本格ミステリー2冊「 インソムニア・プロジェクト 」、「 図書館の殺人 」 | berobe 映画雑感

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「 映画 」と「 本 」の感想

残り、「 本格ミステリー 」2冊。

 

 

 

 

「 プロジェクト・インソムニア 」

結城真一郎

 

特殊設定(SF系)・本格ミステリー。

 

著者は 話題になったらしい 作品、

『 ♯真相をお話しします 』の人です。

 

その『 ♯真相~ 』は 読みたいような、読みたくないような…

そんな感じだったので、

 

とりあえず「 本格の度合い 」は 分からないものの、

「 設定 」が面白そうだった 本作を 読んでみました。


 

 

「 ドアが 物で塞がれた 」ホテルの 一室で、客である男性

「 睡眠中の心筋梗塞 」で 亡くなっているのが 発見される。

 

そこには「 装填された銃 」と「“口径が合わない” 大量の弾」、「 番号が書かれた 便箋 」があったが、「 事件性はなし 」と

判断される事に。

 

死体を発見した 男性従業員は こう呟いたという

 

「〈 夢の中で死ぬと 現実でも死ぬ 〉っていう都市伝説、

聞いたことないですか? 」

頭に入れた「 チップ 」により 睡眠時に「 明晰夢 」の状態に

なり、“ドリーマー” として 他者と 潜在意識が統合された

“夢”の世界「 ユメトピア 」を共有する 実験。

 

その「 インソムニア・プロジェクト 」と 名付けられた

「 90日間 」の極秘実験に、睡眠障害「 ナルコレプシー 」を抱える 蝶野(ちょうの)が 被験者の一人として参加する事に。

 

何事もなく実験は進むが 63日目の夜、被験者のひとり

死体と「 1人目 」と書かれた紙片が 現れる。

 

説明では「 ドリーマーは死なない 」とあったはずだが。

さらに ある「 悪意 」も判明し……

 

 

 

みたいな、「 夢モノ 」SF系( 特殊設定 )ミステリー。

 

てっきり「 1日~数日 」の出来事だと 思っていたら

「 90日間 」と 長期スパンの話でした。

 

( まあ、期間の「 三分の2 」は サクッと進みますが )

 

 

冒頭の 意味深な「 よく見る夢1 」

その後の「 プロローグ 」=「 ホテルでの 謎の “心筋梗塞死” 」

から 興味を惹かれる展開。

 

「 事件? 」が起きてからの「 疑心暗鬼 」展開も イイ雰囲気だったし、

 

「 ミステリー 」としても「 夢と現実の 死の関係 」

「 犯人と “その方法” 」蝶野の彼女の「 不可解な行動 」

 

などがあり ダレは 感じませんでしたね。

 

あと、被験者それぞれが「 抱えているモノ 」も 切なかったり、

 

「 夢の誘惑 」も描かれていたりと「 人間ドラマ 」としても

結構 楽しめたかな。

 

読み終わってみれば「 少々 煽り過ぎ 」だった気もしましたけど…。

 

 

で、肝心の「 本格要素 」ですが、これが 思っていたよりも

ありました。

 

ちゃんと ユメトピアの「 ルール説明や その検証 」はあるし、「 手掛かり・情報 」も 不足なく( 少し多めかも? )、

 

で「 フェア度 」が高いんですよね。

 

個人的にも「 情報・推測と ざっくり推理 」で 周辺部分は

まあまあ 解りました。

 

まあ、結構 “デカい” のは 見落としてましたけど…。

 

 

という事で「 チップ 」の設定とかは 少し強引かな、とは思い

ましたが、「 本格ミステリー 」としては「 SF系 」が大丈夫なら 楽しめそうな感じですね。

 

あと、普通に「 SFエンタメ 」として読んでも 面白いと思いますよ。

 

 

 

「 図書館の殺人 」  青崎有吾

 

青春・本格ミステリー。

 

『 体育館の殺人 』『 水族館の殺人 』に続く、

「 裏染天馬 シリーズ 」長篇・第三作目。

 

「 連作短篇 」もありますが、シリーズとしては 今のところ

この「 三作目 」で 止まってます。

 

ちなみに『 体育館 』は フツーでしたが、

『 水族館 』は 面白かった記憶が ありますね※。

 

( ※「 本格ミステリー大賞 」の 候補作品でもある )

 

って事で『 図書館 』も 読む予定でしたが、

 

「レビュー評価」が低め( 今見ると ちょっと上がってるが )、

あと「 強引 」みたいな感想もあり 躊躇、

 

長年「 放置状態 」でしたが( 今のところ )「 残り一冊 」を

残したままだと なんか「 モヤモヤする 」ので 読みました。

 

 

 

「 期末テスト 」の前日の夜、

生徒・城峰有紗( しろみね・ありさ )は 気分転換も兼ねて

「 図書館 」近くの自販機に。

 

その直前、彼女叔母から「 従兄・恭介が そこにいないか 」

という旨の メールを受けていた。

早朝、「 風ヶ丘 図書館 」に出勤してきた 司書2人は「 2階 」で 常連の大学生、城峰恭介(・きょうすけ )の「 殴打 」死体を発見する。

 

現場である「 書架の前 」には「 血だまり 」ができ、

「 本 」も 数冊散らばっていて 被害者の右手の近くには

「 く 」の形の「 血文字 」があった。

 

さらに その近くにあった 小説『 ラジコン刑事 』の表紙の

主人公にも「 血液 」で「 〇 」が付けられていた。

 

その後の 調査により「 現場 」と「1階の 貸出カウンター 」に残っていた「 血液 」から

「 昨夜、襲われた人物がもう一人いた 」ことが判明するが…。

「 風ヶ丘 高校 」の 4日間に渡る 期末テストが始まる。

 

学生ながら 学校の「 部室 」で暮らす、学力・推理力も高いが

アニメ好きの駄目人間、裏染天馬( うらぞめ・てんま )は

警察からの 要請で「 アドバイザー 」( バイト )として捜査に協力する事に。

 

だが、現場に着いた 裏染は「 “血液”のダイイング メッセージ 」を 重要視しては いなかった……。

 

 

 

「 ライト 」な文体と キャラの「 掛け合い 」が なんだか

「 アニメ・チック 」な ミステリー作品。

 

探偵役( 主人公 )である、裏染( と 著者も?)が

「 アニメ好き 」って事もあり、アニメが元ネタ と 思われる

「 小ネタ 」が 結構あるっぽいです。

 

私は 詳しくはありませんが ニュアンスは なんとなく

わかるので 結構 ニヤニヤしちゃいましたね。

 

あと、学校も舞台って事で「 ミステリー 」のほか、

「 学園コメディ 」や「 青春モノ 」の趣もあります。

 

個人的には 駄目人間の 裏染天馬の「 奇行めいた 調査 」や

「 言動 」が 結構 笑え、楽しく読めましたね。

 

「 シリーズもの 」って事で 登場人物も 多いですが、

本書だけ読んでも おそらくは 大丈夫かな。

 

私自身も 裏染 以外、ほとんど忘れてましたし。

 

 

メインの「 本格 」は「 ロジック寄り 」になるのかな。

 

そのため、「 推理 」や「 検証 」が 多いのは イイんですが

「 少し 盛り込み過ぎ 」にも 感じました。

 

そこらへんが たぶん、「 強引 」という感想に繋がった 要因の

ひとつ かも…。

 

個人的にも トイレのくだりが「 無理っぽく 」思えましたね。

 

ですが、他のところは「 世界観 」なども 加味して考えれば

だいたい 許容範囲内。

 

終盤の「 条件の提示 」と「 手掛かり 」から

「 論理立てて 犯人に 迫っていく 」流れも 良かったし、

 

その「 手掛かり・情報・伏線 」も しっかりあったので

「 本格度 」や「 納得感 」は “高め” に 思えました。

 

特に「 視点 」のヤツは 目から鱗でしたね。

あと、犯人も 良かったな~。

 

ただ、最後のアレは ちょっと モヤモヤ…。

 

ちなみに よく言われる「 動機 」の方は 個人的には 気になりません。

 

 

という事で「 本格ミステリー 」としては 満足できたし、

あと、「 学園コメディ 」的な 作品としても 楽しめましたね。

 

 

「 アニメっぽい 」( ラノベ?っぽい )作風なので

「 本格 」と それ系が 好きなら 面白く読めるのかな。