「豊かな気持ち」
イタリアに遊学しているときに、様々な国の人々と交流を持った。アフリカの人、中東の人、南米の人、ヨーロッパの人、アメリカの人達だ。
紛争だったり、旱魃だったりと常に自然災害に苦しんでいて経済的に恵まれない国の人々とは特に仲良くなった。その中の一人にアフリカのナイジェリア出身のサミエル君がいた。
僕がまだ、言葉も上手く話さないとき、彼は常に僕に優しく接してくれた。国からの仕送りもなく、バイトで稼いだなけなしの金で食事をご馳走してくれた。 黄色と黒の肌の交流である。 フィレンツェの大聖堂「ドゥーモ」の正面入り口に階段がある。そこに座ってよく二人で将来の事を話した。 彼の口の中からは澱みなく言葉が溢れでてきた。 「エンジニアになって国に帰り、発展を促す仕事をするんだ。」と。目をきらきら輝かせて話していた。 その時の僕は言葉を勉強するのがやっとで自分の未来について語る言葉さえなかった。「サム/サミエルは凄いな。いつも国の事を考えているんだね!」 「僕なんか、まだ、自分の事も分からないよ」・・・「だって、自分の事を考えるためには国の発展が大事なんだよ。日本と違って何もインフラが整っていないんだ。」・・・貧しい留学生活、学校とバイトの中で黄色の僕に沢山の教えを示してくれたサム、今、彼が何を何処でしているのかは分からない。 10年に一回は会う約束は一度も守られていない。 僕は彼から本当の豊かさを教わった。お金がなくても、国が貧しくても、肌の色が黒く差別されていた彼から、本当の豊かさを教わった。将来への夢を語る時の目の輝き、僕が熱が出たときベットの傍で頭を濡れタオルで一晩中、冷やしてくれたサム、その時の彼の目は「大丈夫だよ、僕がいるから、すぐ治るよ」と優しく語りかけてくれていた。
いつの間にか消えてしまったサム、元気でいてくれてるよね。 今、日本は国の元役人が収賄容疑で逮捕され人々の税金を使って防衛費を好き勝手に意のままに使っていたんだよ。 彼らは権力やお金によって豊かさを手に入れたと勘違いしてたんだ。 君は自分の事より、友達の事、国家の事を考えていたね。 貧しくても本当に豊かだったね。 君の心は大きな豊かさで溢れていたよ。 正直、僕もその事を時々忘れてしまう。 サム、また君の輝く目で語りかけて欲しい。「イサシ! 未来は面白い、今から創る事が出来るんだ!!」 そうだね、未来を創る事が出来るだね。 豊かさは続くんだね。 「サム、忘れないよ!!」
