今月 読書は
SF系・本格ミステリー
「 虚擬街頭漂流記 」 寵物先生( ミスター・ペッツ )
SF短編・アンソロジー
「 SFショートストーリー 傑作セレクション 未来編 」
星新一、 筒井康隆、 眉村卓、 小松左京、 河野典生
編 : 日下三蔵
犯罪捜査・ミステリー
「 スワロウテイルの消失点 法医昆虫学捜査官 」 川瀬七緒
の3冊。
まずは 「 SF・アンソロジー 」から。
「 SFショートストーリー 傑作セレクション 未来編 」
星新一、 筒井康隆、 眉村卓、 小松左京、 河野典生
編 : 日下三蔵
「 ジュニア向け 」( 内容は 普通 )SF短編・アンソロジーの「 未来編 」。全5作品。
「 ゆきとどいた生活 」 星新一
「 朝、テール氏 が出勤の準備をし、会社に 到着するまで 」 を
描いた話。
「 室温や日光の 調整 」、「 着替え 」、「 朝食の準備 」 から 「 出勤 」
まで、 全てが 自動化された住居 を舞台に 「 未来の 出勤風景 」が
描かれているんですが、
実は…だったという、 星新一らしい オチ でした。
まあ、「 ミステリー好き 」※の人は すぐ気づくと思いますが…。
( ※ ネタバレ 白字表記
「 テール氏は すでに 亡くなっていた… 」 という、「 倒叙トリック 」を
用いた オチ。
ミステリー的に「 フェア 」な描写で、「 本格ミステリー 」としても
面白かったですね )
「 人口九千九百億 」 筒井康隆
人口が 「 九千九百億人 」になった 地球。
地球と 国交正常化した 火星から 大使が到着するが…という話。
地球の人口が 増えたため 人々が 「 地球を 覆うのような 」
( 海も 覆っている )「 広大な 超高層住宅 」の 「 狭い部屋 」に
住んでいる という、ブラック・ユーモア溢れる 設定。
エレベーターも 「 他の施設と兼用 」ってのが バカっぽいんですが、
それでいて
「 部屋や 廊下が 狭いため、地球人の背が低くなっている 」 とか、
「 重力の関係で、火星人より 背の低い地球人の方が 力が強い 」
など、
ちゃんとしている?部分もあるため、リアリティも 少し 感じました。
なので 垣間見える「 ディストピアな情景 」にも イヤな気分に
なりましたよ。
「 通りすぎた奴 」 眉村卓
3年ほど前に “ぼく” が出会った、
「 歩いて 階段を上り、最上階を目指している 」 “旅人”。
ふと、今日が 「 “旅人”が 最上階に 着く日 」だと 思い出した
“ぼく” は…
という、こちらも 「 超高層住宅 」が舞台の話。
ですが、こちらは 「 横 」だけでなく、「 階数が 1万階越え 」と
「 縦 」にも 長く、
エレベーターに 数時間乗りっぱなしの 長距離移動は あたりまえ、
という ( 考えただけで 気が滅入る )設定。
始まりも 「 駅弁 」ならぬ 「 エレ弁 」( エレベーター弁当 )の くだり
からでしたね。
くだんの 旅人の「 終着階 」( 2万 5130階 )への到着を 見ようと
ぼくは その階に 向うんですが、
その過程で 「 歩いて 最上階を目指す 」 旅人が
一部の人々から「 神格化 」されている事を 知るんです。
最初、人々の 「 “旅人”の神格化 」は
「 失われた 冒険心や 挑戦心 」から来たのかと 考えていましたが、
読んでいるうちに 人々が抱えている「 心の空洞 」( 空虚さ、喪失感 )の表出 という印象の方を 強く 感じましたよ。
最上階の「 窓の外の “闇” 」も 「 真っ黒な空洞 」を思わせますし。
最後、旅人( 聖人 )は 「 人々の 空洞( 空虚 )を埋める 」事に
なるけど、
「 すぐ 旅人が消えた 」ように それは 長続きしないような気が…。
それとも、「 幸福 」をもたらす 存在として 変わらず「 聖人 」( 神?)で
あり続けるのか…。
イイ話かと 思いきや 「 意外な結末 」で 好みの作品でしたね。
「 カマガサキ 二〇一三年 」 小松左京
高架下の土管に 住んでいる 乞食の 泉州(せんしゅう)と
河内の兄貴。
飢え死にしそうな 二人の前に 「 500年先から来た 」 未来の乞食が 現れる。
その、未来のインテリ乞食の提案で、
乞食宗家が 吹き込んだ 「 物乞いのテープ 」を 現代に 合った形に
作りかえ、 「 誰もが 気持ち良く 寄付できる 」 “コジ機” を作るが…。
「 科学の進歩 」や 「 消費社会 」、「 資本主義 」を シニカルに
描いた 社会派・SFコメディ 作品。
乞食二人は 「 土管 暮らし 」ですが、家電は まだ使えても 古くなれば
捨てられるため、
「 エアコン 」や 「 冷蔵庫 」、「 掛け軸型・テレビ 」を持っていて、
おまけに 「 自動ドア 」でもあります。
でも「 物 」はあるのに、「 能率の良い 」ロボットに 仕事を奪われ
「 職 」( 食 )は無く、
そのロボットにしても、新しいロボットが 来れば “クビ”っていうのが
切ない…。
“乞食”自体も、対価を払って 「 元締めに 株をわけて 」( 免許を )
もらわなければ いけないなど、かなり 世知辛い 世の中。
未来乞食の知識で “コジ機”を製作、お金を 稼げるようになるも、
「 満たされない 心の飢え 」( これもまた 空洞か ) から
「 贅沢の度合い 」が ドンドン増し、結局は・・・となる 結末も
やるせなかったな~。
「 緑の時代 」 河野典生
新宿の朝、若者4人が “苔” を見つける。
その苔は 街中、建物内に ジワジワと 広がっていくが、
4人意外には 見えないのだった…。
「 ネタバレ 」に なりますが、
本作は 「 街に広がる “苔” と、その“現象”が ゆっくり進行する 」、
「 世界崩壊 譚 」 で、
どちらかというと 「 ファンタジー寄り 」の話です。
「 心のエネルギー 」から 生じたらしい その“苔” が、
“喪失”からは 「 死 」と 「 崩壊 」を、
“逃走” からは 「 透明 」の現象を 起こすんですが、
ヒッピーの主人公や、当時( 1972年頃 )の 社会・世界情勢
( 環境問題、戦争 など )を考えれば、
“現象” は 「 自然回帰 」や 「 憂い 」なんかの暗喩に 思えましたね。
まあ、私は この「 世界崩壊 譚 」を
「 世界系 」( 個人が 世界に 影響を及ぼす )作品として 楽しみ
ましたけど。
全作品に 「 空虚さ 」が漂っていましたが、
それでも 読んでいて 一番 楽しかった( そして 切なかった )のは
『 カマガサキ 二〇一三年 』 ですね。