ミステリー2冊「 好きです、死んでください 」、「 虚像のアラベスク 」 | berobe 映画雑感

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「 映画 」と「 本 」の感想

残り「 ミステリー 」2冊。

 

 

 

「 好きです、死んでください 」  中村あき

 

本格ミステリー。

 

 

「 無人島 」を舞台にした、若者6人による

恋愛リアリティー・ショー「 クローズド・カップル 」。

 

船のトラブルで 撮影B班が到着していない中 始まった 撮影の

「 4日目 」の朝、

 

人気女優・松浦花火( まつうら はなび )が 鍵が掛かった自室で 刺殺体となって見つかる。

 

今になって出演を後悔している、自称「 陰キャ 」の小説家、

小口栞( こぐち しおり )は 他の4人と共に「 犯人 」と その「 密室トリック 」を推理する事になるが……。

 

 

 

という「 恋愛リアリティー・ショー 」+「 本格ミステリー 」な内容。


 

前半の「 密室 」展開で「 そう来たか 」と驚いたものの

それ以降は 割と オーソドックス。

 

「 密室 」自体も 地味なので「 結局 フツーかな 」と思いきや そこから また チョット捻った展開を 見せており、

 

その後も「 ○○○死体 」( 珍しくないが 一応 伏字 )が出る

など ケレン味も出てくるんですよね。

 

 

「 各章 」の間に ある女子高生の視点による「 三年X組にて 」なる「 学校 エピソード 」もあったりで

 

徐々に ミステリー気分も 上がっていきましたよ。

 

最後の「 推理 」場面も 思った以上に 盛り上がったし、

 

「 設定 」を活かした「 真相 」や「 動機 」( ミッシング・

リンク )も 好きです。

 

「 手掛かり 」関係にしても、時に テクニカルな描写でありながらも( 個人的には )「 フェア 」に思えたし、

 

程よく「 推測も 出来る 」内容なので「 解けそう感 」も 強めなんですよね。

 

…まあ、私は ダメでしたけど。

 

( 何となく 予想は付いたが 組み立てられなかった )

 

 

「 番組を盛り上げるための 演出 」、「 SNS 」など 今っぽい「 社会派 」要素や、

 

各出演者の「 心模様 」も 結構ドラマチックだったりで「 話 」としても 悪くなかったです。

 

あと、ちゃんと「 恋愛リアリティ・ショー 」要素もありますよ。

 

しいて 難点を上げるなら「タイトル」の意味が 分かりづらい ところかな。

 

( タイトルは おそらく「 三年X組にて 」の方に 掛かっているのだと思うが… )

 

 

レビューを読むと「 まあまあ 」くらいが 多い印象ですが、

個人的には かなり面白かった( 評価 高めな )作品でしたね。

 

 

 

「 虚像のアラベスク 」  深水黎一郎

 

『 芸術探偵 』シリーズ。

 

ミステリー中篇 2編に オマケっぽい1編がついてます。

 

 

『 芸術探偵 』は「 長篇 」の方は ひとつも読んでませんが

 

『 ストラディヴァリウスを上手に盗む方法 』

『 世界で一つだけの殺し方 』

 

の方で「 短篇 」を何本か読んでます。

 

 
 

「 ドンキホーテ・アラベスク 」

 

名門「 烏丸バレエ団 」に届いた、

「 記念公演『 ドン・キホーテ 』の中止 」を要求する脅迫状。

 

警察は イタズラとみていたが 来日する 欧州委員会委員長

『 ドンキ 』鑑賞が決まったため 劇場の警備が決まる。

 

警備を任された 警部補・海埜( うんの )は「 芸術探偵 」と

呼ばれはじめている 甥の瞬一郎( しゅんいちろう )に相談する事に……。

 


若干「 ネタバレ 」になるけど「 人が死なない 」ミステリーです。

 

あと「 芸術探偵 」という事で「 バレエ 解説( うんちく )」が多く出てきます。

 

こういう「 説明・専門要素 強め 」な内容は キライな人が多いと思いますが、個人的には「 興味が持てるか 」が問題ですね。

 

 

本作の「 バレエ 」は 興味としては “薄め” だったので ダメそうに思えたんですが、

 

「 踊り 」の形?動き?の 解説は イメージしづらく 少々退屈ではあったものの( というか 名前が 覚えづらい )、

 

意外と その他については いろいろと ためになりましたよ。

 

例えば「 階級名 」の イギリス風と フランス式。

 

階級のトップ、イギリス風だと「 プリンシパル 」、フランス式だと「 エトワール 」とか。

 

それと フランス語は 男女で名詞が分かれているので

 

主役を踊れる階級も プリミエ・ダンスース( 男性 )、 

プリミエール・ダンスーズ( 女性 )と違ってるんですよね。

 

( エトワール は 男女同じ )

 

 

あと バレエって「 セリフ 」なかったんですね。

 

代わりにあるのが 身振り手振りで「 語り 」を表現する

「 マイム 」。

 

バレエ鑑賞において「 話 」を知る上で ある程度「 マイム 」を知っていた方がいいみたいですよ。

 

本作の演目『 ドン・キホーテ 』( プティパ版 以降?)は

ドン・キホーテ自身「 マイム 」担当で 一切 踊らないみたいです。

 

( ちなみに 主役も キトリバジルの 若いカップル )

 

 

肝心の内容は「 ドラマ強め 」、「 驚きが少ない 」って事も

あり フツーだったかな。

 

それでも 少しだけですが バレエについて 知ることが出来たので 読んで良かったですね。

 

 

 

「 グラン・パ・ド・ドゥ 」

 

本来なら「 あらすじ 」みたいのを書くんですが、チョット

「 書きにくいヤツ 」なんで なし。

 

( コレだけで ネタバレ気味だけど。

ミステリーの 紹介&感想って ムズかしいね )

 

 

ちなみに タイトルの「 グラン・パ・ド・ドゥ 」とは バレエの「 男女デュエットの 踊り 」みたいです。

 

最初の作品では 人は死にませんでしたが

こちらは「 装身具の盗難 」のあと「 殺人事件 」が起こります。

 

読み始めから「 違和感 」を感じるので ある程度 読み進めると その正体に 気付くかも…。

 

個人的には 結構好きなヤツ ですが「 気づき易い 」とはいえ

「 アンフェア感 」も 強く 納得感は 少々低め。

 

あと、フツーに 超・くだらないし。

 

でも「 バカミス 」と捉えれば 両方とも OK かもしれません。

 

 

海埜警部補も 続けて 出てきますが こっちは「 コメディ寄り 」なため『 大癋見警部の事件補 』大癋見( おおべしみ )警部の方が 合ってたような。

 

ちなみに 大癋見警部『 ドンキホーテ・アラベスク 』の方に チョットだけ出てきます。

 

 

最後、

 

「 読まない方が 良いかもしれない エピローグ

史上最低のホワイダニット 」

 

の方は 先の『 グラン・パ~ 』の エピローグ、

「 真の動機 」が明かされる ショートショート。

 

個人的には この動機の方が スキだな~。

 

実は 読んでる最中「 そういえば アレって…ないんだよな 」と思い浮かんでましたよ。

 

それと 読み終わって気付いたんですが「 本書タイトル 」が

両方の作品に ちゃんと掛かってもいましたね。

 

 

『 グラン・パ~ 』に至っては “踊り” と「 虚像 と 巨象 」の

ダブルミーニング かも?

 

 

という事で 個人的には「 まあまあ 」くらい。

 

2作品の テイストが違い過ぎるし、後者は 人を選ぶ作品なんで オススメ度は 低めかな。