葛飾柴又の帝釈天と言えば、映画「男はつらいよ」ゆかりの寺としてあまりにも有名です。
私はしばらく海外生活をしていたことがあるのですが、周囲が外国人ばかりのなかで仕事をしてストレスを抱え、日本人としてのアイデンティティーを感じたかったときは、日本から持ってきた炬燵を引っ張り出し、みかんを食べながら「寅さん」のビデオ映画を観ていたものでした。
小学校の高学年から中学生くらいにかけて、お正月は必ず両親に連れられて「男はつらいよ」を観に行きました。
テキ屋稼業の寅さんが何かの拍子に故郷の柴又に戻って来るのですが、毎回そこで大騒動が起こります。そしてこれも毎回、旅先とかで出会った「マドンナ」に惚れてしまいます。その女性たちは寅さんの奔放さと優しさに惹かれつつも、結局、寅さんは失恋、あるいは自分から身を引くという選択をします。
子どもながらに、「何と面倒くさて、不器用なおじさん」と最初は思っていたのですが、寅さんとさくらをはじめとする家族や近隣の人達との関わり合いを見ているうちに、日本人の本当に一筋縄ではいかない性格と日本人ならではの優しさというものを学んだような気がします。
そして、寅さんの明るさと哀愁漂う姿に次第に「男としての格好良さ」を感じたものでした。
日本人誰しもが、寅さんのように自由に生きたいと願っているのかもしれません。しかし、現実にはそうもいきません。
実は、山田洋次監督は「男はつらいよ」を通じて、真面目に一生懸命働く日本人を応援したかったのではないでしょうか?
映画「男はつらいよ」の最盛期はいわゆる高度経済成長期の頃でしたが、日本が低迷していると言われる現代こそ、寅さんに癒やされ勇気付けられることが求められているのかもしれません。
団子屋さんとかが軒を連ねる帝釈天の参道を通り過ぎ、映画でもよく登場した二天門をくぐれば、まさにというか本物の映画テーマパークという雰囲気です。
帝釈天の近くには「寅さん記念館」もあり、訪れた人たちはそれぞれの「寅さん論」に思いを巡らしていたに違いありません。




