日本で仏像には見慣れているはずなのだが
その神々しく輝くボディーのせいか、
タイの仏像は
とても日本のものとは似ても似つかないように思える
そして、ハッキリと覚えてはいないが日本の仏像はここまで偉そうにしていないような気がするのだ
基本的にこちらの仏像はすべて目を薄め上から目線
悟りの眼差しどころか疑いや誘惑の眼差しにも見てとれる
そしてどれも鼻が高く手足、指が長いところからもどうも親近感が湧かない
(全てがわたし個人の見解であり、事実とは異なる可能性があります)
チェンマイ滞在も残り3日となった今日、私はドイステープというチェンマイで最も美しいと言われる寺へ行くことにした
名称にわたしの苗字である“ドイ”が付くので気になっており、必ず訪れようと決めていた場所の一つだ
(後から知った話、ドイとはタイ語で山という意味なのでその寺とドイという名称はなんら関係ないに等しい)
ホステルの近くからドイステープ行きのソンテウ乗り場があるというのでそこへ向かうと既に8人がベンチに腰掛け待っていた
運転手によると10人集まったら出発らしい
バンコクではトゥクトゥクが観光客にとって便利な移動手段だが、ここチェンマイではソンテウという小型の乗り合い式のバンが重宝する
ネットにはドイステープまで50バーツ(175円)と書いていたのだが実際に提示されたのは60バーツ(210円)だった
話が違うと思ったがここで10バーツ(35円)のために言い争う体力も、違うソンテウを探す体力も無駄遣いする訳にはいかない
ただでさえくそ暑く、立っているだけでも汗が吹き出るここタイランド
7日間歩き通しで流石にバテていた私は体力温存の為の35円を喜んでソンテウドライバーに捧げた
10人の乗客が集まりソンテウが走り出す
早い
早い
そのスピードはあまりにも早すぎる
おまけに道はクネクネと
曲がりくねりまくっている
私は一瞬にして車酔いした
昼前の出発だった事もあり何も食べずに来て大正解
危うくカオマンガイがカオマンガーイするところだった
あまりにも荒い運転をするので
目を瞑り、腕を組み、瞑想スタイルに入る私
運転手の顔を思い浮かべ呪いをかけのだが、本当に呪いが効いてしまうと彼の車に乗っている私たち乗客にも危険が及ぶと思い直し、早めに呪いを解く事にした
心を無にして寺への到着を待つ
30分ほど経ったころ
ようやく寺に着いたので酔い覚ましの為に腰をおろし、タロ芋アイス(70円)を食べる
タロ芋の身がゴロゴロ入っていてうまい
屋台やローカルレストランのコスパとそのクオリティには毎度驚かされる
安いだけではなく味も良い
アイスを食べていたら
タイ人親子にタイ語で話しかけられたので
どうだ!と言わんばかりのドヤ顔で
パーサータイ、マイカウチャーイ、コートーッ!
(タイゴ、ワカラナーイ、スマン!)
をこの旅で初披露し、ひと笑いいただいた
チェンマイを見渡せる展望台があるというので
本堂を見る前に寄ってみることにした
深い深い緑色の山々やバナナの木々
その向こうには薄らとかかる靄から覗く
小さく可愛らしいチェンマイの街並み
美しい光景だった
それから本堂へと向かう
基本的に寺関係は
袖なしのトップス、膝上のスカート、靴はNG
そのような服装をしている人は係員に笛を吹き止められ、ショールの貸し出しスポットに連行される
ショールの貸し出しは無料の寺もあるのだが100バーツ(350円)ほど徴収する寺もあり場所により様々
わたしはバンコクで購入したショールを持って来ていたのでそれを肩にかけ、靴を脱ぎ本堂へと入った
ペタペタと裸足で石のタイルの上を歩くのは実に気持ちが良い
きゃっきゃとはしゃぐタイやチャイナの子どもたち
足元から伝わるタイルの冷ややかな感触と独特の少し張り詰めた空気に
ほてった体は冷まされ背筋がしゃんと伸びるような感覚
線香の香りとお供え用の白い花の甘い香りが混ざり合い
なんとも心地よい空間だ
観光客は珍しそうに写真を撮り
地元民は日常通り花を捧げ膝をつき手を合わす
金ピカに輝く美しい建物を見回り
日陰を見つけたので少し涼むことに
ひんやりと気持ち良い大理石風の床に腰をおろし
ふと顔を上げると
そこには無数の金色の仏像や涅槃仏の姿
一人一人の顔を見渡してみる
ふと、一体の仏像が目に留まった
なにやら見覚えのあるその顔
日本人の友達の誰かに似ているのか?
まあ、同じアジア人だからありえる話だ
もう一度目を細めよく見てみる
いや
それは友達でも何でもない
先程荒い運転でわたしを苦しめたあのソンテウの運転手だ
わたしはほんの一瞬ではあるが彼に呪いをかけた事を神の前で恥じ、悔い改めた
神は
わたしの深い心の中の一瞬の迷いさえも
見逃す事はない
ふと時計を見ると時刻は寺到着から1時間20分
運転手との約束の時間まであと10分と迫っていた
帰り道も荒い運転になるのだろう
憂鬱な気持ちに足取りは重い
とはいっても
腹が減ったので屋台でバナナの天ぷらを購入しソンテウ乗り場に向かう
何という事だろう
先程の運転手が居ないではないか
そして今まさに出発しそうな別のソンテウを発見したので値段を確認し乗り込む
通常は、向かい合って座る乗客席に座らされるところ、満席だった為「VIP席だぜ〜?」とスギちゃん風におちょくられつつ助手席を指さされた
アーメン&南無阿弥陀仏
これなら例え運転が荒くても車酔いせずに済む
ソンテウが走り出す
私を助手席に乗せて
なんだかスギちゃん(運転手)の彼女にでもなった気持ちだ
おまけに彼はかなりの安全運転
あまりの嬉しさにバナナの天ぷらを運転席の彼に差し出したが断られた事以外は最高のドライブとなった
行きの運転手への恨みの気持ちは浄化され
ドイステープへと昇華した



