のみを選択し、フラグメント化することができるため、微量成分定量分析には欠かせない装置といえます。
本装置は特定の質量のみを選択し、フラグメント化することができるだけでなく、質量分析計はイオントラップ機能も有しており、定量だけでなく微量成分の構造解析にも有効です。