今月 読んだのは…
連作短篇・ミステリー
「 赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う 」 青柳碧人
本格ミステリー
「 しおかぜ市 一家殺害事件 あるいは迷宮牢の殺人 」
早坂吝
本格ミステリー
「 好きです、死んでください 」 中村あき
短編ミステリー
「 虚像のアラベスク 」 深水黎一郎
の4冊。
読みたい ミステリーが増えたため 今回は 4冊 すべて
「 ミステリー 」を チョイス。
…したけど、焼け石に水のような。
まずは 2冊。
「 赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う 」
青柳碧人
メルヘン( 童話 )を題材にした 連作・ミステリー、
『 赤ずきん、旅の途中で死体と出会う 』の続編。
『 むかしむかし… 』(「 昔ばなし 」)シリーズ は 基本的に
「 一話完結 」でしたが こちら『 赤ずきん 』シリーズ の方は
「 連作 」になっており、本作も
「 バラバラになった ピノキオの “体のパーツ” を取り戻すため 旅に出た 赤ずきんが 事件に遭遇する… 」
みたいな「 基本設定 」になってます。
「 全5編 」の構成ですが 4番目の作品は 次の話の「 補完 」的な内容なので 実質「 4編 」ですね。
総じて「 話 」自体は 良かったものの、期待した「 特殊設定 」要素は少なく、「 本格 」としても 少々弱めだったのは 残念。
「 差別化 」してるのかも しれませんが『 むかし話 』シリーズの方が好きかな。
第一幕「 目撃者は木偶の坊 」
ピノキオの「 右腕 」を拾った 赤ずきんは 成り行きから 無理
ヤリ働かされている ピノキオを引き取るため「 親指一座 」に。
そこで 体よく 追い返されてしまった 赤ずきんは 翌朝、
「 一座 」の座員を 殺害した疑いで捕まってしまう。
しかも その目撃者は「 ウソを吐くと 鼻が伸びる 」ピノキオであった……。
「 ウソが吐けない ピノキオが目撃者 」という「 設定 」は
面白いものの「ミステリー」としては「 伏線 」が “そのまんま” と 弱め。
「 鼻が伸びる 」や「 小さい 親指姫 」が関係してくる オモシロい内容になるかと 期待をしていたので 期待ハズレ感も ちょっとあったかな。
第二幕「 女たちの毒リンゴ 」
森で 白雪姫を保護した 七人の小人。
その 小人のひとりが 不慮の事故で「 毒死 」してしまう。
その様子を「 魔法の鏡 」で見ていた「 人を殺すと 魔法が使えなくなってしまう 」魔女・ヒルデヒルデ は ある「 白雪姫 殺害計画 」を思いつく……。
「 毒死事故 」を発端にした「 白雪姫 殺害計画 」という
若干「 倒叙サスペンス 」の要素がある 内容。
個性ある 七人の小人の キャラも良かったし、
「 真相 」も チョット捻ってあって 面白かったですね。
第三幕「 ハーメルンの最終審判 」
明日「 フェス 」が行われる 音楽の街、ハーメルン。
45年前、ネズミを追い払ったが 約束を反故にされたため
子供たちを誘拐した “笛吹き男” 。
その後 捕まり 終身刑として 今も「 牢獄 」に入れられている
笛吹き男が 牢番を殺して 逃げ出し……。
「 話 」や「 伏線 」関係、それと「 タイトル 」も良く、
こちらも 面白かったです。
ただ「 特殊設定 」の度合いは 低め目で そこが個人的には ちょっと残念。
幕間「 ティモシーまちかど人形劇 」
「 第三幕 」で ちょっと出てきた「 劇中 人形劇 」、
「 三匹の子豚と 魔女、ブッヒブルクの街の 成り立ち 」を描いた ショートショート。
他の4作品は『 小説推理 』掲載でしたが こちらは「書下ろし」です。
最初に書いたように 次の話の「 補完的な内容 」ですが これだけでも 結構 面白いです。
第四幕「 なかよし子豚の三つの密室 」
ピノキオの体を盗んだ 魔女を追い、子豚の三兄弟が 支配する、
ブッヒブルクの街に たどり着いた 赤ずきんと ピノキオ。
そこで 2人は 兄弟の長男が「 わらの家 」で 死んでいる現場に 遭遇してしまう。
次男の「 話 」や「 密室 」状況から「 事故死 」だと思われたが 赤ずきんは これが「 殺人 」だと見抜き……。
「 トリック 」が 弱いな。
これなんかも「 魔法封じの ネックレス 」が関係してくるかと思ったんだけどね…。
それでも「 話 」や「 展開 」自体は なかなか良く、悪くはないです。
「 しおかぜ市 一家殺害事件
あるいは 迷宮牢の殺人 」
早坂吝
本格ミステリー。
「 しおかぜ市 」で暮らす、母親や 職場の事で 鬱屈を募らせている 派遣社員の 餓田( うえだ )は、ある日、ある男の家に
強盗に入り 一家を惨殺して、大金を奪う。
証拠も 全て 隠滅した…はずだったが…。
┇
名探偵・死宮遊歩( しのみや ゆうほ )は 警察の 森ノ宮切
( もりのみや せつな )に「 ある事件 」の話を始める…。
┇
拉致されて「 迷路 」に閉じ込められた 死宮を含む7人の男女。
7人は 拉致犯、ミーノータウロス から、
「 この中に “6つの未解決事件” の犯人がいる 」
「 各々 殺し合いをさせ、生き残ったひとりを解放する 」
という デスゲームの説明を受ける。
その「 未解決事件 」には 餓田が起こした「 一家殺害事件 」も含まれており……。
『 らいちシリーズ 』じゃないので「 エロ要素 」がないと 踏んでいましたが ちょっとありましたね。
しかも「 犯罪系 」という事で 質も悪い※ です。
( ※ コレが 評価を下げてるっぽい )
その部分、餓田が起こす「 一家殺害 」の「 犯罪心理 描写 」が
「 社会派・本格ミステリー 」を目指している 著者らしく 結構 リアル。
「 自己評価は 高いが 行動は それに 伴っていない 」餓田の
「 こじらせ 」が 愚かしくも 憐れで、読んでいて 滅入ります。
ですが、その後の 死宮の「 迷路パート 」は その設定も含め ちょっと “ライトな感じ” なので 全体的にみると 読み進めやすかったですね。
「 本格 」に関して言うと「 意外と ボリューム感があった 」
になるかな。
「 不用意に 書けない 」タイプ?なので 説明は 出来ませんが、
「 帯 」に書いていたように「 アクロバティック 」な様相を見せていましたよ。
逆に言えば「 思っていたのと 違う 」って事でもありますが、
「 引っ掛かった 部分」にも 理由があったし、
「 社会派 」の要素(?)※も ちょっとあったりで 個人的には 楽しく読めましたね。
( ※「 社会派 」要素(?)
違和感は覚えたが 気付かなかった…。
ちなみに 餓田と 殺される一家は「 金銭面 」や「 ○○の認識 」の有無で「 対照的 」になってる )
まあ、最初に書いたように「 一家殺害 」が かなりヒドいので 気軽に オススメは出来ないんですけど。