今月 読書2
「 怪談 」掌編集 と 「 SF 」短編集 の 2冊。
「 大江戸怪談 どたんばたん ( 土壇場譚 )」
平山夢明
時代物の「 怪談・奇譚 短編集 」で 全33本。
前口上( 前書き )によると、著者は
杉浦日向子の 漫画『 百物語 』※に 影響を 受けて、「 時代物 怪談 」を 書きたくなったようです。
( ※ 「 文庫版 」が 何故か家にある。
かなり前に 少しずつ 読んだが、ほとんど 覚えてない… )
「 各話 」は 数ページから 多くても 十数ページ。
なので 空いた時間に 少しずつ読める 感じですね。
内容としては、個人的には 「 残酷系 」を 期待したのですが
それは “少なく” で、
「 怪異 」、「 恨み 」( 復讐 )、「 物の怪 」と
意外と 普通っぽい 怪談・奇譚が 多かったです。
それでも 著者らしい 「 残酷 描写、展開 」もあったので、
そっちの面でも それなりに 満足は できたかな。
特に 「 “邪”( よこしま )な思い 」を 抱いた者が 出て来る話は 大抵
“その者” が 「 悲惨な目 」、「 ヒドイ目 」に 遭う ので、
かなり 凄惨な状況では あるんですが、結構スッキリ(?)しますよ。
もちろん、「 悲しい 」、「 切ない 」話や 「 しんみり 」する話もあるので、
普通の人(?)でも 十分 楽しめると 思いますね。
個人的に 面白かった作品を 少し紹介。
「 畳地獄 」
客から お金を ちょろまかし、隠している 按摩 から
「 お金 」を 盗もうとする “男” の話。
タイトル通り 「 畳 が 地獄の入り口になる 」※ “異次元” 展開には
心が躍りましたね。
“ろくでなし” ばかり 出て来るのも 楽しかったな~。
〔 ※ サム・ライミ 監督の 『 スペル 』(09年)の ラストっぽい? 〕
「 耳閻魔 」
働き者の腰元 に 「 幻聴が聞こえ始める 」…という 怪異譚。
なんですが、なんと 付喪神 みたいに(?)
「 “耳垢”が 妖物化し、囁いていた 」( ← ネタバレ白字 ) という
想像の斜め上を行く? オチには 心が高鳴りましたね。
「 小便榎 」
「 人を 斬りたくなり 」隠れて 人を待ち伏せていた 侍。
ようやく “男” が現れ、斬り殺す機会が 訪れたが、その “男” が
小便を し始め…という 話 なんですが、
“男”の小便が止まらず、「 小便待ち 」になる という、
なんとも 滑稽な展開に なるんですよ。
この、「 男の小便は 止まるのか 」、「 侍は 男 を斬れるのか 」 の
何だかよくわからん サスペンス(?)が じれったくて、超・楽しかった
ですね。
オチも、一応 合理的な解釈も 出来そうなのが 個人的には 良かった
な。
「 返礼 」
獲物( 動物 )の「 仔 」まで殺す 凄腕の猟師 が、ひょんなことから
石の中から 小判を見つけて…という話。
動物たち の「 復讐 」ってのが 面白く、
人間共の「 強欲さ 」を 利用した「 仕返し 」も 小気味よい。
「 しゃぼん 」
「 遠くにいる わが子 」を “しゃぼんの膜 で 遠視する” 女 の話。
後半の ( 平山作品 らしい )「 女の容貌の変化 」の理由 は かなり
やるせないんだけれど、
その後の 母( 女 )と 子供の 「 距離を 超えた 呼応 」には 感動を
覚えましたよ。
ですが、オチは まさかの・・・で 仰天。
「 異次元系・怪異 」としても 秀逸 でしたね。
「 人独楽 」
「 人が恥を かいている姿を 見るのが好き 」な 両替屋の男 が
人気の「 軍鶏鍋屋 」の店主に 因縁をつけ、自殺に追い込む。
しばらくし、両替屋の男の「 味覚 」が無くなるが…という話。
両替屋の男の 軍鶏鍋屋・店主 を
「 精神的に 追い詰める 」( 悪意ある 客ハラ、カスハラ )描写は
嫌悪感 抜群 で、イヤな気持ちに…。
そこからの 「 凄惨な結末 」に 溜飲が下がりましたが、
「 壮絶な状況 」でもある ので ( タイトルの意味もわかる ) 後味は
スゴく 悪いんですよ。 ( 褒めてます )
「 SFショートストーリー 傑作セレクション ロボット編 」
星新一、 筒井康隆、 矢野徹、 平井和正、 小松左京
編集者 : 日下三蔵
タイトル通り 「 SF・短編集 」で、全5作品。
サクッと 「 SF 」が 読みたかったので 気になっていた コレを 借りて
みました。
筒井康隆、星新一 以外の 3人は「 初読み 」です。
この 『 SFショートストーリー 』シリーズ は 「 ジュニア向け 」の本で、
字もデカく、フリガナも ふられています。
あと、最後 「 編者解説 」( アシモフ 「 三原則 」、ロボ漫画 など )と、
「 著者プロフィール 」も載っている 親切な 内容です。
本作は 「シリーズ 第一弾 」で、この『 ロボット編 』( 第2巻 )の他に
『 時間編 』、『 異次元編 』、『 未来編 』が あります。
「 花とひみつ 」 星新一
花が好きな 女の子 が描いた 「 草花を世話する モグラ 」の絵 から、
モグラ・ロボ が作られ…という、ほんわか作品。
「 編者解説 」によると この作品は イラストレーターの 和田誠の
「 絵本を作りたいとの依頼に 応えて 書かれたもの 」 で、
小学校の教科書に 載ったりも しているようですよ。
「 お紺昇天 」 筒井康隆
人工頭脳( 知能 )を持つ
「 一人乗りの 小型自動車 」・“お紺”( 車の色 から 命名 )と、
持ち主の男、 2人(?)の「 別れ 」を描いた 作品。
故障を 起こした お紺が 男( お紺が 付けた呼び名 が “ターター” )に 「 別れ 」を切り出すんですが、
その “彼女”と 未練たっぷりな男の 「 やり取り 」( 掛け合い ) は
「 男に 妻子がいる 」事もあって 「 男と 愛人の 別れ話 」にも
感じるんですよね。
お紺「 奥さんが怒るわ 」、 男「 怒らせとけ 」 なんかは そのまんま
だし。
( ターターという 呼び名を 付けるところも 愛人っぽいな~ )
男が 「 大型車 」に対して 「 グラマーは 大嫌いだ 」と 言うなど、
ある種の「 偏愛 」、 車の「 擬女化?」も 想起され、
「 人間型 」じゃなく 「 ロボット車 」なのに なんだか アダルティな
雰囲気。
そういう事で ニヤニヤ しながら 読んでしまいましたね。
それでも 最後は 切なかったな~。
「 幽霊ロボット 」 矢野徹
「 主人のいない ロボット 」と 「 孤児の少年 」の 交流( 疑似家族 )譚。
何か、チャップリンの 『 キッド 』と、スピルバーグの 『 AI 』 を 思い出しましたね。
「 赤ちゃんロボット 」から 月日が経つにつれ サイズアップし、
成長していく 設定 なんですが、
それ故、ロボットの 「 おとぎ話の記憶 」が 切ないんですよ。
少年と ロボット、それぞれの 「 喪失 」からも 哀愁が漂い
湿っぽい気分になりましたね。
著者は 「 翻訳家 」として 有名みたいです。
「 ロボットは泣かない 」 平井和正
「 足を引きずる 」中古の 「 特Aクラス・女性型アンドロイド 」・アン を
家族の反対を 押し切って 購入した 男、リュウが 辿る
「 家族崩壊 」譚。
本書は 「 ジュニア向け 」なのに、
アンドロイド・アン の 前の持ち主 が 「 サディスト 」という設定 なんですよ。
しかも、アンが 足を引きずる事になったのも その暴力のためで、
名前も “卑猥な言葉” ( セクサロイド的な目的だった )ってのが
また 凄い…。
妻は 「 アンに 嫉妬 」、
子供たちも 「 アンを イジメる 」( ロボットは 反抗出来ない ) という、
「 人間の 暴力性、残酷性 」が 表出する展開に なるんですが、
「 木工芸家 」である リュウ自身も
「 芸術作品的な 視点 」で アンに 強く 惹かれている 節があり、
その 「 一方的な アンへの 想い 」や 「 家族を顧みない 姿勢 」に
ある種の傲慢さが 感じられるんですよ。
でも、そういった 「 感情 」や「 欲情 」が 「 人間らしさ 」の表れ
なわけで…。
という事で なんだか やるさない気持ちにもなる 話でしたね。
「 ヴォミーサ 」 小松左京
“初” 小松左京。
今さら 長編は キビシそうなので、短・中編くらいは 読みたいと
思ってたんですよね。
本書で 一番長い作品です。
飲食店に 突如 “大男” が乱入、客の一人を 「 締め殺した 」後、
「 ヴォミーサ 」と 呻き 去って行った。
現場に居合わせた 主人公3人は “大男”の 正体や 動機を 推理するが…。
という、「 ミステリー色 強め 」の内容。
序盤から 「 大落雷 」、「 新しい バーテンダー 」と
「 伏線 」らしき 話題が 出て来て ミステリー心を くすぐりますね。
“大男”の 正体は 「 テーマ 」から すぐわかりますが、
( 一応、伏せるけど… )
その 「 行動原理 」( 動機 )は わからなかったな。
なので 最後に 明かされる 「 SF・本格ミステリー 」要素を感じる
論理的な「 真相 」に 興奮、感動しましたね。
( 結構 単純では あったが… )
「 ヴォミーサ 」の “意味” と 伏線の出し方、
( 少し 無理があったが、伏線が良かったので OK )
いちいち 説明しない 「 バーテンダー の くだり( 謎 )」も良かったな。
本作は SF・ファンが 投票で選ぶ 「 星雲賞 」を 受賞してます。
という事で、個人的には 「 お紺昇天 」も 面白かったけど、
「 SF・本格ミステリー 」に思えた 「 ヴォミーサ 」 が 一番良かった
ですね。