一度は行ってみたいと思っていた立石寺(りっしゃくじ)に、念願叶い参拝することができました。
知り合いから立石寺に行くなら運動靴を履かないと駄目だと言われ、相当な登りなのかと覚悟を決めて行きました。
根本中堂は山の麓にありますが、それ以外のお堂に行くには、そこそこの段数の階段を登っていかなくてはなりません。
奇岩の上に立つ開山堂・納経堂は立石寺のシンボル的な建物です。
更に能の舞台のような「五大堂」に至りますが、そこからの眺めは、ちょうど紅葉の最盛期というタイミングも相まって、まさしく「ブラボー」でした。
立石寺というと、松尾芭蕉のあの一句が有名です。
「閑かさや 岩にしみ入る 蝉の声」
山寺を取り囲む蝉の声が、この辺りの閑かさを一層際立たせるという意味ですが、こういった心情風景といったものは、欧米人には理解し難いのではないでしょうか?
夏に来日した欧米人にとっては、蝉の声は騒音にしか聞こえないそうです。
ところで、この蝉の種類は何なのかという論争が、歌人の斎藤茂吉と芭蕉研究家の小宮豊隆の間で昭和初期に激しく行われていたそうです。
斎藤茂吉はアブラゼミを、小宮豊隆はニイニイゼミを主張していました。
この話しを聞いたときに、ちょっとくだらないと思い笑ってしまったのですが、よく考えてみると蝉の鳴き方で随分、この句の印象も変わってくるのではないかと思うようになりました。
そこで、YouTubeで蝉の声をチェックしてみました。
アブラゼミ:「ジリ・ジリ・ジリ」
ニイニイゼミ:「チ・チ・チ・チ」
ミンミンゼミ:「ミーン・ミン・ミン・ミーン」
クマゼミ:「シャー・シャー・シャー」
ヒグラシ:「カナ・カナ・カナ」
ツクツクボウシ:「ツク・ツク・オーシ」
といった感じです。
私はこの芭蕉の俳句を最初に聞いたときに、実はミンミンゼミを想像しました。おそらく人によって思い浮かべる蝉はそれぞれかもしれません。どの蝉を想像するかとアンケートをとったら面白いかもしれませんね。個人的には、ヒグラシの声が物悲しくて、お寺には合っている気もします。
芭蕉が山寺を訪れた日にちは新暦だと7月13日ということで、そうなると小宮豊隆が推すニイニイゼミの可能性が高いそうです。
芭蕉が訪れた夏とは違い、晩秋の季節でしたが、立石寺は四季それぞれに豊かな表情を見せてくれます。





