大神神社(栃木県) | yampoo 御朱印集めの旅 

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下野国の一之宮としては、宇都宮の二荒山神社と日光にも同じ名前の二荒山神社のふたつがあって、お互い「一之宮」の座を譲らず論争があるようですが、栃木市に鎮座されている大神(おおみわ)神社は下野国の惣社として位置付けされています。

ということは、現在の栃木市に下野国の国府が置かれていたことになります。

 

県名と県庁所在地名が違う例は結構ありますが、栃木県もそのひとつで、宇都宮市が県庁所在地になります。しかし、廃藩置県が行われた明治時代の初期においては、栃木県と宇都宮県の両方が存在していました。当時は栃木県の県庁所在地は栃木市で、同様に宇都宮県の県庁所在地は宇都宮市だったらしく、後に栃木県と宇都宮県が合併されたときに県名は栃木県とし、県庁所在地は宇都宮市となったようです。

 

「栃木」という名の由来は諸説あるのですが、同じ栃木市に鎮座されている神明宮の社殿の千木が遠くからだと10本に見えたことから、「十千木(とおちぎ)」と呼ばれ、それが「とちぎ」転じたという説と、この地にはもともと「トチノキ」が多く生えていた説などがあります。神明宮はさほど古い神社ではないので、「栃木」という地名が古代から使われていたのであれば、私は後者の説を支持します。

 

ところで、アメリカ合衆国のそれぞれの州にはニックネームが付いています。たとえば、アイオワ州は「Hawk Eye ホークアイ(鷹の目)」、ケンタッキー州は「Blue Grass ブルーグラス(青い芝)」といった具合です。そして中西部のオハイオ州には「Buckeye(英語の発音はバッカイ)」というニックネームが付いており、Buckeyeとは「トチノキ」のことを指しており、そういう点では栃木県とオハイオ州は姉妹州(県?)になってもおかしくはないと思います。少なくとも、栃木県の県庁所在地である宇都宮市とオハイオ州の州都であるコロンバス市は姉妹都市になれるのではないでしょうか?

 

大神神社と言えば、日本最古の神社と考えられている奈良県の大神神社の方が有名ですが、同じ名の神社が何故、下野国にあるのか最初は不思議に感じました。

Wikipediaによると、第10代崇神天皇の時代に皇子である豊城入彦命が東国平定の折に戦勝と人心平安を祈願するために、当時の都であった大和国の大神神社をこの地に勧請したのが始まりだとありました。ですので、御祭神はやはり大物主命ということになります。

 

栃木市の大神神社を語るうえでのキーワードは「室の八嶋」です。

「室の八嶋」というのは歌枕のひとつで、つまり和歌の題材とされる名所旧跡のことです。

室八嶋は下野国にあるとされ、古来より歌人の間では超有名で、特に「煙」をモチーフにした歌に「室の八嶋」が登場します。「煙」は一般的な火による煙や、あるいは水蒸気といった物理的なものの他に、「恋心」など感情的な意味合いもあったようです。

 

大神神社の境内のなかに「室八嶋」という一角があります。

池のなかに八つの小島があり、それぞれに鹿島神社や香取神社など八つの境内社が祀られています。

江戸時代に芭蕉も大神神社を訪れ、「糸遊に 結びつきたる 煙かな」という句を詠んでいます。

しかしながら、どう考えても、古代から有名だった歌枕であるところの「室八嶋」が大神神社の一角にある小さな池のことであるとは到底思えません。

 

栃木市にはラムサール条約に登録されている渡良瀬遊水地があります。渡良瀬遊水池自体は人工で造られたものですが、この辺りはもともと渡良瀬川、思川、巴波川が集まる大湿地帯でした。

また、栃木市の北部には太平山という山があって、そこからの眺望は「陸の松島」と呼ばれるくらい見事なものだそうです。

これは、あくまでも私の見解ですが、大湿地帯からの霧(煙)があたかも海のように見え、そして山々の頂上部分が海に浮かんだ島のように見える太平山からの眺めのことを「室八嶋」だと本来は呼んでいたのではないかと思っています。つまり、栃木市全体の風景のことだったのではないでしょうか?

そういう意味では、大神神社は栃木市民にとってアイデンティティーを感じられるお社だと思います。