SF2冊「 未来からの脱出 」、「 SFショートストーリー 破滅篇 」 | berobe 映画雑感

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「 映画 」と「 本 」の感想

残りの「 SF 」作品2冊。

 

 

 

「 未来からの脱出 」  小林泰三

 

SF・サスペンス。

 

 

電動車椅子にる「 老人介護(と 思われる)施設 」の入居者、

サブロウ

 

は 自身の「 認知症 」を 疑いつつも、「 入居の経緯 」の記憶が無く、「 年齢 」も わからず( かなり高齢らしい )、

 

テレビで「 過去の映像 」が流されている事などから「 施設 」に漠然とした疑問を抱いていた。


そもそも 介護者たちは こちらの言葉は 伝わってはいるものの

「 未知の言語 」を喋っているのだ。

 

そんな折、サブロウは 自身の「 日記 」に

 

「 このメッセージに気づいたら 慎重に行動せよ ~

ここは 監獄だ 」

 

との「 暗号文 」を発見する。

 

どうやら「 協力者 」がいるらしい事が わかった サブロウ

仲間を集めて「 施設 」からの脱出を計画するが……

 

 

 

「 カバー装画 」は 明るい感じですが 内容自体は 著者らしい

要素が満載の「 少しハードめ 」でもある「 SFエンタメ 」です。

 

まあ、著者がよく描く「 堂々巡りの 対話( 推論・推測 )」が多くあるので、人によっては “イライラ” するかもしれませんが。

 

「 話 」としては「あらすじ」から わかる通り「 脱出モノ 」。

 

「 プロローグ 」から “巨大な○○” が登場するので チョット

不安になりましたが、

 

入居者たちの現状が 分かるとともに「 脱出の困難さ 」も

浮かび上がってきて ワクワクしてきましたね。

 

個人的に、時に 小林泰三 作品に「 ジョジョ風味 」を覚えるんですが、

 

今作でも『 ジョジョ 6部 』「 ジェイル・ハウス・ロック 」を想起しましたよ。

 

それと 中盤の「 施設の目的 」が明かされてからの「 設定 」の着眼点も 素晴らしく、シビれましたね。

 

 

素晴らしかったので 簡単に 白字で その「 設定ネタバレ 」。

自己判断&責任で お願いします。

 

ここから「 設定ネタバレ 」

 

AI 」+「 ロボット三原則 」+

「 デザイナーベイビー による 変異人類 」。

 

“人間から かけ離れた姿” の 変異人類に「 ロボット三原則 」

( 人に危害を加えない、命令を聞く )が 当てはまらなくなる。

 

(「 人間の定義 」が曖昧になる )

 

変異人類は 多くいるが「 人間として 認識されない 」ため

AI・ロボットと「 時に対立 」( 一方的に 惨殺される )、

 

元の人間は 残りわずかなため「 三原則 」により

AIが 隔離保護( 人類を守る )」。

 

今は AIをまとめる 超AI が独自に「 人間を定義 」しているが、いつか その「 定義 」が変わるかも…みたいな感じの設定。

 

端折ったけど「 変異人類が 生まれた 経緯 」の説明も ちゃんと

あります。

 

ここまで。

 

 

気になっていた「 本格ミステリー 」の要素ですが、

それは「 ほぼ無し 」…かな。

 

一応、終盤に「 一風変わった 密室殺人 」がありますが、

それも「 本格 」よりも「 論破対決 」(?)の展開として

機能してましたし。

 

( とはいえ この展開も 面白かった )

 

という事で「 SF好き 」なら 楽しめそうな作品かな。

 

個人的にも「 SF 」としての 満足感は高かったですね。

 

 

 

 

「 SFショートストーリー

傑作セレクション 破滅篇 」

 

著: 矢野徹福島正美、 筒井康隆、 平井和正

横田順彌、 川又千秋、 星新一

 

編:日下三蔵

 

 

“子供向け”( 内容は普通 )の「 SF短篇集 」シリーズの

テーマ「 破滅篇 」。

 

全7作品 収録。

 

このシリーズは 全8巻で これが最後になります。

 

気になるテーマ「 破滅 」だったので 最後に取っておいたんですが、「 静か 」な作風が多くて チョット物足りなかったですね。

 

あと、オーソドックスな設定( 戦争 )が多かったのも 少し

残念。

 

 

 

「 海月状菌汚染 」  矢野徹

 

北海道の千歳基地に 現れた 狂暴な犬

そのに襲われた 隊士長は 発熱後に「知能の低下」を起こす。

 

輸送機を使い 隊士長を東京に送ることになるが、隊士長は 上空で「 犬の幻影 と 恐怖 」に囚われ 飛び降りてしまう…。

岩手県の村で「 村人飼犬野犬に襲われる 」事件が多発、死者も出る事態に。

に襲われた者からは 未知の病原菌、“海月(くらげ)状の菌” が発見されるが……。

 

 

という、まさかの「 犬パニック 」作品。

 

「 未知の菌 」により「 犬の知能は 向上 」し、

「 人の知能は 低下 」する設定が面白い。

 

ただ「 知能を持った 犬たちの脅威 」は スリリング でしたが、

 

「 菌 」については「 感染経路 」( 空気感染も? )が

よくわからないため サスペンス感は 少なく感じましたね。

 

 

 

「 白い大陸が燃えるとき 」  福島正美

 

「 南極で勃発した 米ソの戦争 」を、

昭和基地の隊員たちの視線で 淡々と描いた 作品。

 

「 南極の寒々しい環境( 描写 )」と「 戦争の始まり 」が妙にマッチしていて 心が冷える内容でした。

 

 

 

「 到着 」  筒井康隆

 

ナンセンスな内容の、わずか「 5行 」の ショートショート。

 

コレは前に 短篇集『 秒読み 』で読みました。

 

短いので 書くことない…。

 

 

 

「 世界の滅びる夜 」  平井和正

 

夜、突然「 今夜限りで 世界が破滅する 」事を知った

だが の心は落ち着いたままであった……。

 

「 穏やかな心境で迎える 世界の終わり 」の話って ところでしょうか。

 

超・地味ですが、しんみり、しっとり とした雰囲気は

悪くないです。

 

 

 

「 かわいた風 」  横田順彌

 

「 かわいた風が吹く ある星を訪れた 放浪者 」、

「 戦争を危惧している 学者たちの “ある計画” 」と

「 教育を受ける 女の子 」。

 

三つの視点で「 戦争前 」「 戦争後 」「 さらにその後 」

描いた内容。

 

これまた 地味だけど、少しミステリーっぽくもあって 結構

好きかな。

 

でも、紀年が「 エデン 」、…の名前が「 アップル 」と ベタなのは 舞台がアメリカだから まあ、いいとして、

 

そもそもの「 あの計画 」が ツッコミどころ満載なのが惜しい。

 

…と 思ったけど、もしかして アレは アメリカに対しての

「 皮肉 」なのかもしれないと 思い直しましたよ。

 

 

ちなみに「 編者解説 」によると 最近わかった事として、

 

発表当時、感銘を受けた「 日本大学 芸術学部 」の学生が

「 短編映画化 」しており、そのスタッフに 片渕須直 監督が

いたということです。

 

 

 

「 双星記 」  川又千秋

 

2万年の間、空気や 水が無くなる「 冬 」が近づく星。

多くの人々は「 移民船 」で 他の惑星に、残った人々

「 冬眠都市 」で「 春 」まで 眠る事になっていた。

 

技師のため「 冬眠組 」の ジョセルは 最後の移民船を見送った後、「 生物の復活 」を信じ ここで死ぬ選択をした 高齢の

ラーオ先生 に 会いに行くが……。

 

 

氷河期到来による「 冬眠 」と「 他の惑星への 移住 」、

2つの選択がある話は チョット珍しいかも…。

 

空気や 水が生まれる「 春 」の仕組みは よくわかりませんが、

 

今の地球を 皮肉ったような? オチ( 本書からすれば こっちがメインだった )は 良かったですね。

 

 

 

「 ひとつの装置 」  星新一

 

戦争により人類が滅亡し、荒廃した都市。

その広場の真ん中に「 円筒形の金属物体 」が ひとつ、取り残されていた…。

研究所の所長が 私財を全てつぎ込み、研究予算も 流用、

後に予算が支出されて 作られた、“腕一本” と スイッチのある

「 円筒形の金属物体 」。

 

所長が「 絶対に必要な装置 」と言う、その「 金属物体 」の

用途とは……。

 

 

謎の「 金属物体 」で グイグイ話を 引っ張る 手腕が見事だし、「 スイッチ 」を巡る 人々の反応も 面白かったですね。

 

オチの “キレ” は 言わずもがな、

本書の最後に ふさわしい「 締め 」でしたよ。

 

 

 

という事で、一番 好きなのは『 ひとつの装置 』

 

エンタメ性が まあまあ あった『 海月状菌汚染 』も 面白かったですね。