「ニューヨークストーリー~オペラに陶酔⑤」 | 「バックパッカーがH・Ⅰ・Sの役員になった奇跡」小さな会社の未来の創り方

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出来ない事はやらないことだとHIS創業者「澤田秀雄」氏から学んだ。ベンチャー魂と自ら経験した多くの失敗が成長の奇跡を創る。伝える事よりも伝わること!直ぐに実践したくなる、熱き魂に触れてください。

ニューヨークストーリー~オペラに陶酔⑤」 (2/15)


長い一日である。ウッドベリーコモン(アウトレット)からホテルに戻り、シャツを着てネクタイを締める。その上にジャケットを羽織る。まぁ、大丈夫かなぁ?鏡を見ながら思い出し笑いをしてしまった。

 2年前のイタリアの旅の時、帰国時に突然の大雪、飛行機が飛ばなくなり、ミラノにもう一泊する事になった。その時の旅の同行者は画廊経営のM氏と今回の旅の同行者でもあるT社長である。

 T社長は根っからの芸術嗜好である。当然オペラも大好きなのである。普通ミラノのスカラ座のチケットはなかなか手に入るものではない。その日は大雪、街中の交通機関が乱れていた。僕が一人でホテルで休憩している時、出かけていたM氏とT社長から電話があった。「大野さんスカラ座の今日のチケットが入手出来たので行きましょう。」と弾んだ声のT社長。「良く取れましたね。」/「大雪でキャンセルが出たんですよ。私が招待しますので行きましょう。」/「えっ!!本当ですか。」と訊くとオーケストラの真ん中の良い席である。天井桟敷でしか見た事がない僕にとっては夢のような席である。・・・しかし、ここで問題が、オーケストラの席で見る人たちは、男性はタキシード、女性はロングドレスと相場が決まっている。僕とM氏は革ジャンにマフラーという防寒スタイルである。当然、ジャケットもネクタイもない。、。「あのぉ、洋服が・・・」/「大丈夫ですよ。並んでチケット買っている人は皆、ジーンズにセーター姿ばかりですよ。」、。、大雪なのでセレブな方々は今日は来ないのだろうか?と思ってしまった。

 雪の中、ホテルから徒歩でスカラ座へ、T社長はジャケットにネクタイ姿。{うぅん、いつの間に?}・・・見るとジーパン姿にセーターのラフな人々は横の入り口に入っていっている。、。大雪の中、次から次に、チェーンを巻いた高級車が正面に停まると、正装をした紳士、淑女が吸い込まれるように館内へ、僕たちも同じ入り口である。中に入って驚いた。まるで中性のヨーロッパの貴族の舞踊会である。

 僕とM氏はコートを脱ぐのも恥ずかしく、ヒタスラ館内が暗くなるのを待った。幕間にトイレに行くのも席を立ち上がるのも恥ずかしかった。・・・大雪なんて紳士、淑女には関係なかったのだ。・・・その時の事を思い出したのだ。というわけで、今回は僕も正装まではいかないけど盛装したのだ。



 タクシーでリンカーンセンターにあるメトロポリタンオペラへ。今回の演目は”オセロ/OTELLO”シェイクスピアの有名な戯曲「オセロ」を、イタリアの有名なオペラ作曲家・ヴェルディがオペラ化した作品である。

 幕間で食べる、食事を予約して席に着く、周りを見渡すと割りとラフな姿もチラホラと、「うぅん、国民性の違いなのか?」 館内が暗くなり、ピットからオーケストラの奏でる音色が響いてきた。幕が静かに上る・・・今からは異次元世界に入る事になる。




 3幕目が終わり、2Fのレストランへ、「良かった!」。ここは盛装した紳士、淑女が興奮を抑えながらも熱く語り合い、静かに食事をしている場所だった。・・・テーブルの上には予約時にオーダーした食事が並んでいる。デザートも食後のコーヒーも、   

そうなんだ、短い幕間の時間に食べれるようにセットされているのだ。今回は顰蹙を買わずに済みそうだ。・・・全ての幕が閉じ、カーテンコールが鳴り響く。ステージ上には出演者が次から次に訪れ、拍手を受け、戻っていく。拍手の音が最高潮に達した時、主役のオセロ役と妻役(デズデーモナ)が中央に現れると、拍手喝采である。



 

 僕たちは静かに会場を後にした。風の冷たさも興奮を程よく冷ましてくれる。こんな時は歩いて戻る事にした、ゆっくりとホテルまで。今日の余韻を少しでも長く感じていたいのだ。・・・ニューヨークの街はもう少しで日付が変わるはずだ。