ノンフィクション「 蚊が歴史をつくった 世界史で暗躍する人類最大の敵 」 | berobe 映画雑感

berobe 映画雑感

「 映画 」と「 本 」の感想

残りの 1冊。

 

 

 

「 蚊が歴史をつくった

世界史で暗躍する人類最大の敵 」

 

著: ティモシー・ワインガード

訳: 大津祥子

 

 

ノンフィクション。

 

いろいろと 迷ったけど、今年の「 ノンフィク 」は コチラに

決定。

 

去年 読んだ ノンフィク『 世にも奇妙な人体実験の歴史 』

マラリア 」と「 黄熱病 」について 書かれていた事と、

 

「 環境変化による “蚊媒体感染症” の拡大 」も 効いた形です。

 

 

「 全19章 」+「 はじめに 」&「 終わりに 」の構成で、

 

大まかな 内容としては

 

「 蚊 」が媒介する「 感染症 」( 主に マラリア黄熱病 )と

それらが もたらした 人類への影響や その歴史…

 

みたいな感じでしょうか。

 

個人的に「 歴史 」は かなり苦手なんですが

「 気になる分野 」が 絡んでいるので 面白く読めましたね。

 

 

「 各章タイトル 」と共に 内容の一部を ちょこっとだけ

( しっかり書くと 長くなるので )超超・ザックリと 紹介。

 

 

 

「 はじめに 」

 

「 生物による “人間の死” 」で 一番多いのが「 蚊 」

( による感染症 )で、

 

その数 100万~300万人( 平均200万くらい )。

 

次に「人間 」の 47万、その後「 ヘビ 」、「 イヌ 」、

「 サシチョウバエ 」、「 ツェツェバエ 」…と続く。

 

ヘビに 限らずですが「 毒 」って恐ろしいです。

 

狂暴なのは 知っていたけど「 カバ 」も 500人と 結構 多かったですね。

 

あと「 ワニ 」も 1000人と 思った以上に多かったですよ。

 

 

 

「 第一章  蚊がもたらす有毒な双生児  マラリアと黄熱病 」

 

「 蚊 」は1億年以上前からいて、恐竜の血も吸っていた※。

 

( ※「 恐竜の糞の化石 」にも マラリア、寄生生物の形跡があった )

 

ちなみに 映画『 ジュラシック・パーク 』の「 琥珀 」に閉じ込められていた「 蚊 」は 数少ない「 血を吸わない蚊 」なんですよね。

 

 

「 蚊 」が媒介する 病原体は「 ウィルス 」、「 虫 」、

「 原生生物( 寄生生物 )」の 3グループ。

 

もっとも多いのが「 ウィルス 」で「 黄熱病 」や「 日本脳炎 」も このグループ。

 

 

「 虫 」は「 フィラリア蠕虫( ぜんちゅう)」で、皮膚が分厚くなる「 象皮病 」※を起こします。

 

( ※ 見た目が 強烈なんで 結構 有名 )

 

 

「 原生生物 」は「 マラリア原虫 」。

 

多くの種類がいるが 人間を苦しめるのは 5種 らしく、その中で危険なのが「 熱帯熱マラリア 」と「 三日熱マラリア 」。

 

…と、ここで マラリアの「 ライフサイクル 」を 軽く説明。

 

 

の刺咬( しこう )で 人間の体内に入り込んだ マラリア原虫は「 肝臓で 変化して増殖 」。

 

その後「 血管 」に行き、今度は「 赤血球 」に入り込み、

そこで ヘモグロビンを食べ「 増殖 」。

 

この時「 同じ形態 」とは別の「 “性別なし” 形態 」に変化するものもいる。

 

赤血球を 破り出てきた「 同じ形態 」は 次の 赤血球へ入り

「 増殖 」…と続き、

 

性別なし形態は「 蚊に 吸われる 」ため 血管内を ユラユラ。

 

この時、性別なし形態は「 蚊の吸血を誘因する 化学物質 」を

血液中に出しているようです。

 

蚊に吸われた 性別なし形態の マラリアは 蚊の胃の中で

「 雌雄に 変化し、すぐに接合 」して「 糸状の子孫 」を作る。

 

その子孫は 蚊の「 唾液腺 」に移動、吸血時に 人間の体内へ…というような サイクルです。

 

ちなみに 子孫は 蚊の「 血液凝固 “抑制” 物質 」を止め、

( ちゃんと 血が 固まるようになる )

 

蚊の「 吸える血の量を抑え 」、吸血回数を増やしてもいます。

 

 

あと、致死率が およそ 25% と高めの「 熱帯熱マラリア 」は

「 再発はしない 」※ようなんですが、

 

( ※ 媒介する蚊に刺されれば 再発する )

 

「 三日熱 」や「 サル マラリア 」の方は 原虫が 肝臓に残って( 休眠して )いるらしく「 再発の可能性がある 」ようです。

 

 

 

「 第二章  適者生存

熱の悪霊、フットボール、鎌状赤血球のセーフティ 」

 

8000年前、田園地帯を 広げた人類を「 蚊 」(=マラリア)が襲う。

 

人類は 応急策として 赤血球を「 鎌状 」に変え 免疫を高めるが、

 

その代償( トレード・オフ )として「 平均寿命 23年 」

( 医療が 未発達の状態で )と 短くなってしまう。

 

「 マラリアでの 死亡率 」( 成人前の死亡率 55% )より

「 寿命が短い 」方が マシだったという事らしい。

 

「 鎌状赤血球 」を持つ人は 全世界で 5000万人くらいで

ほとんどが アフリカに住む人。

 

その「 鎌状赤血球 」は「 酸素の受け渡し 」を妨げるため、

酸素不足になりやすいらしく、

 

( その他、健康被害など リスクもあるとか )

 

アメリカの高地( 標高が高い )デンバーにある スタジアムでは「 鎌状赤血球 」を持つ 選手は出場できないらしい。

 

 

 

「 第三章 ハマダラカ将軍

アテネからアレキサンドロスまで 」

 

紀元前490年、当時「 複数の都市国家からなる 集合体 」で 互いに交戦していた「 ギリシャ 」。

 

その 一都市の「 アテネ 」へ、ダレイオス王の「 ペルシア 」が

2回目の侵攻を開始する。 ( 2年前の1回目は 失敗 )

 

アテネ軍ペルシア軍を「 病気に 罹りやすい 」沼沢地※ に

閉じ込めたり、上陸させるよう仕向け、

 

兵を「 マラリア 」( その他の病気に )感染させ、兵力を 低下させて 勝利。

 

 

〔 ※ 沼沢地( しょうたくち )

 

「 湿地は 蚊が多い( 繁殖しやすい )」からだが、長い間 湿地から出る “悪い空気”( 瘴気 )で 病気になるとされていた 〕

 

 

紀元前480年、ダレイオスの息子、クセルクセスギリシャに侵攻。

 

ギリシャは 互いの対立を 一旦止めて、連合軍を組織するが、

数は ペルシアが 有利だったため 撤退。

 

その時 残った、時間稼ぎのための 1500人の 中に 300人の スパルタ兵がいた。

 

 

…これは 映画『 300〈 スリーハンドレッド 〉』(06年)の元になった エピソードですが( 本書でも 言及あり )、

 

実際は 時間稼ぎの戦いだったみたいですね。

 

個人的には アテネスパルタ( この2都市が 強かった )が

対立を止め 手を組んだところに グッと来ましたよ。

 

まあ、その後も「 アテネスパルタ 」の戦いは 続くんですけど。

 

 

この後、ペルシア軍連合軍を追うが「 マラリア & 赤痢 」で兵の40% を失い 撤退する事に。

 

ギリシャの方も 都市同士の対立が続き 次第に疲弊するが、

そんな中 距離を置いていた マケドニアが台頭。

 

…と ここから フィリッポス2世の息子、アレクサンドロス

出てくるんですが 割愛。

 

ちなみに アレクサンドロスの死因は「 熱帯熱マラリア 」

( が有力 )らしいです。

 

 

 

「 第四章 蚊軍団  ローマ帝国の興亡 」

 

ローマの周りには 広大な「 ポンティノ湿地 」があり、

 

「 ポニエ 戦争 」時に カルタゴの将軍・ハンニバルも「 蚊 」の被害にあっていた。

 

その ハンニバルは「 片目 」になってしまうが(知らなかった)

それも「 熱マラリア 」の影響で 失ったらしい。

 

もちろん、ローマ自体も「 湿地の蚊 」の被害にあっており、

 

逆に「 ゲルマニア戦役 」では ゲルマン人に 湿地へと 追い込まれてもいた※。

 

 

〔 ※ 地域ごとに マラリアの種類が異なるため( = 風土病 )、他の地域の兵には 耐性がなく 戦力が低下。

 

あと、不衛生な飲み水による 病気もあったり 〕

 

 

ちなみに「 ポンティノ湿地  」は カエサルナポレオン

「 干拓 」を 計画していたようですが 実行できず、

 

2000年後に ムッソリーニ が 実現してます。

 

 

 

「 第五章 悔い改めない強情な蚊たち  宗教危機と十字軍 」

 

ローマ帝国から 迫害されていた( 虐殺もあった )キリスト教 だったが、宗教上の義務として「 看護を説いていた 」ため 人々は キリスト教に傾倒。

 

「 看護 」のほか「 未亡人と 孤児の世話 」もしていたが、

 

神聖ローマの頃になると 教皇たちは「 権力 」と「 富の蓄え 」に 関心を持ち始める。

 

1096年に「 十字軍 」( 語としては 1750年頃から )

による「 エルサレム奪還 」が 始まるが、

 

これも 宗教的な目的の他、「 略奪 」、「 虐殺 」、「冒険心」と 複数の動機があった。

 

それと 当然ながら イスラム教徒との闘いでも 現地のマラリアに 苦しめられていて( 現地民は それなりに 耐性がある )、
 
「 三回目の遠征 」では リチャード王も マラリアに罹って 撤退している。 ( そして その帰路で 誘拐される事に… )

 

 

ちなみに 1921年に パレスチナに移った シオニストたち

半年で 42% が マラリアに罹り、一年後には 64% に達したようです。

 

 

 

「 第六章 蚊軍団  チンギス・ハーンとモンゴル帝国 」

 

1354年、モンゴル軍は「 港湾都市・カッファ包囲戦 」時に

「 腺ペストに 感染した 死体 」を放り込んで 住民を感染させた。

 

その後「 ペストに感染した ノミ 」が寄生した ネズミや、

感染した船員 が 船で運ばれ シチリア島に入港、ヨーロッパに 広がる事に。

 

ペスト= 黒死病 の流行は 19世紀までは 継続的に発生し、

 

1665年の「 ロンドンの大悪疫 」では、同市人口の 25%

にあたる 10万人が亡くなった。

 

 

 

「 第七章 コロンブス交換  蚊とグローバル・ヴィレッジ 」

 

アメリカ大陸の発見、その後の「 植民地化 」により

「 蚊(= マラリア や 黄熱病 )」も 大陸へ移動。

 

( 大陸にも 蚊はいたが「 蚊媒介 感染症 」はなかったらしい )

 

 

個人的に漠然と ヨーロッパ人の武器が 優れていたため 米大陸を

「 植民地化 」できたと思っていたが、

 

「 免疫 」や「 耐性 」を まったく持たない 先住民

「 蚊媒介 感染症 」に罹った事による「 人口の減少 」の要因が大きかったようだ。

 

その後の 米大陸での「 プランテーション 」といえば

 

(「 鉱山採掘 」も させられていた )

 

「 綿花 」が 思い浮かぶが、先に 栽培されていたのは

タバコ、コーヒー、砂糖 であった。

 

あと「 奴隷 」の方も、最初に 奴隷にされていたのは 先住民

 

しかし、上記したように 先住民奴隷は「 蚊媒体 感染症 」に

弱いため 数を減らす事となり、

 

「 新たな奴隷の確保 」として アフリカから人を連れてきた、

という流れになる。

 

その アフリカ人は 最初に書いたように「 鎌状赤血球 」など

「 遺伝的に マラリアに強い 」ため重宝される事に。

 

 

ちなみに( 蚊媒介感染症のため )まだ、アフリカの奥に行けなかった ヨーロッパ人アフリカ人奴隷を 渡していたのが

現地のアフリカ人 だったりします。

 

 

1638年に 植物の「 キネノキ 」から マラリアの治療薬

キニーネ 」が 発見される。

 

その 粉末状の “苦い” キニーネ( トニック・ウォーター )を

服用するために カクテルの「 ジン・トニック 」が生まれる。

 

 

 

「 第八章 偶然の征服者

アフリカ人奴隷制度と蚊が米大陸に加わる 」

 

1807年、英国は「 奴隷貿易 」を禁止、しぶしぶ 米国が、

数年後に スペインも それに続く。

 

その事で「 米国生まれの 奴隷たち 」の間で アフリカ祖先から受け継いだ「 免疫 」が減少。

 

その前から アフリカ人奴隷の値が高かった※ために、主人が

女性奴隷に 強制性交し 子供を産ませていた事などもあり

 

徐々に アフリカ人奴隷の「 免疫 」が失われていた。

 

 

( ※ アフリカ人奴隷は「 免疫 」を得ているので 先住民奴隷の2倍の値が付いた )

 

 

アメリカ人アフリカ人を「 無気力で 怠惰 」であると見なしていたが、それは 彼らが「 マラリア 」によって 衰弱していたからだった。

 

ちなみに「 免疫のない 」の先住民も 病気のまま 働かされて

いたらしい。

 

 

 

「 第九章 順化  蚊の環境、神話、アメリカの種 」

 

米大陸の「 植民地化 」「 プランテーション 」で 富を得ていた スペインを羨む イングランドも 米大陸へ進出、

 

その中に ディズニー映画『 ポカホンタス 』の舞台、ジェームズタウン もあった。

 
しかし その入植地、ジェームズタウン は「 マラリア 」と それによる「 飢餓 」※で 壊滅しそうに。
 
 
( ※ ジェームズタウン での「 飢餓 」
 
マラリアに罹る → 動けなくなる → 食料調達できず…という事らしい。
 
それとは別に、入植地したものの マラリアなどで 死傷者が
大量に出たため 撤退する事が 頻繁にあった )

 

 

ポカホンタスがいる、先住民・パウハタン族と 作物を

「 物々交換 」していたが、物が尽きると 作物を盗んでもいたようだ。

 

1609年、ポカホンタスと 関係を深めていた ジョン・スミスが 帰国※、しばらくして「 三回目の 補給船隊 」が ジェームズタウンに到着。

 

( ※ 映画とは違い「 火薬で ヤケドを負った 」ため帰国 )

 

 

その補給船には 後に「 ポカホンタス と 結婚 」する

ジョン・ロルフが「 タバコの種 」を持って 乗っていた。

 

 

( ちなみに ロルフの妻生まれたばかりの子も 乗っていたが、共に たどり着く前に 亡くなっている )

 

 

しかし 入植地に着いたものの 入植者は「 マラリアと 飢え 」で衰弱し、すでに荒廃状態。

 

物々交換で 耐えるが それも尽きたため 帰国を計画するが、

退却を始めた時に 救援船団が到着した事で 復活。

 

さらに 栽培した「 タバコ 」が 商業的に成功したことで

 

ヴァージニア会社は 資金を投入、年期奉公人や 人口を増やす

ための入植者※を 送り込む。

 

( ※ 植民地の 男女比は 当初「 5対1 」だったが 女性が多く送られため 徐々に均等に )

 

 

しかし、ジェームズタウンが 栄えた事により パウハタン族との

力関係が逆転、争いが激化。

 

イングランド人首長・パウハタンの娘、マトアカ

( ポカホンタス )を誘拐した事を機に 両者で 取り決めが

行われ、ロルフポカホンタスの結婚も決まる。

 

 

ちなみに 1616年、ロルフポカホンタス息子を連れ

イングランドに戻るんですが、

 

夫婦が出席した 晩餐会で ポカホンタスは あのジョン・スミスと 再会してます。

 

それと ジョン・スミス は「 ほら吹き 」で有名でした。

 

 

ポカホンタスは 1617年に 病で亡くなり、次いで 首長

亡くなった事で 争いが復活、

 

領土保全の「 条約 」を結ぶも 入植者たちは それを破り 領土を奪っていく事に。

 

 

 

「 第十章 国家におけるならず者たち  蚊と英国の拡大 」

 

オリバー・クロムウェルによる イングランド統治の影響と※

「 長年の 干ばつ 」の影響で「 同君連合 」の スコットランドの経済が混乱。

 

( ※ 重商主義、プロテスタントと カトリックの 宗教対立 )

 

スコットランドは 資金をかき集め、スペインが 失敗し続けて

いる※、「 パナマ地峡 」を通り抜ける「 通商路の開拓 」に

賭ける事に。

 

 

( ※ スペインによる「 パナマ地峡の開拓 」では 推定 4万人が亡くなっている )

 

 

だが、1200人の入植者は パナマの ダリエン到着から 6か月後に、半数が マラリア黄熱病で亡くなり、

 

さらに スペインの攻撃も受け 撤退( 生存者 300人ほど )。

 

第一陣が 帰国する前に 1300人の増援隊が 出発してしまい、

 

こちらも マラリア黄熱により 毎週100人が亡くなる事態に。

 

結局 スペインに降伏、スコットランドに帰国するも 残っていたのは 100人に満たなかった。

 

金がなくなった スコットランドでは 暴動が多発、イングランドが助ける形で 併合される事になった( 英国誕生 )。

 

 

 

「 第一一章 疾病という試練

植民地戦争と新たな世界秩序 」

 

植民地( その他 いろいろ )を巡る「 7年戦争 」。

 

イギリスフランスが保有する 米大陸の「 カナダ 」と

「 カリブ海地域 」を攻めるが、

 

感染症が多い「 カリブ海地域 」を 恐れた兵士は そこには 行きたがらず、

 

「北米行き」を懇願したり、敢えて「 懲罰 」を選ぶ人もいた。

 

英軍は 1762年6月に ハバナに到着し、街を包囲。

 

防衛に有利な「 蚊が発生する時期 」であったが「 雨季 」が

ずれたため “防衛” が起こらず ハバナは降伏するが、

 

実はこの時、英軍には 軍務遂行できる兵士は 39% しかいなかった。

 

さらに ハバナを手に入れた後も 1万5000人のうちで

生存し、かつ健康な兵士が 880人にまで減る事に。

 

マラリアの治療薬「 キニーネ 」もあったが、高価だっため

「 将校向け 」だったり、

 

投与量が 少なかったりで 効果が出ない事もあった。

 

英軍は 有利ではあったものの、資金は尽き、兵士の感染症での死亡率も 50%と 大きく消耗しており、結局は 交渉して 条約

( パリ条約 )を結ぶ事に。

 

 

 

「 第一二章 不可譲の刺咬  アメリカ独立戦争 」

 

「7年戦争」後、米大陸で 先住民との「 ポンティアック戦争 」が起こるが、

 

その時の イギリスの対応(「 1763年 宣言 」)と、

 

これまでの扱い( 政治・財政の介入 )から イギリスと平等な

関係でいたいとの期待が高まり、そこから「独立戦争」が勃発。

 

 

戦争開始時は、資金難ではあったものの 英軍が 港を封鎖する

などし( 米国側は 物資の補給が 出来ない ) 優勢だったが、

 

徐々に「 蚊媒体 感染症 」の影響を受け始める。

 

1780年、英国艦隊が カリブ海の ニカラグアに 海軍基地を

設けるが マラリア黄熱デング熱により退却、

 

生存者は 兵士3000人のうち、500人であった。

 

1781年 8月1日、兵士を守るため「 蚊 」を避けていた

英軍・コーンウォリス将軍は 司令官の命令で ヨークタウン※に

 

( ※ あの ジェームズタウン から 直線距離で 24キロ )

 

野営する事になるが、その後 ヨークタウンに 到着した フランス艦隊※により 包囲されてしまう。

 

 

( ※ 1778年に フランス、 翌年に スペイン

その後に オランダアメリカに付き 参戦。

 

ちなみに イギリスドイツの傭兵を 3万人 雇ってます )

 

 

10月19日に コーンウォリスは降伏するが 8700人の兵士のうち、任に耐えられる兵は 3200人であった。

 

死亡者や 負傷者もいたが、共に包囲されていた ドイツ傭兵

報告によると

 

「 ほぼ全員が 熱病に苦しんでいた。~

英軍兵士で 健康なのは 1000人もいなかった 」

 

らしい。

 

 

 

「 第一三章 蚊の傭兵たち

解放戦線と南北アメリカの発展 」

 

フランスの「 重商主義 経済 」の35% を生んでいた、

フランス植民地の ハイチ( サン・ドマング )では

 

ヒドイ扱いを受けていた 奴隷による反乱(「 ハイチ革命 」)が 散発的に起こっていた。

 

自国の「 カリブ海植民地 」への影響を危惧していた 英国

1793年に 反乱の鎮圧に介入するが、

 

それには「 フランスの植民地を奪う 」目的もあった。

 

だが、ハイチに送られた 未順化( 感染症に なれてない )

英軍兵士 2万3000人のうち、

 

1万5000人が マラリア黄熱で亡くなった事で 撤退。

 

他の国の「 カリブ海植民地 」を狙うが まったくの無駄で、

 

1804年に(「 対 ナポレオン 」のため ) 断念するまで

6~7万人の兵士が 亡くなったようだ。

 

 

1801年、ナポレオンハイチでの反乱を止めるべく 義弟の シャルル・ルクレール将軍を送り込むが、

 

ハイチのリーダー、トゥサン・ルヴェルチュールの ゲリラや

焦土作戦により 湿地に おびき寄せられ 閉じ込められてしまい、

 

1802年、兵士増援の報告から 一か月後に ルクレール

黄熱病で 亡くなる。

 

 

 

「 第一四章 『 明白な天命 』と蚊

綿花、メキシコ、奴隷制度、米国南部 」

 

1820年代、米国は「 タバコによる利益 」が 横ばい状態になった事から 栽培に適した地域から 先住民を追い出して

 

「 羊毛 」の代替品の「 綿花 」を生産、米国南部だけで 85% を生産するまでになる。

 

1846年、米国は アジア市場への参入のため 米大陸の

「 西側 」※ と( カリフォルニアの )「 港 」を手に入れる

べく、メキシコに 宣戦布告(「 米墨戦争 」)。

 

 

〔 ※ 西へ 領土を拡大するのが 神が定めた運命( 明白な天命 )という 考え 〕

 

 

メキシコの サンタ・アナ将軍は「 メキシコシティ 」へと向かう 米軍・スコット将軍を「 沿岸に 足止め 」させて 弱らせようとするが、

 

スコット将軍は「 沿岸の低湿地 」を 意図的に避け 首都へと

進み、陥落させる。

 

ちなみに この戦争は 米国内でも 不評だったみたいですね。

 

 

 

「 第一五章 自然界から不吉な使い  南北戦争 」

 

1861年、米国で 北の「 工業 」と 南の「 綿花 」を巡る

貿易方針( 保護と自由 )の違いや、

 

貧しい白人の 賃金を上げるための「 奴隷制 改革 」※を巡って

「 南北戦争 」が勃発。

 

 

〔 ※「 無償の 奴隷労働 」があるため 白人の賃金が安い。

 

当初は「 奴隷解放 」ではなく、「 奴隷が働けない土地 」

( 自由土地 )を作るのが目的だった 〕

 

 

「 海上封鎖 」などで 北軍が有利であったが マラリアの影響や、それによる「 ヴィックスバーグ要塞 」攻略の失敗もあり

戦争は 長期化。

 

そこで 北軍( リンカーン )は「 マラリアに耐性のある 」 

アフリカ系奴隷※ を「 奴隷から解放 」する事で 兵士を増やすことに。

 

これは 南軍の労働者を減らす 目的もあった。

 

 

( ※ 実際は アフリカ系奴隷の「 蚊媒体 感染症 」の耐性は

すでに薄れていて 白人と 変わらなかったらしい )

 

 

その後、北軍・グラント将軍は「 解放奴隷 」を中心とした

部隊、さらに「 キナの皮 」10トン、「 キニーネ 」19トン を持ち、ヴィックスバーグ要塞を包囲し、降伏させる。

 

ちなみに この事で「 キニーネの価格の高騰 」が起こってます。

 

 

 

「 第一六章  蚊の正体を暴く  疾病と帝国主義 」

 

1868年から始まった、スペイン植民地の キューバの反乱

( 第一次、第二次 キューバ独立戦争 )は、

 

経済的に キューバと結びつきが強い 米国が 1898年に 介入する事で※ 決着が付く。(そして米国の「 傀儡政権 」になる)

 

 

( ※ 1898年2月の「 巡洋艦メイン号 」の爆発を スペインのせいにした。

 

長い月日を経てから「 ボイラー室の偶発的な火災 」だったと

発表される )

 

 

1895年に 始まった「 第二次 キューバ 」で スペイン軍

23万人を送っているが、

 

この時の スペイン軍の死者 4万5000人のうち、90% が

病死で、その主な死因は マラリア黄熱病であった。

 

ちなみに 米国もこの頃「 キューバからの避難民 」によって

黄熱病が 大流行してます。

 

 

1880年、患者の血液から マラリアを発見、

 

1897年に「 鳥マラリア 」が 蚊を媒介とする事から

「 ヒト マラリア 」も同じとの仮説がなされ、

 

その後 ハマダラカが「 ヒト マラリア 」を拡散させるのが証明される。

 

米国は「 公衆衛生分隊 」を作り キューバの「 蚊の発生 場所 」を減らす事で「 黄熱病 」※をなくす。

 

が「 マラリア 」と「 デング熱 」は 根絶できず。

 

( ※「 黄熱病 」は ヤブカが 媒介する )

 

 

 

「 第一七章 こちらがアンだ、君にとても会いたがっている

第二次世界大戦、ドクター・スース、DDT」

 

 

「 第一次 世界大戦 」時、「 蚊媒体 感染症 」の被害は少なかったが 終戦後に 流行。

 

その時の「 マラリア感染者数 」は 一年あたり 全世界で 平均

8億人と 推定されている。

 

ちなみに「 スペイン風邪 」も この頃。

 

「 第二次 大戦 」時、米国は「 殺虫剤 」としての特性が認められた「 DDT 」を大量生産し、

 

マラリア対策部隊が「 蚊 」を駆除するため散布していた。

 

戦後は 世界中で DDTが 使用され、1930年から 1970年の間に「 蚊媒体 感染症 」は 90% 減少。

 

大戦中には 合成抗マラリア薬「 アタブリン 」が 開発されて

おり、後に「 クロロキン 」も発見される。

 

ちなみに「 章タイトル 」の「 アン 」は、

 

「 蚊の危険性を訴える 」時に 使用された、絵本作家の

ドクター・スース が描いた “メスの蚊” のキャラクターの事

です。

 

 

 

「 第一八章 沈黙の春とスーパーバグ  蚊の復活 」

 

1962年に レイチェル・カーソンが 書いた『 沈黙の春 』※ がヒットし 徐々に DDTは 禁止されるが、

 

( ※「殺虫剤」や「化学薬品」の 自然への影響を訴えた内容 )

 

すでに「 DDT耐性の蚊 」が現れており 効果は 薄く、

 

マラリアにしても「 耐キニーネ 」「 耐クロロキン 」を持つ

マラリア原虫が 見つかっていた。

 

 

1972年、中国で 昔の書物に書かれていた 植物、

 

クソニンジンから 抗マラリアの効果がある「 アルテミシニン 」が発見されるが 市場に登場したのは 1999年※。

 

( ※ ベトナム戦争や 冷戦、「 HIV ウィルス 」登場など

要因は さまざま )

 

その「 抗マラリア薬 」も 2008年には「 耐性株 」が確認される。

 

高額になるが「 マラリアの適応を遅らせる 」、

別の「 抗マラリア薬 」との「 併用療法 」が行われず、

 

安価な「 単独仕様 」が多かった※ のが「 耐性 」が早まった

要因らしい。

 

 

( ※ マラリアに「 耐性 」が付く前に たくさん売れ…みたい

な事らしいが、そもそも 高額で買えないってのもある )

 

 

 

「 第一九章 今日の蚊と蚊媒体感染症  絶滅の入り口? 」

 

1999年、米国に「 鳥から 人へ、蚊を媒介して伝播 」する、

ウエストナイル ウィルス 」が到来し、大流行。

 

感染者の 80~90% は 発症せず、残りも インフルのような

症状だが、0.5% は 重篤化、死ぬ事もある。

 

「 リオ五輪 」で 話題になった「 ジカ熱 」も 世界に広がる。

 

ウエスト 」と同じく 感染者の 80~90% は 症状が出ず、

重症化は 1% 未満。

 

だが、性行為での感染があり、妊婦に至っては「 垂直感染 」により胎児が「 小頭症 」になる事も。

 

あと、「 ギラン・バレー症候群 」の 一因でもあるようだ。

 

 

利益率が悪いため「 蚊媒体 感染症 」関連の研究が おろそかになっていたが、ゲイツ財団が「 蚊・マラリア撲滅 」のための

資金提供を 始める。

 

新技術の 遺伝子編集ツール「 CRISPR( クリスパー )」が 発見されると それにも 出資。

 

こちらは「 蚊 」を「 ゲノム編集 」し、マラリアを媒介できないようにする狙いがあるようだが 危惧もあり…。

 

 

「 終わりに 」は カット。

 

とまあ、こんな感じの内容です。